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交際。
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美悠side・・・
三門さんと初めてデートをしてから1カ月が経った。
秋の訪れを感じるようにもなり、
朝は寒いと思う時もあるけど、まだまだ昼間は暑い。
そんな中、私はテスト期間中に入ってしまい、道場に行けないでいる。
美悠「うー・・・身体、動かしたい・・・明日でテストも終わるし・・・早く次の土曜にならないかなー・・・。」
そんなことを思いながら家でノートを開いてると、私のケータイが鳴った。
ピピピッ・・・ピピピッ・・・・
美悠「?・・・げっ・・・パパだ・・・。」
ケータイの画面には『パパ』の文字。
嫌な予感をしつつも・・・私は電話に出た。
ピッ・・・
美悠「・・・もしもし?」
パパ「美悠?元気でやってるかい?」
美悠「パパ・・・元気だけど、何の用?」
パパ「今日帰国したから・・・明日にでもご飯、一緒にどうだい?」
美悠「明日はお昼過ぎに大学が終わるから・・・それからならいいけど・・・。」
パパ「じゃあいつものホテルで。大学まで迎えを寄越すから。」
美悠「・・・わかった。じゃね」ピッ・・・
私は電話を切った後、ため息がこぼれた。
美悠「はぁー・・・。」
パパからの連絡。
場所はホテル。
迎えを寄越すことから考えて・・・おそらく見合いがある。
美悠「三門さんと一緒にいたいって言ったら・・・怒られるかな・・・。」
私のお見合い相手は・・・おそらくかりんのお兄さんだ。
かりんのところはホテルや旅館の経営。
うちはリゾート地。
組めば・・・相性はいい。
美悠「湊さんは素敵だけど・・・かりん大好きだからなー・・私なんて見向きもしないだろうし・・向こうもいい迷惑だよね・・・。」
かりんより二つ年上のお兄さん『湊さん』。
湊さんは、かりんのお父さんそっくりだ。
整った顔立ちにスマートに振る舞う姿はまさに・・・『王子様』。
美悠「どうしたらいいんだろ・・・。」
頭を悩ませながらも私はテスト勉強に励んだ。
ーーーーーーーーーー
翌日・・・
美悠「んーっ・・・!終わったぁっ!」
無事にテストが終了した私は、荷物をまとめて大学の構内から出た。
迎えが来る人用の・・・専用の駐車場に足を向ける。
美悠「えーっと・・・うちの車は・・・・っと。」
キョロキョロと辺りを見回しながら車を探してると、私の前に1台の車がやって来た。
これは・・・うちの車だ。
運転手「お迎えにあがりました。」
美悠「ありがと。」
運転手はさっと下りてきて、後部座席のドアを開けてくれた。
いつものことだけど・・・自分でできるのにって思ってしまう。
美悠「私、自分で開けるよ?」
運転手「仕事ですので。」
美悠「・・・。」
私は開けてもらったドアから車に乗り込んだ。
ドアが閉められ、シートベルトをする。
美悠「ねぇ・・・今日ってお見合い?」
運転手「それは私の口からはなんとも・・・・。」
美悠「湊さん来てた?」
運転手「いらっしゃる予定ですが・・・。」
美悠「そっかー・・・。」
両親の仕事上、湊さんとの関係にヒビを入れるわけにはいかない。
どうやって断るかが・・・キモだ。
美悠(パパたちが湊さんに会う前に私が両親に会えたら断りやすいんだけど・・・)
私が湊さんより先に両親に会えれば、『とりあえず聞いて欲しい話があるから見合いは延期して。』って言える。
でも、湊さんと両親が一緒にいるときに私が行くと・・・そんなこと言えなくなる。
二人の怒りを買うことはできない。
美悠「・・・ごめん、ちょっと急いでもらってもいい?」
運転手「かしこまりました。」
