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過保護。
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ーーーーー
その日の夕方。
仕事で金の回収をしていた俺は風俗街にいた。
このあたり一帯を取り仕切ってるのがうちの店で、今月分の売り上げと借金持ってるやつの分の回収をしてるのだ。
「あー!雄介さーんっ!」
事務室で座りながら金勘定をしてるとき、嬢の一人が俺を見つけて入って来た。
胸元ががっつり開いた白いミニワンピースを着てる嬢だ。
「アキナか。」
「へへっ。今日はお仕事ですかぁ?それともアキナに会いに来てくれたんですかぁ?」
媚でも売るかのような言い方をしながら体を摺り寄せてくる。
「仕事だ。」
何の感情も抱かずにそう告げると、アキナの指が俺のスーツの上を這い始めた。
「そうなんですかぁ。じゃあー、お仕事終わったらアキナとちょっと遊びませんー?」
「・・・。」
明らかに誘うようにしているアキナ。
俺は軽くため息を吐き、アキナを睨みつけた。
「お前、あといくらあるのかわかってんのか?」
俺の言葉にアキナはスッと体を離した。
「えっと・・それは・・・・」
「俺に足開いてる暇あったら客とって来い。」
「で・・でも、雄介さんと寝たら借金減らしてもらえるんでしょ・・・?」
「は?誰がそんなこと言った?」
「えと・・・噂・・?」
「・・・。」
どこでそんな噂になってしまったのかわからず、俺は店の店長に視線を向けた。
「!?・・・いや!僕じゃないですよ!?」
「・・・大方、俺の女になれば借金はチャラにしてもらえるとか思ったんだろ?」
俺は椅子から立ち上がり、アキナの肩を押して壁に押し付けた。
「いいか?俺はお前らを『女』として見てない。お前らは金回収の『道具』だ。チンタラ金稼ぐのが嫌だったら一瞬で稼げる方を紹介してやるが・・・どうする?」
汚物でも見るかのようにアキナを見下ろしながら言うと、アキナは顔を青くしていた。
俺が言った『一瞬で稼げる方』を色々想像したんだろう。
「ご・・ごめんなさい・・・」
「外で客引っかけて来い。もう仕事終わりの男がうろついてるだろ。」
そう言うとアキナはそそくさと事務室を出て行った。
「すみません若頭、しっかり教育しておきます。」
そういって店長が頭を下げてきた。
「あんまり甘やかすなよ?つけあがると稼がなくなるぞ。」
「・・はい。」
「あと、ここ数か月微妙に数字が落ちてきてる。上げ続けろとは言わねぇけど、どっかで一回回復させろ。いいな?」
「はい!」
そう伝え、俺は店の売り上げと各々の借金返済の分を持って店を出た。
店の目の前に付けさせてる車の助手席ドアを開ける。
「おい、この先にあるキャバに行くから車を裏の駐車場に止めてきてくれ。俺は歩いて行く。」
「リョーカイっす!」
運転手兼雑用任務をしてる亮人に伝え、俺はドアを閉めた。
(さて、どこか買い取ってうちの店にするかな。)
この辺りは道が狭く、車で物件を探すのはなかなか骨が折れることだった。
時間があればどこか一つを買い取ろうと思っていた俺は、タバコを吸いながら辺りを見回し足を進める。
「おにいさーん!寄っていかなーい?」
「お兄さん!お兄さん!そこの店にかわいい女の子、いっぱいいますよー!どうです!?」
風俗街だからか客を取りに来るやつらが歩く俺の周りを群がってくる。
(これくらいアキナも頑張れば、すぐに借金は返せるのに。)
そんなことを考えながら手をひらひらと振り、俺は店に興味がないことを知らせた。
そして風俗街を抜け、キャバクラやホストクラブが立ち並ぶエリアに足を踏み入れた。
夜の入口な時間なこともあって、ちらほらと客引きが始まってるようだ。
「この辺りの店は景気がいいのか売り上げいいんだよなー。」
癒しを求めて客が来るのか、沼っていて客が来てるのかはわからない。
でも売り上げに繋がってるならどっちでもいいことだ。
そのキャバクラやホストクラブに行くためにうちで借金するやつもいるのだから。
「さて・・・」
