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新人看護師。

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秋也「千冬?針、刺すからな?」



採血のセットを片手に、私に話かける秋也さん。



千冬「あれ?秋也さんがするの?」

秋也「うん。いつも採血してる間はなにしてるんだ?」

千冬「寝てるよ?2時間くらいしたら起こしてもらうんだけど・・・。」




そんな話をしてる間に刺された針。

機械に繋がれ、少しずつ血が取られ始めた。




秋也「じゃあ2時間したら起こす。・・・起きててもいいんだよ?」

千冬「ふふ。それは・・・無理・・か・・な・・。」




ふわふわとした感覚が体を襲い始める。

貧血を起こした体は徐々に重くなり始め、瞼が自然に閉じていく。



秋也「・・・貧血起こすから寝るのか。ゆっくり休みな。」

千冬「ん・・・・・。」




大きな手で頭を撫でられる。

その気持ちよさに、私は夢の世界に旅立った。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー






2時間後・・・





秋也「千冬ー?そろそろ2時間だけど・・・起きれるか?」




秋也さんに体を揺さぶられ、私は目を覚ました。




千冬「・・・おは・・よ?」

秋也「もう19時だけどな。・・・どう?気分は。」




ゆっくり体を起こすと、秋也さんが私の検診を始めた。

聴診器で胸の音を聞いたり、瞼の色を見る。




千冬「だいじょーぶ・・・。」

秋也「造血剤も入れたし、ご飯食べたらゆっくり寝ろよ?」

千冬「んー・・・。」




中途半端に昼寝をしたからか、まだ頭が正常に働かない。




千冬「しゅーや・・さん・・。」

秋也「ん?どうした?」

千冬「も・・おしごと終わる・・?」

秋也「そうだな・・・あと1時間くらいで終わるけど?」

千冬「ご飯・・・行こ・・?」

秋也「!!・・・珍し。千冬からのお誘い。・・・いいよ、じゃあ終わるまで待ってな?」

千冬「もうちょっと・・・寝てる・・。」

秋也「わかった。」




返事を聞いてすぐに横になった私。

一瞬で夢の世界に舞い戻った。




千冬「・・・zzz。」

秋也「鉄分の多く取れるご飯にしないとな。」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





秋也side・・・



眠ってしまった千冬の頬を撫でて、俺は採血室をあとにした。




秋也「さっさと終わらせて・・・そうだなー、焼き鳥屋でも行くかな。レバー食べさせたいし。」



頭の中で色々考えながら医局に戻ると、知らない看護師が俺の机の前に立っていた。




秋也「・・・どこの看護師?」




そう聞くと、奥の方からベテラン看護師長が教えてくれた。




師長「新人さんですよーっ。いろいろ回ってきてうちに決まったそうですーっ。」

秋也「あぁ、そうなんだ。・・・俺の机になんか用?」



そう聞くと、新人の看護師は俺に向かって言った。



新・看護師「私・・・笹倉先生に憧れて内科に来たんです・・!」

秋也「へー、そうなんだ。」

新・看護師「ご指導、よろしくお願いします!」

秋也「こちらこそ。・・・師長ー?」




さっき声がした方に呼びかける。



師長「なんですかー?」

秋也「俺、もう帰るからー。」

師長「引き継ぎだけボードに書いてくださいよーっ。」

秋也「わかってるって。」




夜勤の人がわかるように、入院してる患者の分の情報をホワイトボードに書いていく。




秋也「えーと302号室が薬を変更して、尿量に注意・・・411号室は・・・・・・」




ファイルを片手に持ちながら書き込んでいると、新人の看護師が俺の隣にやって来た。




新・看護師「お手伝いしますっ。」

秋也「・・・・キミはキミの仕事をしなさい。」

新・看護師「私、『天沢』(あまさわ)です。『天沢みずき』。」

秋也「・・・天沢さんは天沢さんの仕事をしなさい。俺はもう帰るから。」





ボードに書き終わった俺は医局を出た。

更衣室で服を着替え、また戻る。

千冬が待つ採血室に行くと、千冬は椅子に座って俺を待ってくれていた。




千冬「あ、秋也さんっ。」

秋也「千冬、起きてたのか?」

千冬「さっき起きたのー。もう大丈夫。」

秋也「じゃあ・・・ご飯に行こうか。」




千冬の手を取って歩き始めようとしたとき、千冬の担当医と出くわした。



医師「で、どこで出会ったのかなー?」




にこにこしながら聞いてくるところが怖い。




千冬「---っ!」

秋也「・・・知人の紹介で。」

医師「へぇー・・・まぁ、よかったんじゃない?僕にとっては千冬ちゃんは『娘』みたいなものだから・・・泣かせたら承知しないよ?」

秋也「わかってますよ。」




担当医の横を通りすぎ、俺たちは病院を出た。

千冬を車に乗せてご飯屋に向かう。



千冬「今日は私にもたせて?」

秋也「いいけど・・・。」

千冬「やったっ。」

秋也「・・・黙って奢られてたらいいのに。」




運転しながら言うと、千冬は反論してきた。











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