私は湊さんが着くより早くに両親に会えることを祈りながら・・・・ホテルに向かった。
ーーーーーーーーーー
パパ「・・・おぉ、遅かったな。湊くんがもう待ってくれてるよ。」
美悠(・・・・・・。)
ホテルに着いたあと、私は食事の部屋に通された。
広い個室の部屋。
そこで・・・パパとママと湊さんが私を待っていたのだ。
美悠(遅かった・・・。)
パパ「早く座りなさい。」
美悠「はい・・・。」
私は一つだけ空けられていた席に座った。
湊「久しぶりだな、美悠。」
美悠「お久しぶりです。かりんはこの前会いましたよ?」
湊「あいつ・・・水樹伯父さんの店でピアノ弾いただろ。誰かがケータイで撮ってたみたいでSNSに上がってた。」
美悠「えぇ!?」
湊「消すのに苦労したよ。・・・全く。」
ぶつぶつ言う湊さん。
私はかりんの演奏よりも驚いたことがあった。
美悠(あのお店・・・水樹さんの店だったんだ・・・。)
かりんが『水樹ちゃん、キッチンに入ったー。』なんて言ってたからなんでだろうって思ってたけど・・・
湊さんの言葉でその理由を知ることができた。
美悠(しまった・・・パフェ、食べればよかった・・・。)
そんなことを思ってるうちに、食事が運ばれ始めて・・・パパが口を開いた。
パパ「湊くんは・・・お父さんの会社を継ぐんだろう?」
湊さんのお父さん・・・つまり、かりんのお父さんはこの国トップの旅館経営者。
おじいさんはホテルの経営者だから・・・宿泊施設ではこの国最大の企業になる。
湊「・・・そのつもりです。」
パパ「うちのリゾートも・・・一緒にどうかな?」
美悠「!?」
湊「そう・・ですねー・・・。」
パパ「美悠と結婚したら・・・任せていいと思ってるけど?」
美悠(まずい・・・。)
このまま話が流れていくと、湊さんと・・・ってことに決まってしまう。
阻止したい私は、怒らせるのを覚悟しながら・・・口を開いた。
美悠「あの・・・っ!」
湊「僕は結婚しなくても・・・宝条家のリゾート地・・・収益を上げることできますよ?」
美悠「・・・え?」
湊さんの言葉にパパが反応する。
パパ「・・・美悠と結婚はしない・・と?」
美悠「ーーーっ。」
パパは・・・湊さんのことを睨みあげた。
その顔はいつもの『パパ』じゃない。
美悠「ぱ・・・パパ・・?」
パパの怖い顔に、私は機嫌を伺うようにして声をかける。
普段見ることのない表情。
どんな言葉を言えばこの場が和むのかを必死に考える。
美悠「あの・・・その・・・」
何が正解なのかがわからず、言葉に困ってると・・・湊さんが口を開いた。
湊「・・・おじさん、美悠が困ってますよ。これくらいでいいんじゃないですか?」
美悠「・・・・・・へ?」
何を言ってるのかわからない私は、湊さんとパパを交互に見た。
今の今まで湊さんを睨みあげてたパパの表情はみるみるうちに変わっていき・・・
声を上げて笑い始めた。
パパ「ははっ・・・!」
美悠「え?・・・え?え?」
笑いまくるパパに代わって・・・ママが私に言う。
ママ「もー・・・。美悠?ごめんね?」
美悠「え?一体・・・なに・・?」
ママ「彼に来てもらったほうが説明は早いんじゃないかしら。・・・お通しして?」
美悠「?」
ママの言葉を聞いたホテルのスタッフさんが、部屋から出ていった。
でも、ものの数秒で戻ってきた。
・・・三門さんを連れて。
雄飛「・・・失礼します。」
美悠「・・・え!?三門さん!?」
ママ「彼ね、1ヶ月前くらいからかしら・・・うちの会社に片っ端から電話かけてきたのよ。」
美悠「え!?」
ママ「『代表と話がしたい』って言って。」
驚きながら三門さんを見ると、今度は湊さんが口を開いた。
湊「俺もかかってきた。宝条の代表と連絡取りたいって。」
美悠「えぇ!?」
湊「家族ぐるみの付き合いって言ったんだって?」
美悠「私、かりんの苗字は言ってないよ!?」
