上 下
39 / 59

退院。

しおりを挟む
秋也side・・・








それから2週間もすれば、千冬の体調は元に戻った。

体力の面は・・・・仕事をしながら回復してもらうとして、一旦退院することになった。




千冬「お世話になりましたー。」




看護師たちに挨拶をして回る千冬。





秋也「また来月来るんだから・・・。」




そう言っても千冬はあいさつ回りを止めない。

この律義さが千冬の『指名』を増やしてるのかもしれない。




千冬「秋也さんもっ。」

秋也「?・・・俺?」




千冬は俺の前に来て、深く頭を下げた。




千冬「私の心臓を一生懸命動かそうとしてくれてありがとう。」

秋也「・・・・死なれたら困るからな、俺が。」



そう言うと千冬はいい笑顔で笑ってくれた。




千冬「・・・・ふふっ。」

秋也「ほら、マンション戻るぞ。」




千冬の荷物を持って歩き始める。





千冬「あっ、私持つっ。」

秋也「持たすわけないだろ?千冬はこっち。」




片手に荷物を集め、開けた手を千冬に差し出す。

すると千冬は顔を赤くしながら俺の手を握った。




秋也「・・・照れてるのか?」

千冬「---っ!・・・ちょっと。」




照れ笑いする千冬。

その姿がかわいすぎて、人目をはばからず唇を重ねた。




ちゅっ。




千冬「!?」

秋也「・・・かわいすぎる千冬が悪い。」




途端に顔を真っ赤に染める千冬。

その顔が俺の庇護欲・独占欲をかき立てるとも知らずに・・・。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






千冬「・・・あの、秋也さん?」





マンションに送ってきた俺に、千冬が尋ねてきた。



秋也「うん?」

千冬「マンションって言ったよね?」

秋也「言った。」

千冬「ここ・・・『秋也さんの』マンションだけど・・・?」




車で送り届けたのは『俺の』マンション。

駐車場で千冬がごにょごにょ言っていた。





秋也「あんなかわいいことされて、そのまま帰すわけないじゃん。」

千冬「---っ!?」





エレベーターにのせて部屋に向かう。





千冬「あの・・・私、病み上がり・・・。」

秋也「俺も充電させてよ。」





玄関の鍵を開け、中に入った俺は荷物をリビングに置き寝室に千冬を連れて行った。

ベッドに寝かせ、後ろから抱きしめるようにして添い寝する。





秋也「あー・・・気持ちいい・・・。」





ぎゅーっと抱きしめる千冬の体。

細っこいけど抱き心地がよかった。




千冬「ふふ。私も気持ちいい・・・。」




クルっと体を回転させて俺に抱きつく千冬。

ただただ抱きしめ合うだけだけど、心が満たされていった。





千冬「・・・ごめんね。迷惑かけて。」

秋也「迷惑じゃないよ。俺、あんな千冬もう見たくないから・・。」

千冬「?」

秋也「あんな・・・血の気のない・・・生きてないような千冬・・・。」





心停止した千冬は怖かった。

二度と笑ってくれないようになるのかと思ったら・・・ゾッとした。





秋也「・・・笑ってて。」

千冬「え?」

秋也「俺の隣でずっと笑ってて。歳を取って・・・じーさん、ばーさんになっても・・・俺の隣で笑ってて欲しい。」

千冬「秋也さん・・・・。」






俺の胸に顔を埋めてきた千冬。

ぎゅっと力いっぱい俺の体を抱きしめてる。





秋也「・・・千冬?」

千冬「あのね?私の病気は・・・治らない。でも・・・できるだけ治るようにがんばるから・・・ずっと側にいてもいい・・?」




微かに震えてるように感じる千冬の体。

俺は千冬の頬を手で包んで、上を向かせた。

目に・・・口づけを落とす。





ちゅ・・・・






千冬「?」

秋也「あの日、千冬がカフェに来てくれてよかった。」





年は少し離れてるけど、愛しい気持ちで溢れてる。





秋也「大事にするから・・・。」





そう言って優しく抱きしめる。




千冬「私も・・・ちゃんと秋也さんを支えれるように・・・がんばります。・・・ふふ。」





また俺に抱きついてくる千冬。

その日はずっと抱きしめ合いながら二人でクスクスと笑い合った。

俺は千冬が生きてることを感じながらその温もりに溺れた。

心から大切にしたい彼女は・・・俺にとっての宝物。



一生誰にも渡さない・・・宝物だ。












しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ

中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。 ※ 作品 「男装バレてイケメンに~」 「灼熱の砂丘」 「イケメンはずんどうぽっちゃり…」 こちらの作品を先にお読みください。 各、作品のファン様へ。 こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。 故に、本作品のイメージが崩れた!とか。 あのキャラにこんなことさせないで!とか。 その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)

【完結済】ヒト族ですがもふもふの国で騎士団長やらされてます。

れると
BL
■本編完結済み■ 獣人の国で力も体力もないヒト族のオレが身体強化の魔法と知識で騎士団長やらされてます!目下の目標は後輩育ててさっさと退団したいけど中々退団させて貰えません!恋人と田舎でいちゃいちゃスローライフしたいのに今日も今日とて仕事に振り回されてます! ※大人な内容はタイトル後に※あります。キスだけとかただのイチャイチャは付けないかもしれません。。。 ※処女作品の為拙い場面が多々あるかと思います、がとりあえず完結目指して頑張ります。 ※男性のみの世界です。おばちゃんとか彼女とか嫁とか出てきますが全員男の人です!

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

婚約者の浮気から、どうしてこうなった?

下菊みこと
恋愛
なにがどうしてかそうなったお話。 婚約者と浮気相手は微妙にざまぁ展開。多分主人公の一人勝ち。婚約者に裏切られてから立場も仕事もある意味恵まれたり、思わぬ方からのアプローチがあったり。 小説家になろう様でも投稿しています。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

バツ2旦那様が離婚された理由は「絶倫だから」だそうです。なお、私は「不感症だから」です。

七辻ゆゆ
恋愛
ある意味とても相性がよい旦那様と再婚したら、なんだか妙に愛されています。前の奥様たちは、いったいどうしてこの方と離婚したのでしょうか? ※仲良しが多いのでR18にしましたが、そこまで過激な表現はないかもしれません。

処理中です...