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『命令』。

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彩が攫われてから1時間後。

九条組若頭である雄介のスマホが鳴り始めた。

相手の通知は『非通知』だ。


「・・・もしもし?」

『よぉ。九条組若頭。』

「誰だ。」

『名乗るほどの者じゃねーよ、ただ・・・この前うちの若いモンがちょっと世話になったみたいでなぁ。』

「『若い者』・・・?」

『キャバクラで・・・って言ったらわかるかぁ?』

「!!・・・銀永会か。何の用だ。」

『用ってほどじゃねーけど・・・ちょっといいモン見つけてな?お前に教えてやろうかと思ってよぉ。』

「『いいモン』?」


一体何が目的かと思いながら話を聞いてると、スマホの向こう側で・・・彩の声が聞こえてきたのだ。


『ねぇ、私、手芸屋さんに行きたいんだけど。』

『うるせぇ!黙ってろ!!』

『もう帰っていい?したいこといっぱいあるし。』

『返すわけねぇだろ!?お前、自分が人質なのわかってねーのか!?』

『私は羊じゃなくて人間なんだけど・・・』

『誰が羊って言った!?ひ!と!じ!ち!だ!!ぼけぇぇぇ!!』

「・・・。」


声の主は明らかに彩。

話の内容から考えても彩以外に考えれなかった。


『お前の女だろう?九条雄介。』


あの時、キャバクラでの出来事を根に持っていたのか、彩を攫って俺に復讐をしようという魂胆が見えてきた。


「それがどうした?」


俺は通話をスピーカーにした。

そして居場所を探知できる機械にスマホを繋いでいく。


『自分の女が俺たち銀永会のモンに汚されたら・・・お前はどう思うかねぇ・・・?』

「・・・何が望みだ。」


探知機を通してパソコンに出るこの電話相手の居場所。

そこはここから車で30分ほどのビル街だった。


(ここが銀永会の事務所か。)