街の中に入って俺は辺りを見回した。
賑やかになりつつある眠らない街で、どこかいい場所が空いてないか探そうと右に左にと顔を向ける。
すると道路の向こうに見知った姿を見かけた。
大きいリュックを背負ってまっすぐ前を向き、客引きをガン無視して進んでるのは・・・彩だ。
「・・・は!?」
驚いた俺は思わず持っていたタバコを落としてしまった。
それを拾い上げて携帯灰皿に入れ、道路を渡っていく。
「彩・・!彩っ・・!!」
名前を呼びながら追いかけると、彩は足を止めた。
そしてリュックの肩ひもを両手で握りながら振り返った。
「?・・・あれ?ゆうちゃん?」
「お前・・こんなとこで何してる!?」
「え?何って・・・学校帰り?」
「学校って九条大学だろ?こっちは家と真逆の方向・・・」
家とは真逆の方向に向かって歩いていた彩。
大学でも散々絵を描いていたのか、服に豪快に絵の具が飛び散った跡があった。
「こっちからでも帰れるよ?」
「帰れるって・・・遠回り過ぎないか?」
「うーん・・でもきれいな公園あるし。」
その言葉を聞いて俺はこの街を出たところに公園があったことを思い出した。
結構大きめな公園で、噴水がある。
「公園に寄るためにここを通ってるのか・・!?」
「そうだけど?・・・もう行っていい?夕陽が沈んじゃう。」
どうやら彩は噴水にかかる夕陽を見るためにここを通って帰ってるようだ。
ただ素通りするくらいなら問題がないように見えるけど・・・
(ここはスカウトもいる。彩が餌食になるのは時間の問題だな・・。)
見目がいい彩は今、こうして俺と一緒にいるだけでもスカウトの奴らがチラチラと見てる。
無理矢理連れていかれて言いくるめられ、稼がされるのがオチだ。
「・・・ちょっと彩、こっち来い。」
「えー・・夕陽見たいんだけど・・。」
『夕陽を見ること』で頭がいっぱいな彩はものすごく嫌そうな顔を見せた。
『こう』と決めたらその通りしたい彩には、公園の夕陽以上に思えるものを代替え案として提示しないと動かない。
「今度海に連れてってやる。だから来い。」
「!!・・・海!」
俺の案に乗った彩は笑顔になった。
そんな彩の手を引いて、俺はすぐ近くにあった九条組が経営するキャバクラの中に入った。
「あら、九条さん?どうしたんですか、こんな時間に・・・」
中に入るとこの店ナンバーワンの『愛理』が出迎えに来た。
「仕事で来たんだが・・・悪い、誰か服持ってないか?後で返すから。」
入ったキャバクラは運良く高級キャバクラだった。
きちっと教育されてるキャバ嬢たちが、なんだなんだと集まって来る。
「服・・・というのはこちらのお嬢さんので?」
「そうだ。できれば目立たないような服がいいんだが・・・」
このあと外に出ても目をつけられないような服が望ましい。
「ゆうちゃん、このきれいなお姉さんたちは?」
彩は店の内装やキャバ嬢たちを見ながら目を輝かせていた。
「俺の仕事関係のやつらだ。彩、ちょっと服借りて来い。」
「服?」
「だいぶ汚れてるぞ。それじゃ帰れないだろ?」
「んー・・・そう?」
「~~~っ、そうだ、だから着替えさせもらってこい。」
そう言うとキャバ嬢たちは彩を頭のてっぺんからつま先まで何度も見始めた。
何を考えてるのかわからないけど、全員がじっと見ている。
「九条さま、ちょっとこの子をお借りしても?」
「あぁ、頼む。」
「わかりましたー。」
彩はキャバ嬢たちに手を引かれ、店の奥に入っていった。
軽くため息を吐くと、愛理がお絞りとコーヒーを持ってきた。
「ふふ、お疲れさまです。」
「あぁ、ありがとう。」
カウンター席に着くと、愛理は隣に座った。
「・・ちょっと九条さんに相談があるんですけど。」
座るなり耳打ちするように話してきた愛理。
まだ客がいない店内で回りに聞こえないように話したいようだ。
「どした?」
「実は・・最近厄介なお客が来てまして・・・」
「厄介な客?」
「はい・・・。」
愛理の話では最近、他の組の奴らがこの店に来てるとのことだった。
客として店に来て、人気の嬢を引き抜こうとしてるようだ。
