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もう学校は限界。

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りらの点滴が強いものになってからは発作はあまり起きなくなった。

俺と結婚したりらは名前が『中谷りら』から『工藤りら』に変わり、作った印鑑を見つめてはニヤついてる。





秋臣(そんな姿もかわいいんだけど・・・。)





学校には伝えてないから俺たちの結婚のことを知ってるのは翼だけ。

りらは結婚指輪をネックレスに通して首につけて学校に通っていた。




りら「こうしてる子、結構いるよ?」

秋臣「俺はわかんないけど・・・。」





なんでも『彼氏』からもらった指輪をネックレスに通して、制服の下に隠してるらしい。





秋臣「まぁ、りらが喜ぶなら。」




そういう俺は財布に指輪をしまってる。

放課後や休みの日はちゃんとつけてるし。



りら「ふふっ。」





りらは体育はなんやかんや理由をつけて見学してやり過ごしていた。

時たま女子たちに体調を心配されてたけど、りらは笑顔でかわしていった。






そんな感じで・・・結構な月日が流れていった。

結婚して半年がたったころ、薬は1週間に一度程度に強い点滴をいれてたけど、日が経つにつれて5日に一度・・・4日に一度・・・3日に一度と間隔が短くなっていき、それに伴って副作用が重くのしかかり始めた。

胸の苦しみが取れる代わりに・・・倦怠感がりらを襲ってるのだ。




りら「はぁー・・・」



副作用は時間が経てば抜けていくものだけど、定期的に点滴を繰り返してるりらの身体からはなかなか抜けてくれなくなっていった。

ましてや点滴の間隔も短い。

副作用が抜ける前に次の点滴がやってきてしまう。





りら「ちょっと・・・休憩したい・・・。」






学校の帰り道に二人で歩いてると、だんだんりらの足が遅くなってくる。

病院まであと少しってとこなのに・・・1歩を踏み出すのがとても辛そうだ。



秋臣「車いす取ってこようか?」

りら「・・・やだ。」



そう言って2,3歩歩いては立ち止まる。




秋臣(そろそろ学校も限界かな。)



2~3日に1度は学校を休むようになってきた。

教室にいても身体がだるいからか机に突っ伏することがまぁまぁある。

クラスメイトたちは・・・




生徒「大丈夫?」

生徒「風邪?」



とか言って心配してくれてるけど、当のりらは・・・




りら「昨日遅くまでDVD見てたから寝不足なのー・・・。」



って言って、クラスメイトたちの心配をかわしていた。




秋臣「・・・もう、学校いくの止めたほうがいいんじゃないか?」



少しずつ歩くりらに提案した。

そりゃあ、りらの気持ちを考えたら一回でも学校に通わせてあげたい。

でもりらの身体を考えたらもう病院でゆっくりしてて欲しいとも思った。




りら「明日、一緒に最後のテスト受けるでしょ・・・?受かったら・・・ちょっと休むね。」




明日はりらと二人で放課後にテストを受ける予定だ。

りらの前回の結果は国語のみ1点足りなかった。

今回は・・・受かるだろう。




秋臣「・・・わかった。」




だるそうに歩くりらは、時間はかかったけどなんとかエレベーターに乗り、自分の部屋にたどり着くことができた。

部屋に入るなり自分のベッドにダイブしてそのまま眠っていく。



りら「・・・zzz。」

秋臣「あーあー・・・。」




俺はりらの鞄を机に置き、りらの身体をベッドの真ん中に動かした。

制服のままだけど・・・布団をかぶせる。






秋臣「卒業式まであと5か月だ。がんばれ。」

りら「・・・zzz。」





りらの頭を撫でてると、ガラガラと音を立てて部屋のドアが開いた。

入ってきたのは・・・りらのお兄さんだ。




葵「お?おかえり。」

秋臣「ただいまです。りらは寝ちゃってますよ。」

葵「最近ずっとだな。帰ってきたらそのまま寝るの。」

秋臣「だるさがキツいみたいですね。」




毎日送ってきてもりらは眠ってしまう。

このまま時間を使うのが勿体ないと思った俺は、前々から計画してたことをお兄さんに相談してみることにした。



秋臣「俺・・・ここに住んでもいいですか?」

葵「ここに?」




ここに住めばずっと一緒にいられる。

夜も・・・朝も一緒だ。

りらの異変にも気づける。




秋臣「明日のテストに受かれば俺もりらも卒業が確定します。極端な話、あとは卒業式に出れさえすればいい。俺はりらと・・・1分でも1秒でも一緒にいたい。」




日に日に弱っていくのが目に見えてわかってる。

りらにはもう時間がない。




葵「・・・ベッドの用意するから来週からでいいか?」

秋臣「!!・・・ありがとうございます。」





こうして俺はりらとの同居(?)が始まることになった。

この日はこのまま家に帰り、両親に説明した。

来週からりらと一緒に住むことと・・・りらの時間がもうないことを。




母「一緒にいなさい。そのほうがいい。」

父「そうだな。とぅさんたちもお見舞いには行くから・・・。」

秋臣「市販の食べ物は持って来ないでよ?」

母「わかってるわよ。」




俺は自分の部屋に入り、荷物を用意するために大きな鞄を取りだした。

服やパジャマ、洗面用具に・・・仕事の道具を放り込んでいく。



秋臣「クレセントがツアー中で助かったな。仕事がまだ少ない。」



作曲はピアノが無くてもできる。

ノートと・・・ケータイさえあれば。



秋臣「また今度・・・弾いてやるから待っててくれよ?」



そうグランドピアノに話しかけて・・・俺はピアノカバーをかけた。









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