湊「その『かりん』からかかってきたんだよ。彼は大学でかりんを探し回ったみたいで・・・かりんのケータイから俺んとこに。」
美悠「なんで・・・」
意味が分からない私に、今度は笑いまくっていたパパが口を開いた。
パパ「美悠はお見合いすると思ってただろう?」
美悠「う・・うん。だって・・・会社の為にはそれがいい・・・・。」
パパ「『会社』にはね。でも・・・美悠はパパとママの子供だ。幸せに思えない結婚は・・・させたくないんだよ。」
美悠「パパ・・・・。」
パパ「ま、彼からの連絡は必死だったみたいだし?・・・いい人と出会ったもんだね。」
よくよく話を聞いてみると、三門さんは私をデートした後から両親に連絡を取ろうと、うちの会社に関連してるところに片っ端から電話をかけてたらしい。
電話を受ける気が無かった両親は放っておいたけど、湊さんから電話があって・・・三門さんと電話で話した・・・と。
最初は私のことを利用するような電話だと思ってた両親に、三門さんは『私の幼少期』の話を持ち出した。
それで私との関係に確信を持てた・・・と。
パパ「ま、それだけじゃないけど。」
美悠「?」
湊「・・・じゃ、俺はこれで失礼しますね。」
そう言って湊さんは席から立ち上がった。
美悠「えっ・・・!帰るんですか!?」
湊「・・・美悠は俺と結婚する?」
その言葉に、私は首をぶんぶんと横に振った。
湊「ははっ。・・・俺も誰かと結婚する気は無いんだ。まだまだかりんが心配だからな。」
美悠「湊さん・・・。」
湊「おじさん、業務提携するときは教えてくださいね。びっくりするくらい黒・・・出して見せますから。」
パパ「ははっ、そのときは頼むよ。」
湊「じゃ。」
湊さんは部屋から出て行き、パパとママ、それから私と三門さんが部屋に残された。
パパ「さてと。・・・三門くん。」
雄飛「はい。」
パパ「美悠と付き合うっていうことがどういうことかわかるかな?一般的なお嬢さんたちとは違うよ?」
笑顔だけど・・・三門さんを睨むようにして見てるパパ。
その笑顔に・・三門さんがどう答えるのか・・・・。
私は三門さんを見た。
雄飛「正直・・・わかりません。大企業である宝条家の一人娘・・・ですけど、彼女は純粋で・・正直で・・・ごくごく普通の女の子です。」
パパ「ほぅ・・・。」
雄飛「僕はそんな彼女の笑顔を・・・守りたい。それこそ一生をかけて。」
真剣な顔でパパをみる三門さん。
そんな真剣な顔は初めて見た。
パパ「ふーん・・・?」
そんな三門さんの言葉を不機嫌な様子で聞き流すパパ。
その態度を見たママが・・・口を開いた。
ママ「もー・・・わかってることなんだからいじわるしないのよ?パパ。」
美悠「・・・え?」
ママ「ほらパパ、言ってあげなさい。」
ママに言われて、パパは渋々・・・と言った感じで三門さんに話始めた。
パパ「はー・・・。まぁ・・・・貧血の美悠を助けてくれたもんな。」
雄飛「・・・・・え!?」
パパ「あと・・・・・抱き上げてた美悠をコンクリの床に落とさずに庇ったし?・・・・あ、迷路で迷子になった美悠もちゃんと見つけたか。あとーーーーーーーーー」
次から次に・・・私と三門さんのことを話し始めるパパ。
美悠「いっ・・・いつ見てたの!?」
パパ「美悠が一人暮らしとか心配だろ?監視役はいつもいるんだよ。」
美悠「!?!?」
パパ「三門くんの強さも・・・人柄も?申し分ないみたいだし・・・監視役はもう外すよ。」
美悠「それってどういう・・・・・」
ママ「交際していいってことよ。」
美悠「!!」
ママの言葉に驚いてると、三門さんが深く頭を下げた。
雄飛「傷つけるようなことはしません。守りながら・・・幸せにします。」
パパ「・・・泣かせたら・・・承知しないからね。」
ーーーーーーーーーー