「なびく子はいないんです、だって九条さんの下のほうが条件とかいいですから。ただ・・・」
「ただ?」
「マナーが悪くて・・・ちょっと他の常連さんたちが距離を置き始めてて・・・」
「あー・・・なるほど。」
どうやら引き抜こうとして引き抜けなかったから店の売り上げ自体を下げに来てるようだ。
「あとで店内カメラのデータを送ってくれ。対策する。」
「ありがとうございます。」
警告くらいで引けばいいけどそれで引かなければどうするかを考えてる時、キャバ嬢たちに囲まれて彩が戻って来た。
「---っ!!彩!?」
淡い水色のロングドレスに、髪の毛をアップにされて後れ毛をくるっと巻いてる姿で俺の前に現れた彩。
本人も気に入ってるのか満面の笑みだ。
「ゆうちゃんっ!かわいい?」
「かわいいけど・・・いや、なんでそんな格好になってんだ?」
そう言うと嬢たちが満足気に彩を説明し始めた。
「若いっていいですねー、化粧なんてほとんどいらなかったですー。」
「肌がきれいだからどんな服も似合いますね。」
「このドレスは彩嬢が選んだんですよ?」
「彩『嬢』って・・・いや、こいつは嬢じゃない・・・」
彩をここで働かせるために連れてきたんじゃないことを説明しようとしたとき、全員の顔がやたらニヤついてることに気がついた。
どうやらわかっててやったようだ。
「お前ら・・・」
「あははっ、わかってますよぅっ。」
「ちょっと遊んだだけですよっ。」
「ちゃんと私の私服出しますから返してくださいよ?」
嬢たちは笑いながら彩を連れてまた奥に入っていった。
無駄にからかわれてため息を漏らすと、愛理が口元を隠しながらクスクス笑っていたのだ。
「おま・・・愛理まで笑うのかよ・・。」
「ふふっ、だって九条さん、みんなにバレてるんですもの。」
「・・・『バレてる』?」
何を言ってるのかわからずに聞き返すと、愛理から笑顔が消えた。
驚いてるような表情で俺を見てる。
「え・・まさか九条さん、気づいてないんですか?」
「気づいてないって・・・何がだ?」
「顔ですよ!あの女の子を見る目、見たこともないくらい優しい顔してますよ?」
「・・・・え?」
その日の夕方。
仕事で金の回収をしていた俺は風俗街にいた。
このあたり一帯を取り仕切ってるのがうちの店で、今月分の売り上げと借金持ってるやつの分の回収をしてるのだ。
「あー!雄介さーんっ!」
事務室で座りながら金勘定をしてるとき、嬢の一人が俺を見つけて入って来た。
胸元ががっつり開いた白いミニワンピースを着てる嬢だ。
「アキナか。」
「へへっ。今日はお仕事ですかぁ?それともアキナに会いに来てくれたんですかぁ?」
媚でも売るかのような言い方をしながら体を摺り寄せてくる。
「仕事だ。」
何の感情も抱かずにそう告げると、アキナの指が俺のスーツの上を這い始めた。
「そうなんですかぁ。じゃあー、お仕事終わったらアキナとちょっと遊びませんー?」
「・・・。」
明らかに誘うようにしているアキナ。
俺は軽くため息を吐き、アキナを睨みつけた。
「お前、あといくらあるのかわかってんのか?」
俺の言葉にアキナはスッと体を離した。
「えっと・・それは・・・・」
「俺に足開いてる暇あったら客とって来い。」
「で・・でも、雄介さんと寝たら借金減らしてもらえるんでしょ・・・?」
「は?誰がそんなこと言った?」
「えと・・・噂・・?」
「・・・。」
どこでそんな噂になってしまったのかわからず、俺は店の店長に視線を向けた。
「!?・・・いや!僕じゃないですよ!?」
「・・・大方、俺の女になれば借金はチャラにしてもらえるとか思ったんだろ?」
俺は椅子から立ち上がり、アキナの肩を押して壁に押し付けた。
「いいか?俺はお前らを『女』として見てない。お前らは金回収の『道具』だ。チンタラ金稼ぐのが嫌だったら一瞬で稼げる方を紹介してやるが・・・どうする?」
汚物でも見るかのようにアキナを見下ろしながら言うと、アキナは顔を青くしていた。
俺が言った『一瞬で稼げる方』を色々想像したんだろう。
「ご・・ごめんなさい・・・」
「外で客引っかけて来い。もう仕事終わりの男がうろついてるだろ。」
