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守らなかったいいつけ。

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恭吾お兄ちゃんは私を抱え上げた。



鈴「きゃあっ!?」

恭吾「ほら、しっかり抱きついてないと落ちるぞー。」

鈴「!?」




くるっと回され姫抱きに抱えられた。

そのままソファーに座って私を離さない恭吾お兄ちゃん。




鈴「も・・・離して?」

恭吾「嫌だ。」



ぎゅーっと私を抱きしめたままだ。




鈴「お兄ちゃんっ?」

恭吾「・・・翔平、聴診器。」

翔平「---!取ってくる。」

鈴「?」





翔平お兄ちゃんが取ってきた聴診器を受け取り、私の服の下から滑り込ませてきた恭吾お兄ちゃん。



鈴「お兄ちゃん・・?」

恭吾「鈴、しー・・。」

鈴「・・・・・・。」




しばらく無言の時間が流れたあと、お兄ちゃんは聴診器を取り外した。



恭吾「最近ちゃんと寝てるか?」

鈴「え?」

恭吾「夜、何時に寝てる?」



おもむろに始まった問診。



鈴「えっと・・1時?」

翔平「1時って・・・。」

恭吾「疲れが溜まると心臓に負担がかかる。このままじゃ倒れるぞ。」

翔平「明日は1日家にいること。わかった?」




鈴(明日は最後の仕上げなのに・・・!)




鈴「私、元気だよ?ちょっとだけ出掛けた・・・・」

恭吾「ダメだ。父さんから検査の話も聞いてるだろ?」

鈴「でも・・・・。」

恭吾「薬のおかげで気づいてないだけだ。心臓はだいぶ疲れてる。明日は家から出るなよ?」

鈴「・・・・・・はい。」




そのあと、翔平お兄ちゃんも聴診器で私の胸の音を聞き、同じことを言った。




翔平「あー・・明日はベッドから出るなよ?」

鈴「ベッドからも!?」

翔平「俺らは仕事だし・・・なんかあったら大変だからな。」

鈴「えー・・・・。」




お兄ちゃんたちはそういったけど、私は元気だった。

寝る前まで家事をしたり、お風呂に入ったりしてたけど、なんとも無かった。



鈴(お兄ちゃんたちは、ああ言ったけど、最後の仕上げをして帰ってくるくらい大丈夫だよ。)



そう思って、私はお兄ちゃんたちがいなくなった後、出かけることにした。







ーーーーーーーーーーーーーーーーー










翌日・・・





お兄ちゃんたちに言われた通り、ベッドにいた私。

階下から叫ぶ声が聞こえてくる。



翔平「鈴ーっ。行ってくるからなーっ。」

恭吾「なんかあったらケータイ鳴らせよーっ。」

鈴「はーいっ。」




がさごそと玄関の方で音がして、ガチャンっとドアが閉まる音が聞こえた。



鈴「よっし。」



私はベッドから下りて、服を着替えた。

荷物を持って、階段を下り、玄関のドアを少しだけ開けて車庫を見た。

車は全部ない。




鈴「ダッシュで帰ろーっと。」




私は急ぎ足でおじいさんのお店に向かった。






ーーーーーーーーーーーーー








カランカラン・・・



店主「おぉ、鈴ちゃん、いらっしゃい。」

鈴「はぁ・・はぁ・・おはよ、おじいさん・・・。」



お店まで急いできたからか、息が上がっていた。



店主「昨日は驚いたよ。」

鈴「はぁ・・私もだよ・・。」

店主「大丈夫かい?顔色が・・・。」

鈴「大・・丈夫。今日で仕上げるから・・・。」



私はタイピンの入った箱を受け取り、最後の仕上げをした。

3つのタイピンを箱に入れ、包装紙をかぶせていく。




鈴「できた・・・。」

店主「うんうん。喜んでくれるといいねぇ・・・。」

鈴「私・・帰るね。お会計・・・。」


財布を取り出してお会計を済ませた。



店主「・・・ほんとに大丈夫かい?体がふらついてる・・。」

鈴「え・・・?」



お店を出ようと立ち上がった時、全身が急に重くなり、私はその場にしゃがみ込んだ。



鈴「あ・・・・・。」

店主「--っ!鈴ちゃんっ!!」



どさっと倒れた私。

おじいさんが慌てながら私の側に駆け寄ってきた。



店主「大丈夫かい!?」

鈴「大丈夫・・・。」



私はゆっくり立ち上がった。

家に帰るまでならなんとか大丈夫そうだ。



鈴「また・・来ますね。」

店主「う・・うん。またね。」



おじいさんに見送られ、私はお店を出た。

一歩一歩、地面をしっかり踏みながら家に向かって歩く。



鈴「お兄ちゃんの・・言った通りだった・・・。」



心臓が疲れてる。

薬のおかげ。

今日はベッドから出ない。



守らなかったから心臓が悲鳴を上げてる。




鈴「あとちょっと・・・家に着いたらちゃんと寝るから・・・お願い・・・。」




ゆっくりゆっくり歩き続け、私は無事に家に帰った。

這うようにして2階に上がり、ベッドに寝ころんだ。



鈴「はぁ・・はぁ・・おやすみ・・。」



そのまま眠りにつき、次に目が覚めたのはお兄ちゃんが帰ってきたときだった。









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