三門さんと初めてデートをしてから1カ月が経った。
秋の訪れを感じるようにもなり、
朝は寒いと思う時もあるけど、まだまだ昼間は暑い。
そんな中、私はテスト期間中に入ってしまい、道場に行けないでいる。
美悠「うー・・・身体、動かしたい・・・明日でテストも終わるし・・・早く次の土曜にならないかなー・・・。」
そんなことを思いながら家でノートを開いてると、私のケータイが鳴った。
ピピピッ・・・ピピピッ・・・・
美悠「?・・・げっ・・・パパだ・・・。」
ケータイの画面には『パパ』の文字。
嫌な予感をしつつも・・・私は電話に出た。
ピッ・・・
美悠「・・・もしもし?」
パパ「美悠?元気でやってるかい?」
美悠「パパ・・・元気だけど、何の用?」
パパ「今日帰国したから・・・明日にでもご飯、一緒にどうだい?」
美悠「明日はお昼過ぎに大学が終わるから・・・それからならいいけど・・・。」
パパ「じゃあいつものホテルで。大学まで迎えを寄越すから。」
美悠「・・・わかった。じゃね」ピッ・・・
私は電話を切った後、ため息がこぼれた。
美悠「はぁー・・・。」
パパからの連絡。
場所はホテル。
迎えを寄越すことから考えて・・・おそらく見合いがある。
美悠「三門さんと一緒にいたいって言ったら・・・怒られるかな・・・。」
私のお見合い相手は・・・おそらくかりんのお兄さんだ。
かりんのところはホテルや旅館の経営。
うちはリゾート地。
組めば・・・相性はいい。
美悠「湊さんは素敵だけど・・・かりん大好きだからなー・・私なんて見向きもしないだろうし・・向こうもいい迷惑だよね・・・。」
かりんより二つ年上のお兄さん『湊さん』。
湊さんは、かりんのお父さんそっくりだ。
整った顔立ちにスマートに振る舞う姿はまさに・・・『王子様』。
美悠「どうしたらいいんだろ・・・。」
頭を悩ませながらも私はテスト勉強に励んだ。
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翌日・・・
美悠「んーっ・・・!終わったぁっ!」
無事にテストが終了した私は、荷物をまとめて大学の構内から出た。
迎えが来る人用の・・・専用の駐車場に足を向ける。
美悠「えーっと・・・うちの車は・・・・っと。」
キョロキョロと辺りを見回しながら車を探してると、私の前に1台の車がやって来た。
これは・・・うちの車だ。
運転手「お迎えにあがりました。」
美悠「ありがと。」
運転手はさっと下りてきて、後部座席のドアを開けてくれた。
いつものことだけど・・・自分でできるのにって思ってしまう。
美悠「私、自分で開けるよ?」
運転手「仕事ですので。」
美悠「・・・。」
私は開けてもらったドアから車に乗り込んだ。
ドアが閉められ、シートベルトをする。
美悠「ねぇ・・・今日ってお見合い?」
運転手「それは私の口からはなんとも・・・・。」
美悠「湊さん来てた?」
運転手「いらっしゃる予定ですが・・・。」
美悠「そっかー・・・。」
両親の仕事上、湊さんとの関係にヒビを入れるわけにはいかない。
どうやって断るかが・・・キモだ。
美悠(パパたちが湊さんに会う前に私が両親に会えたら断りやすいんだけど・・・)
私が湊さんより先に両親に会えれば、『とりあえず聞いて欲しい話があるから見合いは延期して。』って言える。
でも、湊さんと両親が一緒にいるときに私が行くと・・・そんなこと言えなくなる。
二人の怒りを買うことはできない。
美悠「・・・ごめん、ちょっと急いでもらってもいい?」
運転手「かしこまりました。」
私は湊さんが着くより早くに両親に会えることを祈りながら・・・・ホテルに向かった。
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パパ「・・・おぉ、遅かったな。湊くんがもう待ってくれてるよ。」