そう言うとアキナはそそくさと事務室を出て行った。
「すみません若頭、しっかり教育しておきます。」
そういって店長が頭を下げてきた。
「あんまり甘やかすなよ?つけあがると稼がなくなるぞ。」
「・・はい。」
「あと、ここ数か月微妙に数字が落ちてきてる。上げ続けろとは言わねぇけど、どっかで一回回復させろ。いいな?」
「はい!」
そう伝え、俺は店の売り上げと各々の借金返済の分を持って店を出た。
店の目の前に付けさせてる車の助手席ドアを開ける。
「おい、この先にあるキャバに行くから車を裏の駐車場に止めてきてくれ。俺は歩いて行く。」
「リョーカイっす!」
運転手兼雑用任務をしてる亮人に伝え、俺はドアを閉めた。
(さて、どこか買い取ってうちの店にするかな。)
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時間があればどこか一つを買い取ろうと思っていた俺は、タバコを吸いながら辺りを見回し足を進める。
「おにいさーん!寄っていかなーい?」
「お兄さん!お兄さん!そこの店にかわいい女の子、いっぱいいますよー!どうです!?」
風俗街だからか客を取りに来るやつらが歩く俺の周りを群がってくる。
(これくらいアキナも頑張れば、すぐに借金は返せるのに。)
そんなことを考えながら手をひらひらと振り、俺は店に興味がないことを知らせた。
そして風俗街を抜け、キャバクラやホストクラブが立ち並ぶエリアに足を踏み入れた。
夜の入口な時間なこともあって、ちらほらと客引きが始まってるようだ。
「この辺りの店は景気がいいのか売り上げいいんだよなー。」
癒しを求めて客が来るのか、沼っていて客が来てるのかはわからない。
でも売り上げに繋がってるならどっちでもいいことだ。
そのキャバクラやホストクラブに行くためにうちで借金するやつもいるのだから。
「さて・・・」
街の中に入って俺は辺りを見回した。
賑やかになりつつある眠らない街で、どこかいい場所が空いてないか探そうと右に左にと顔を向ける。
すると道路の向こうに見知った姿を見かけた。
大きいリュックを背負ってまっすぐ前を向き、客引きをガン無視して進んでるのは・・・彩だ。
「・・・は!?」
驚いた俺は思わず持っていたタバコを落としてしまった。
それを拾い上げて携帯灰皿に入れ、道路を渡っていく。
「彩・・!彩っ・・!!」
名前を呼びながら追いかけると、彩は足を止めた。
そしてリュックの肩ひもを両手で握りながら振り返った。
「?・・・あれ?ゆうちゃん?」
「お前・・こんなとこで何してる!?」
「え?何って・・・学校帰り?」
「学校って九条大学だろ?こっちは家と真逆の方向・・・」
家とは真逆の方向に向かって歩いていた彩。
大学でも散々絵を描いていたのか、服に豪快に絵の具が飛び散った跡があった。
「こっちからでも帰れるよ?」
「帰れるって・・・遠回り過ぎないか?」
「うーん・・でもきれいな公園あるし。」
その言葉を聞いて俺はこの街を出たところに公園があったことを思い出した。
結構大きめな公園で、噴水がある。
「公園に寄るためにここを通ってるのか・・!?」
「そうだけど?・・・もう行っていい?夕陽が沈んじゃう。」
どうやら彩は噴水にかかる夕陽を見るためにここを通って帰ってるようだ。
ただ素通りするくらいなら問題がないように見えるけど・・・
(ここはスカウトもいる。彩が餌食になるのは時間の問題だな・・。)
見目がいい彩は今、こうして俺と一緒にいるだけでもスカウトの奴らがチラチラと見てる。
無理矢理連れていかれて言いくるめられ、稼がされるのがオチだ。
「・・・ちょっと彩、こっち来い。」
「えー・・夕陽見たいんだけど・・。」
『夕陽を見ること』で頭がいっぱいな彩はものすごく嫌そうな顔を見せた。
『こう』と決めたらその通りしたい彩には、公園の夕陽以上に思えるものを代替え案として提示しないと動かない。
「今度海に連れてってやる。だから来い。」
「!!・・・海!」
俺の案に乗った彩は笑顔になった。
そんな彩の手を引いて、俺はすぐ近くにあった九条組が経営するキャバクラの中に入った。
