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真実と葛藤2。
しおりを挟むカイルさまは少しずつ話始めてくれた。
カイル「あの事件で死んでしまった女の子は、体が弱かったかもしれないんだ。」
ゼオン「・・・・え?」
カイル「遺体で見つかった女の子の身体を・・当時の医者が解剖した。」
女の子の死に疑いを持った医者が、女の子の両親に掛け合って解剖。
その解剖の結果、女の子は手足を千切られる前に死んでいた可能性が高いと判断されたのだ。
リズ「じゃあなんで『ロボットが人間を殺した』なんて話に・・?」
カイル「・・・解剖の結果が出るのが遅すぎた。色んな状態を検査して、検証して・・・結果が出るまでに1カ月かかった。」
リズ「1カ月も!?」
その1カ月の間、両親は口を閉ざしていたけど、噂だけは勝手に広がっていくもの。
それもヒレをたくさんつけて・・・。
カイル「結果を両親に伝えに行った時にはもう、国中に噂が広がっていた。『ロボットが人間を殺した』・・・とな。」
リズ「!!」
ゼオン「!!」
カイル「国を統治するものが方々で動いたけれども・・・すでに町人はロボットたちを追い出していた。収束はできずに・・・今に至るってわけだ。」
ゼオンさんは口をぽかんと開けたままカイルさまの話を聞いていた。
ちらっとお付きの人を見たけど、二人もぽかんと口を開けてる。
ルカさんを見るとルカさんは私に向かって首を横に振った。
・・・それはゼオンさんやルカさん、お付きの人まで知らないことだったのだ。
ゼオン「そんな・・・・」
機械の国も、人間の国も真実を知っていた。
その真実を人間側が受け入れられず、ロボットのせいにしてしまっていた。
歪められた真実はそのまま長い間語り継がれ、両国間の溝が深くなっていってしまったのだ。
ゼオン「私は・・・嘘を信じていたのか・・・?」
ルカ「俺も信じてたけど・・・ロディを見て・・・『俺が信じていたものは何か』を考えた。俺は・・・語り継がれてきたものより、自分が今、この目で見てるものを信じたい。」
ゼオン「・・・。」
ゼオンさんはロディを見て・・・私を見た。
その表情はさっきと違う。
汚いものを見る目じゃなくて・・・困った目だ。
リズ「じゃあその事実を今伝えれば・・・・・」
カイル「伝えるだけじゃ無理だな。実演しないと。」
リズ「実演って・・・・?」
そうカイルさまに聞いたとき、部屋の外をバタバタと走る足音が聞こえて来た。
その音はどんどん大きくなっていって・・・ちょうどこの部屋の前くらいでピタッと止まった。
リズ「?」
カイル「・・・うるさいやつが来たな。」
リズ「え?」
カイルさまの言葉と同時にバーンっとドアが開け放たれた。
ベン「カイルさま!!ロボットが現れたと聞きましたぞ!!」
ずかずかと足音を鳴らしながら部屋に入ってきたのは中年の男の人だ。
眼鏡をかけていて、頭には帽子をかぶってる。
髪の毛はくせ毛なのかクルクル巻いていて、その長さは腰まであった。
後ろからみたら女の人かと間違えそうだけど、真正面から見たら女の人には絶対に見えない。
カイル「うるさいぞ、ベン。」
ベン「ロボットが現れたなんて噂を聞いてうるさくしないわけにいかないでしょう!!さぁ、どこです!?」
『ベン』と呼ばれた人は、カイルさまのひざ元に視線を落とした。
カイルさまの膝には・・・ロディが座っていた。
ベン「!!・・・まさしくロボット!!」
ずかずかと歩いて来たベンさんは、またずかずかと歩きながらカイルさまに近づいていく。
目線はロディだ。
ベンさんは手を伸ばしてロディに触れようとした。
そのとき・・・
カイル「ベン、触るな。ロディはベンのものじゃない。」
ベンさんがロディに触れようとしたとき、カイルさまはロディをひょいと持ち上げて触らせないようにした。
ベン「私に調べさせてください!!」
カイル「調べるまでもない、ロディは自分で説明できる。下がれ。」
ベン「・・・・。」
ベンさんはカイルさまに言われて一歩ずつ後ずさりを始めた。
その姿を見てる時、私に気がついたのか目線がロディから私に移った。
ベン「あなたは・・・リズ?」
リズ「?・・・そうですけど・・。」
私はベンさんを初めて見た。
なのにベンさんは私の名前を知ってる。
その事に疑問を覚えていたとき、カイルさまがロディに口を開いた。
カイル「ロディ、実演に協力してくれるか?」
ロディ「機械の国も困ってル。俺が役に立つなら・・・やル!!」
カイル「いい返事だ。頼む。」
そのあとはロディとカイルさまが話を詰めていた。
私はルカさんとその様子を見ていたけど・・・ベンさんは部屋から出て行こうと踵を返した。
その時・・・
ベン「・・・・ちっ。」
舌打ちするような声が聞こえ、私はベンさんを見た。
リズ「----っ。」
ベンさんは私を睨みつけるようにして見ていた。
その表情に背筋が凍るような気がしたけど、ベンさんはそのまま部屋から出て行った。
私はベンさんの姿が見えなくなるまで見てしまっていた。
私は気がついてなかった。
あの表情が・・・・私に向けていたものじゃなくて・・・ビートに関連してるものだなんて。
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