美悠(・・・・・・。)
ホテルに着いたあと、私は食事の部屋に通された。
広い個室の部屋。
そこで・・・パパとママと湊さんが私を待っていたのだ。
美悠(遅かった・・・。)
パパ「早く座りなさい。」
美悠「はい・・・。」
私は一つだけ空けられていた席に座った。
湊「久しぶりだな、美悠。」
美悠「お久しぶりです。かりんはこの前会いましたよ?」
湊「あいつ・・・水樹伯父さんの店でピアノ弾いただろ。誰かがケータイで撮ってたみたいでSNSに上がってた。」
美悠「えぇ!?」
湊「消すのに苦労したよ。・・・全く。」
ぶつぶつ言う湊さん。
私はかりんの演奏よりも驚いたことがあった。
美悠(あのお店・・・水樹さんの店だったんだ・・・。)
かりんが『水樹ちゃん、キッチンに入ったー。』なんて言ってたからなんでだろうって思ってたけど・・・
湊さんの言葉でその理由を知ることができた。
美悠(しまった・・・パフェ、食べればよかった・・・。)
そんなことを思ってるうちに、食事が運ばれ始めて・・・パパが口を開いた。
パパ「湊くんは・・・お父さんの会社を継ぐんだろう?」
湊さんのお父さん・・・つまり、かりんのお父さんはこの国トップの旅館経営者。
おじいさんはホテルの経営者だから・・・宿泊施設ではこの国最大の企業になる。
湊「・・・そのつもりです。」
パパ「うちのリゾートも・・・一緒にどうかな?」
美悠「!?」
湊「そう・・ですねー・・・。」
パパ「美悠と結婚したら・・・任せていいと思ってるけど?」
美悠(まずい・・・。)
このまま話が流れていくと、湊さんと・・・ってことに決まってしまう。
阻止したい私は、怒らせるのを覚悟しながら・・・口を開いた。
美悠「あの・・・っ!」
湊「僕は結婚しなくても・・・宝条家のリゾート地・・・収益を上げることできますよ?」
美悠「・・・え?」
湊さんの言葉にパパが反応する。
パパ「・・・美悠と結婚はしない・・と?」
美悠「ーーーっ。」
パパは・・・湊さんのことを睨みあげた。
その顔はいつもの『パパ』じゃない。
美悠「ぱ・・・パパ・・?」
パパの怖い顔に、私は機嫌を伺うようにして声をかける。
普段見ることのない表情。
どんな言葉を言えばこの場が和むのかを必死に考える。
美悠「あの・・・その・・・」
何が正解なのかがわからず、言葉に困ってると・・・湊さんが口を開いた。
湊「・・・おじさん、美悠が困ってますよ。これくらいでいいんじゃないですか?」
美悠「・・・・・・へ?」
何を言ってるのかわからない私は、湊さんとパパを交互に見た。
今の今まで湊さんを睨みあげてたパパの表情はみるみるうちに変わっていき・・・
声を上げて笑い始めた。
パパ「ははっ・・・!」
美悠「え?・・・え?え?」
笑いまくるパパに代わって・・・ママが私に言う。
ママ「もー・・・。美悠?ごめんね?」
美悠「え?一体・・・なに・・?」
ママ「彼に来てもらったほうが説明は早いんじゃないかしら。・・・お通しして?」
美悠「?」
ママの言葉を聞いたホテルのスタッフさんが、部屋から出ていった。
でも、ものの数秒で戻ってきた。
・・・三門さんを連れて。
雄飛「・・・失礼します。」
美悠「・・・え!?三門さん!?」
ママ「彼ね、1ヶ月前くらいからかしら・・・うちの会社に片っ端から電話かけてきたのよ。」
美悠「え!?」
ママ「『代表と話がしたい』って言って。」
驚きながら三門さんを見ると、今度は湊さんが口を開いた。
湊「俺もかかってきた。宝条の代表と連絡取りたいって。」
美悠「えぇ!?」
湊「家族ぐるみの付き合いって言ったんだって?」
美悠「私、かりんの苗字は言ってないよ!?」