「あら、九条さん?どうしたんですか、こんな時間に・・・」
中に入るとこの店ナンバーワンの『愛理』が出迎えに来た。
「仕事で来たんだが・・・悪い、誰か服持ってないか?後で返すから。」
入ったキャバクラは運良く高級キャバクラだった。
きちっと教育されてるキャバ嬢たちが、なんだなんだと集まって来る。
「服・・・というのはこちらのお嬢さんので?」
「そうだ。できれば目立たないような服がいいんだが・・・」
このあと外に出ても目をつけられないような服が望ましい。
「ゆうちゃん、このきれいなお姉さんたちは?」
彩は店の内装やキャバ嬢たちを見ながら目を輝かせていた。
「俺の仕事関係のやつらだ。彩、ちょっと服借りて来い。」
「服?」
「だいぶ汚れてるぞ。それじゃ帰れないだろ?」
「んー・・・そう?」
「~~~っ、そうだ、だから着替えさせもらってこい。」
そう言うとキャバ嬢たちは彩を頭のてっぺんからつま先まで何度も見始めた。
何を考えてるのかわからないけど、全員がじっと見ている。
「九条さま、ちょっとこの子をお借りしても?」
「あぁ、頼む。」
「わかりましたー。」
彩はキャバ嬢たちに手を引かれ、店の奥に入っていった。
軽くため息を吐くと、愛理がお絞りとコーヒーを持ってきた。
「ふふ、お疲れさまです。」
「あぁ、ありがとう。」
カウンター席に着くと、愛理は隣に座った。
「・・ちょっと九条さんに相談があるんですけど。」
座るなり耳打ちするように話してきた愛理。
まだ客がいない店内で回りに聞こえないように話したいようだ。
「どした?」
「実は・・最近厄介なお客が来てまして・・・」
「厄介な客?」
「はい・・・。」
愛理の話では最近、他の組の奴らがこの店に来てるとのことだった。
客として店に来て、人気の嬢を引き抜こうとしてるようだ。
「なびく子はいないんです、だって九条さんの下のほうが条件とかいいですから。ただ・・・」
「ただ?」
「マナーが悪くて・・・ちょっと他の常連さんたちが距離を置き始めてて・・・」
「あー・・・なるほど。」
どうやら引き抜こうとして引き抜けなかったから店の売り上げ自体を下げに来てるようだ。
「あとで店内カメラのデータを送ってくれ。対策する。」
「ありがとうございます。」
警告くらいで引けばいいけどそれで引かなければどうするかを考えてる時、キャバ嬢たちに囲まれて彩が戻って来た。
「---っ!!彩!?」
淡い水色のロングドレスに、髪の毛をアップにされて後れ毛をくるっと巻いてる姿で俺の前に現れた彩。
本人も気に入ってるのか満面の笑みだ。
「ゆうちゃんっ!かわいい?」
「かわいいけど・・・いや、なんでそんな格好になってんだ?」
そう言うと嬢たちが満足気に彩を説明し始めた。
「若いっていいですねー、化粧なんてほとんどいらなかったですー。」
「肌がきれいだからどんな服も似合いますね。」
「このドレスは彩嬢が選んだんですよ?」
「彩『嬢』って・・・いや、こいつは嬢じゃない・・・」
彩をここで働かせるために連れてきたんじゃないことを説明しようとしたとき、全員の顔がやたらニヤついてることに気がついた。
どうやらわかっててやったようだ。
「お前ら・・・」
「あははっ、わかってますよぅっ。」
「ちょっと遊んだだけですよっ。」
「ちゃんと私の私服出しますから返してくださいよ?」
嬢たちは笑いながら彩を連れてまた奥に入っていった。
無駄にからかわれてため息を漏らすと、愛理が口元を隠しながらクスクス笑っていたのだ。
「おま・・・愛理まで笑うのかよ・・。」
「ふふっ、だって九条さん、みんなにバレてるんですもの。」
「・・・『バレてる』?」
何を言ってるのかわからずに聞き返すと、愛理から笑顔が消えた。
驚いてるような表情で俺を見てる。
「え・・まさか九条さん、気づいてないんですか?」
「気づいてないって・・・何がだ?」
「顔ですよ!あの女の子を見る目、見たこともないくらい優しい顔してますよ?」
「・・・・え?」
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