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公園に向かってれっつごー。
しおりを挟む雄飛side・・・
俺が朝飛をジュニアシートに乗せてる間に、美悠が後部座席に乗り込んだ。
雄飛「・・・美悠?後ろに乗るのか?」
美悠「え?だって朝飛くん一人じゃダメでしょ?」
雄飛「そう・・・かもしれないけど・・・。」
てっきり隣に座ると思ってたから・・・残念だ。
美悠「?・・・どうかした?」
雄飛「・・・いや?」
少し残念に思いながらも俺は朝飛のシートベルトをつけ終わり、運転席に回る。
エンジンをかけて・・・出発だ。
雄飛「1時間くらいで着くからなー。なんかあったら早い目に言ってくれよー。」
美悠「はーい。」
朝飛「はーいっ。」
ーーーーーーーーーー
朝飛「着いたーっ!」
車を走らせること1時間ちょっと。
目的の公園に到着した。
だだっ広い駐車場に車を停めて・・・入り口に向かう。
朝飛「すべりだいーっ!」
朝飛は遊具が見えた瞬間に駆け出した。
雄飛「あっ!こら待て!勝手に行くな!」
朝飛「きゃーっ!」
俺の言うことなんて耳に入ってない朝飛。
目の前にはたくさんの遊具が朝飛を待っている。
ロングな感じの滑り台にぶらんこ、巨大なジャングルジム。
そんな光景を見たら・・・駆けたくなるのも無理はない。
美悠「私、追いかけて行くよ。」
雄飛「悪い・・・。荷物置けるとこ見つけたら追いかける。」
美悠「ふふっ、任せてー!」
美悠は朝飛を追いかけて走っていった。
俺は辺りを見回しながらあとをついて行った。
ものの数分で見失ってしまうくらい、二人はあっという間に走って行ってしまったけど、あとを追う。
雄飛「木陰がいいよなー。気温は落ち着いてきたけど。」
そう考えながら陰になるところを探して歩く。
しばらく歩いてると大きな木を見つけた。
その根本らへんが・・・木陰になっててちょうどよさそうだ。
雄飛「ここだな。よし・・・。」
俺は美悠が持って来てくれてたレジャーシートを広げて荷物を置く。
貴重品だけ持って・・・朝飛と美悠を探しに向かった。
雄飛「さて、美悠たちはどこにいるかなー。やっぱ滑り台かな。」
辺りを見回しながら歩く。
公園という場所もあってか、周りは親子連ればかり。
歩き始めてまもないような子から、結構大きい子まで遊んでるのが見えた。
雄飛「みんな楽しそうだな。」
そう思って眺めてると、美悠と朝飛の姿を見つけた。
ロングな感じの滑り台のてっぺんにいる。
雄飛「あそこから滑るんなら・・・下りてくるとこで待ってるか。」
俺は滑り台の下り口を探して、そこで待機していた。
雄飛「・・・これ、ローラーの滑り台なのか・・。」
美悠と朝飛が滑ろうとしてる滑り台はローラーでできたやつだった。
少ししゃがんで手で回すと・・・よく回る。
雄飛「これ・・・結構なスピードで下りてくるんじゃ・・・」
そう思ったとき、ガラガラと音が聞こえ始めた。
目線を上に上げると、美悠と朝飛が滑ってくるのが見える。
朝飛「きゃー!はやーいっ!」
美悠「ちょ・・・!速すぎじゃない!?」
雄飛「やっぱり・・・。」
ガラガラと鳴る音がだんだん大きく聞こえてくる。
美悠と朝飛が一緒に滑ってくることを考えると、恐らく朝飛が前で美悠が後ろ。
朝飛を抱き締めるようにして下りてくるはずだ。
雄飛「なら・・・こう下りてくるだろうから・・・」
俺は手を出して二人を待ち構えた。
ほどなくして下りてきた二人・・・
予想通り止まれなさそうなスピードだ。
美悠「きゃあーっ!?」
雄飛「ぃよっ・・・と!」
滑り台から落ちる瞬間に美悠の膝裏をキャッチする。
勢いを急に殺すことはできないから、俺は美悠と朝飛を抱えてくるっと回った。
上手く勢いを殺せて・・・美悠の顔を覗き込む。
雄飛「ずいぶん楽しそうだな(笑)」
美悠「~~~っ!・・・三門さん!?」
朝飛「おじさんだぁっ!」
雄飛「朝飛、吹っ飛ぶとこだったぞ?」
俺は二人を地面に下ろした。
俺が美悠を地面に下ろすと、美悠は朝飛を地面に下ろす。
まるでマトリョーシカだ。
美悠「・・・止めてくれてありがと。」
雄飛「どういたしまして。・・・朝飛とセットくらいがちょうどいい重さだな。」
美悠「!?・・・みっ・・三門さんがおかしいんだよっ・・!」
雄飛「はいはい、さ、次はどこにいく?」
美悠は照れてたみたいだ。
顔を赤くしながら朝飛の手を握る。
美悠「ブランコ行く?」
朝飛「いくっ!」
雄飛「しばらく遊んだら昼にしようなー。」
俺たちは公園の中を動き回った。
ブランコに行くと言った朝飛に付き合ってブランコに行き、滑り台に行くと言えば、一緒に行く。
巨大なジャングルジムでは鬼ごっこみたいな遊びもした。
朝飛「きゃーっ!!」