湊「その『かりん』からかかってきたんだよ。彼は大学でかりんを探し回ったみたいで・・・かりんのケータイから俺んとこに。」
美悠「なんで・・・」
意味が分からない私に、今度は笑いまくっていたパパが口を開いた。
パパ「美悠はお見合いすると思ってただろう?」
美悠「う・・うん。だって・・・会社の為にはそれがいい・・・・。」
パパ「『会社』にはね。でも・・・美悠はパパとママの子供だ。幸せに思えない結婚は・・・させたくないんだよ。」
美悠「パパ・・・・。」
パパ「ま、彼からの連絡は必死だったみたいだし?・・・いい人と出会ったもんだね。」
よくよく話を聞いてみると、三門さんは私をデートした後から両親に連絡を取ろうと、うちの会社に関連してるところに片っ端から電話をかけてたらしい。
電話を受ける気が無かった両親は放っておいたけど、湊さんから電話があって・・・三門さんと電話で話した・・・と。
最初は私のことを利用するような電話だと思ってた両親に、三門さんは『私の幼少期』の話を持ち出した。
それで私との関係に確信を持てた・・・と。
パパ「ま、それだけじゃないけど。」
美悠「?」
湊「・・・じゃ、俺はこれで失礼しますね。」
そう言って湊さんは席から立ち上がった。
美悠「えっ・・・!帰るんですか!?」
湊「・・・美悠は俺と結婚する?」
その言葉に、私は首をぶんぶんと横に振った。
湊「ははっ。・・・俺も誰かと結婚する気は無いんだ。まだまだかりんが心配だからな。」
美悠「湊さん・・・。」
湊「おじさん、業務提携するときは教えてくださいね。びっくりするくらい黒・・・出して見せますから。」
パパ「ははっ、そのときは頼むよ。」
湊「じゃ。」
湊さんは部屋から出て行き、パパとママ、それから私と三門さんが部屋に残された。
パパ「さてと。・・・三門くん。」
雄飛「はい。」
パパ「美悠と付き合うっていうことがどういうことかわかるかな?一般的なお嬢さんたちとは違うよ?」
笑顔だけど・・・三門さんを睨むようにして見てるパパ。
その笑顔に・・三門さんがどう答えるのか・・・・。
私は三門さんを見た。
雄飛「正直・・・わかりません。大企業である宝条家の一人娘・・・ですけど、彼女は純粋で・・正直で・・・ごくごく普通の女の子です。」
パパ「ほぅ・・・。」
雄飛「僕はそんな彼女の笑顔を・・・守りたい。それこそ一生をかけて。」
真剣な顔でパパをみる三門さん。
そんな真剣な顔は初めて見た。
パパ「ふーん・・・?」
そんな三門さんの言葉を不機嫌な様子で聞き流すパパ。
その態度を見たママが・・・口を開いた。
ママ「もー・・・わかってることなんだからいじわるしないのよ?パパ。」
美悠「・・・え?」
ママ「ほらパパ、言ってあげなさい。」
ママに言われて、パパは渋々・・・と言った感じで三門さんに話始めた。
パパ「はー・・・。まぁ・・・・貧血の美悠を助けてくれたもんな。」
雄飛「・・・・・え!?」
パパ「あと・・・・・抱き上げてた美悠をコンクリの床に落とさずに庇ったし?・・・・あ、迷路で迷子になった美悠もちゃんと見つけたか。あとーーーーーーーーー」
次から次に・・・私と三門さんのことを話し始めるパパ。
美悠「いっ・・・いつ見てたの!?」
パパ「美悠が一人暮らしとか心配だろ?監視役はいつもいるんだよ。」
美悠「!?!?」
パパ「三門くんの強さも・・・人柄も?申し分ないみたいだし・・・監視役はもう外すよ。」
美悠「それってどういう・・・・・」
ママ「交際していいってことよ。」
美悠「!!」
ママの言葉に驚いてると、三門さんが深く頭を下げた。
雄飛「傷つけるようなことはしません。守りながら・・・幸せにします。」
パパ「・・・泣かせたら・・・承知しないからね。」
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