彩の居場所を割り出した時、この電話の主はとんでもないことを俺に要求してきたのだ。


『50億だ。50億払うなら無傷で返してやろう。』

「は?」

『おっと、もっと安くてもいいぞ?1000万なら首だけ返してやろう。5000万なら冷たくなった全身、1億なら猛者どもの子種付き、10億なら・・・・』


とんでもない条件付きで出してくる身代金。

吐き気がしそうなのを堪えながら、俺は髪をかき上げた。


「黙れ。彩に指一本でも触れてみろ。を味わうことになるぞ。」

『・・・時間は3時間後。場所は埠頭の倉庫60番だ。遅れた時点で殺す。』


そう言って電話は切れてしまった。


「あいつ・・東郷に送ってもらったんじゃなかったのか?」


とりあえず彩を奪還しに行くため、俺は家に残ってた奴らを集めた。

そして銀永会の事務所に向かって出発したのだった。



ーーーーー



ーーーーー



「ここか。」


探知機で出た場所に到着した俺たちは、高く聳え立つビルを見上げていた。

ここの何階かに彩は捕らわれてるらしい。


「さて、何回だろうな。」


ビルの案内板を見ると、1階がカフェ、2階が英語教室、3階が保険会社・・・と、いろいろテナント名が書かれていた。

4階、5階、6階・・・と見ていくうちに、13階に不審な表示を見つけたのだ。


「『事務所』・・・か。何の事務所なのか表記してない時点でここだろうな。」


俺たちは階段を使って13階まで上がり、その扉の前でポケットから銃を取り出した。

中の様子を窺うために聞き耳を立てると、彩の声が微かに聞こえてきたのだ。


「ここどこ?」

「教えるわけねーだろ!」

「お腹すいた。」

「知らねぇぇよ!!」

「ゆうちゃんと食べたお寿司食べたい!」

「いやっ・・!だから知らねぇって!!こいつ、ほんとに九条組若頭の女なのか!?」


そんな会話が聞こえてきたあと、俺は扉のドアノブに手をかけた。

運よく鍵は開いていたようで、そっとドアノブを回して扉を開ける。

そして俺たちは一斉に中に駆け入った。


「さて、彩を返してもらおうか。」


近くにいた銀永会の組員の首を腕で掴みながら奥まで入ると、中にいた奴らは一斉に銃を抜いた。

その銃口は俺たちに向けられてるけど、俺たちもこの腕で絞めてる組員たちの頭に銃口を突き付ける。


「ここで俺を撃ったら『復讐』にはならねーんじゃねーか?」


親玉である会長の机に脚を置き、上から睨みつけながら問うと会長は笑いながら指を鳴らした。


「ふははっ!!撃てないのはお前も同じだろう?ここでお前が撃つと、あの女を撃つからな。」

「・・・。」

「おい、連れて来い!」


会長の声で組員の一人が奥から彩を連れてきた。

両手首を前で縛られ、不服そうな顔をした彩がその組員の一人を睨みつけてるのが見える。


「むぅ・・・。あ、ゆうちゃんだ。」

「彩、元気か?」

「お買い物行きたいっ。」

「オーケー。終わったら寄ってやるから俺の『命令』、聞けよ?」

「わかったー。」


そんな会話をすると、銀永会の会長の機嫌を損ねてしまったのか、顔を真っ赤にして怒り狂い始めたのだ。


「ふ・・ふざけるな!!何が『買い物』だ!!お前らこの状況わかってんのか!?」


その言葉を聞き、俺は銃口を彩に向けた。

いや、正確には彩を連れてきた組員の一人に向けたのだ。


「彩、『動くな。目を閉じろ。何も聞くな。』。」


そう言った瞬間、彩は目を閉じた。

そして何も聞こえないようにしたのか、軽く首が傾いたのだ。


「いい子だ。」


俺は銃の引き金を引いた。

途端にバァァンっ・・!!と銃声が鳴り響くけど、サイレンサーのおかげでそれは少し小さめだ。

それでも轟音には変わりないのだけど。


「うわぁぁぁっ・・っ!?」

「雑魚が叫ぶな。」


彩を連れていた男の耳を吹っ飛ばしたあと、他の奴らの耳も吹っ飛ばしていく。

順番に引き金を引いていくと、俺の組の者たちも同様に引き金を引き始めた。

その間、時間にしておよそ10秒。

銀永会の奴らが太刀打ちする前に、俺たちは会長以外を戦闘不能にしていったのだった。


「さて、組は解散だ。お前は彩を攫った罪で落とし前つけてもらおうか。」


耳を吹っ飛ばされた組員たちは痛みに悶え苦しんでいた。

『あと数センチずれていたら頭を吹っ飛ばされていた』という事実が頭を過る者は、ぞっとしたのか青ざめてる。


「お前・・女ができて甘くなったんじゃないか?」


俺に銃を突き付けられながら、会長はぼそっと呟いた。


「何?」

「耳を落としたくらい何だ!!足の一つや二つ撃てずに何が国内最強の九条組だ!!」

「・・・。」

「強制解散させたところでまた銀永会は復活する!!散り散りになってもいづれ集まり、また復活するのだ!!あーっはっは!!」


俺の『解散宣言』でこの場が治まると思ったのか、会長は高笑いしながら腰を反らして真上を向いていた。


「・・・何をどう捉えたのか知らねーが、銀永会が復活することは二度とない。」

「何?・・・あぁ、傘下にでも入れて監視するってのか?逆にこちらが謀反を企てられるがな!!」

「いや?・・・ここにいる奴らが誰一人としてもう『太陽の下』に出れねーからだよ。」

「はっ・・・!?」


俺は突き付けていた銃の引き金を引いた。

またバァァンっ・・!!と、銃声が響き、その銃口から飛び出た銃弾は会長の右耳を吹っ飛ばした。


「うわぁぁぁっ!?!?」

「うるせーな。俺は九条組若頭、九条雄介だ。冷酷冷徹の名で通ってること・・・お前も聞いたことくらいあるよなぁ?」

「ひっ・・・!?」

「お前らの、彩への迷惑料としてもらってやるよ。」


そう言って俺は連れてきていた部下に指示を出した。


「こいつら全員闇医者のとこ連れてけ。取り出して売れた内臓の取り分は半々。そう伝えろ。」

「へい。」


部下たちが順番に組員を連れて行こうとした時、右耳を押さえた会長が慌てながら口を開いた。


「・・まっ・・待て!!」

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