雄飛「待て待てー、捕まえるぞー(笑)」
美悠「あはははっ!」
走り回ってると時間を忘れるもので、気がつけば公園のあちこちでお弁当を広げてる親子たちの姿が目に入り始めた。
雄飛「美悠、朝飛、そろそろご飯にしようか。」
腕時計の時間を確認すると11時50分。
昼御飯を食べるのにちょうどいい時間だ。
朝飛「ごはん!」
美悠「お弁当作ってきたよ?朝飛くんが食べてくれたら嬉いなー。」
美悠の言葉に、朝飛は少しもじもじし始めた。
ちょっと恥ずかしそうにしながら・・・美悠に聞いた。
朝飛「・・・たこさん、うぃんな?」
美悠「もちろんっ!」
美悠の返事を聞いて、朝飛は飛び上がって喜んだ。
朝飛「たこさん!たこさんっ!」
飛び上がりながらも俺の手と美悠の手を握る朝飛。
その様子を見て、俺は美悠を見た。
美悠「!!・・・ふふっ、せーのっ・・・!」
俺が何を考えてたのかわかったらしくて、美悠は朝飛の手をぎゅっと握った。
雄飛「!!・・・行くぞ、朝飛っ!」
朝飛「?」
俺と美悠は朝飛の手を上に引き上げた。
朝飛「ふあぁぁっ!!すごーい!」
美悠「あははっ!」
雄飛「ははっ!」
俺と美悠は朝飛を持ち上げたまま歩き、お弁当たちを置いてある木陰に向かった。
レジャーシートの上に乗せていた荷物をよけて、美悠と朝飛を座らせる。
美悠「三門さんも座るとこあるよ?ちょっとだけど・・・。」
雄飛「俺は地面でいいよ。二人で座りな?」
小さめなレジャーシートに俺まで座ると、弁当を広げるスペースがなくなってしまう。
地面が濡れてるわけでもないから・・・特にどうってことなかった。
美悠「じゃじゃーん!」
美悠はお弁当箱を取り出して蓋を開けた。
中はサンドイッチだった。
卵に、ハム、肉を挟んだやつも見える。
サンドイッチのすき間を埋めるようにして赤いウィンナーとミニトマトが飾られていて、
その脇に、レタスで包まれたサラダが一口サイズくらいで彩ってるのがある。
手で取って食べれそうで・・・外で食べるのにちょうどよさそうだった。
雄飛「すげぇ・・・!」
朝飛「おいしそうっ!」
美悠「へっへー!召し上がれっ。」
美悠は朝飛に小さいフォークを手渡した。
朝飛はそれを受け取って、サンドイッチのすき間にあるウィンナーを刺した。
刺したウィンナーを目の前まで寄せて・・・じっと見てる。
朝飛「・・・たこさん!」
美悠「カニさんもいるよ?」
朝飛「!・・・どこ!?」
美悠「ほら、ここと・・・ここっ。あとは探してね?」
美悠に言われて朝飛はサンドイッチを覗き込んだ。
タコやカニのウィンナーを見つけては口に放り込んでいく。
雄飛「・・・朝飛と約束でもしてた?ウィンナーの形・・。」
朝飛が喜ぶことがわかってて作ったみたいだ。
美悠と朝飛は昨日初めて会ったばかり。
ましてや美悠には弟や妹もいない。
小さい子に会うのは・・・道場くらいなはずだ。
美悠「あぁ、『幼児』に関する講義も取ってたことがあるの。去年だったから教科書ひっぱりだしてきて読んだ(笑)」
雄飛「それでか・・・。」
『それで』と言っても朝飛が教科書通りの反応をするかどうかなんてわからない。
でも朝飛は・・・美悠の考えてた通りの反応をしたんだろう。
雄飛(・・・美悠との子供・・・欲しいな・・・。)
ふいにそんなことを考えた。
朝飛「?・・・おじさん、たべないのー?」
雄飛「食べるに決まってるだろ?朝飛も腹いっぱい食べろよ?夕方にはパパが迎えに来ると思うから。」
朝飛「!!・・・『ひめなちゃん』にあいにいく!」
雄飛「お。赤ちゃんの名前、決まってたのか。」
朝飛「うん!あさひがきめた!あさひの『ひ』とおなじ!」
雄飛「そうかそうか、朝飛はお兄ちゃんだからな、ちゃんと守れよ?」
朝飛「うんっ!」
俺と美悠と朝飛は、美悠が作ってきてくれたサンドイッチを全て食べた。
少し休憩をしてから遊具に行き、2時間ほど遊んでから帰ることに。
朝飛は目一杯身体を動かして疲れたのか・・・帰りの車のなかで寝てしまってる。
雄飛「あーあー、寝ちゃったかー・・・マンションにつくまで1時間くらいだし・・・着いたら起こすか。」
そう考えながらルームミラーの角度を変えた。
その時、朝飛のとなりに座ってる美悠の姿が映り込み・・・
雄飛「・・・美悠も寝てる。」
一緒になって眠ってしまってる姿が見えた。
きっと朝早くから起きて、サンドイッチを作ってくれたんだろう。
朝飛に付き合って、公園の中を走り回ってくれた。
よく知りもしない朝飛の・・・幼稚園児の相手なんて疲れるに決まっていたことだ。
雄飛「美悠も着いたら起こすか(笑)」
俺は二人がいい夢を見れるように、運転に気を付けながら車を走らせた。
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