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赤ちゃん。

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俺の心の中で一瞬の葛藤があった。



秋也(千冬の婚約者としては喜ばしいことだ。)



でも・・・



秋也(医者としては・・・リスクは押さえたい。)




産むとすれば多少なりとも出血はする。

普段から貧血気味な千冬にとっては、出産は命に関わることだ。





秋也(くそっ・・・。なんでそのリスクを考えなかった!)




責めれるのは自分だけだ。




医師「・・・夜には目が覚めると思うし、二人で話し合いなさい。」

秋也「・・・・はい。」




ベッドに移し替えられた千冬。

俺はベッドを押す看護師と一緒に、千冬の病室に向かった。




看護師「・・・千冬ちゃん、妊娠したんですね。」

秋也「あぁ。」




頭の中は、千冬をどう説得するかでいっぱいだった。




秋也(どう考えたって千冬の命のほうが大事だ。なんとかして堕ろさせないと・・・。)





看護師「おめでとうございます。」

秋也「・・・・・え?」

看護師「千冬ちゃんにとっては大好きな人との子供。笹倉先生にとっても大好きな千冬ちゃんが自分の子供を身籠ったんですよ?おめでたいことじゃないですか。」

秋也「・・・・・・。」






確かにその通り。

その通りなのはわかるけど・・・。



秋也「・・・堕ろさせるから。」

看護師「え?」

秋也「千冬の命のほうが大事だ。堕ろさせる。」

看護師「まぁ・・・リスクは高いですね・・・。」





ガラガラとベッドを押す看護師。

俺は吊り下げられた点滴と、眠ってる千冬の顔を見ながらついていった。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






数時間後・・・




ナースステーションで入院してる患者の投薬の指示をしてるとナースコールが鳴った。



ピーッ!ピーッ!ピーッ!




看護師「はーい、千冬ちゃん。目が覚めた?」

秋也(千冬!?)


俺はナースコールに出た看護師に手振りで行くことを伝えた。



看護師「うん・・・うん・・・わかった、笹倉先生が行くからねー。」


ナースコールが切られ、俺は千冬の病室に向かった。

手には書類を持って。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





コンコン・・・ガラガラ・・・





秋也「千冬・・・?」




病室の中に入ると、千冬はベッドに寝たまま顔だけを俺のほうに向けた。



千冬「しゅー・・やさん・・・」

秋也「・・・どう?気分は。」




ベッド脇の椅子に座って千冬の状態を確認する。




千冬「まだ・・・体が重い・・・。」

秋也「だろうな。貧血の原因が分かった。」

千冬「原因・・・?」




俺は千冬に1枚のエコー写真を見せた。

気を失ってる間に撮ったやつだ。





千冬「?」

秋也「これ・・・エコー写真。ここに丸いのあるだろ?」

千冬「うん・・・。」

秋也「胎嚢だよ。」

千冬「たい・・のう・・・?」

秋也「・・・・赤ちゃんがいる。」





千冬に伝えると、千冬は目を丸くしながら自分のお腹を見た。




千冬「あか・・ちゃん・・・。」

秋也「そう。血液を胎児に取られ始めてる。だから貧血を起こしてるんだ。」

千冬「・・・・そっか。」




布団の中でもそもそと手を動かす千冬。

たぶん・・・お腹を擦ってるんだろう。




秋也「・・・・堕ろすよな?」




そう言うと、千冬は俺の目を見た。




千冬「・・・今・・・なん・・て?」

秋也「堕ろしてほしい。千冬の体のことを考えると12週までに堕ろさないといけない。今、6週だから・・・来週にでもできるように手続き取っとくから。」

千冬「待って・・・私たち・・結婚するんだよね・・?」

秋也「する。一生千冬を愛してる。でも・・・俺は子供より千冬のほうが大事なんだよ・・・。」



万が一、出産のときに大量出血でもすれば・・千冬の命をつなぎとめることはできなくなる。

そんなリスクを背負ってまで欲しくはない。





千冬「私・・・産みたいよ・・?」

秋也「!!・・・ダメだ!」

千冬「どうしても・・・?」

秋也「どうしても!・・・来週に手続きしとくから・・・起きれるときにこれにサインしといて。」




そう言って千冬に『中絶承諾書』を渡した。




千冬「中絶・・・・・。」

秋也「俺、まだ仕事あるから・・・あとで来る。」

千冬「うん。私ももうちょっと・・・寝る・・。」

秋也「おやすみ。」





俺は千冬の顔を見れず、そのまま病室を出た。




秋也「ごめんな・・・千冬・・・。」








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