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その手があった・・・!

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キーンコーンカーンコーン・・・






午前中の授業を受け終わり、昼休に突入した俺は翼と一緒に昼ご飯を食べていた。

りらと一緒に食べるはずだったお弁当を広げて。





翼「中谷は?調子悪いのか?」

秋臣「あぁ、今朝も迎えに行ったら発作起こしてた。」

翼「なんか最近休むことも多いような気がするな・・・大丈夫なのか?」

秋臣「大丈夫、すぐに元気になる。」





翼はりらの余命のことは知らない。

だから・・・『大丈夫』としか言いようがなかった。




秋臣「ずっとりらと一緒にいる方法ってないのかなー・・・。」




朝は、俺が病院までりらを迎えに行く。

俺の仕事の話とか、次に遊びに行くところを相談なんかしながら一緒に歩く。

りらが学校に来てるときは・・・まぁ、一緒にいるとして、学校が終われば病院に帰る。

そこで一緒に勉強したり、テレビ見たりと時間を過ごして、晩御飯の時間になったら俺は帰る。

で、また朝に迎えに行く。




秋臣「もっと一緒にいたいんだけどなー・・・。」




そんなことを呟きながら、卵焼きを口に放り込んだ。





翼「え?ずっと一緒ってことは結婚すんのか?」

秋臣「結婚・・・・・?」

翼「まー・・・結婚するにしても大学卒業してからだな。まだ高校生なんだし。」

秋臣「・・・・・。」





結婚すれば・・・夫婦になれば・・・りらとずっと一緒にいられる。

高校生が結婚しちゃいけない法律は・・・この国にはない。

確か・・・男は18歳以上で女は16歳以上から結婚できたはず・・・。





秋臣「!!・・・・ありがとな!翼!」

翼「へ?」




俺は弁当を片付けて鞄にしまった。

そのまま荷物をまとめてコートを羽織る。



翼「・・・帰んのか!?」

秋臣「りらが心配だから帰る!先生には上手く言っといてくれ!」

翼「あー・・・りょーかい。」





後のことは翼に頼んで、俺はりらがいる病院に向かって走った。





ーーーーーーーーーー






病院についた俺は、りらの部屋の前で立ち・・・小さくノックをした。




コンコン・・・・




りら「はーい・・・。」

秋臣(!!・・・起きてる・・。)





そーっとドアを開けて中に入り・・・りらが寝てるベッドのほうに行った。

今朝は苦しそうに息をしてたりらが・・・ベッドで身体を起こして雑誌を読んでいた。




りら「・・・オミくん?がっこは?」

秋臣「早退。調子、良くなったんだな。」




ぶら下げていた点滴の数も一つだけになっていた。



りら「うん。寒いとね、胸がきゅー・・・ってなっちゃうから。」

秋臣「そっか。」





俺はベッド脇にある小さな椅子に腰かけ、コートを脱いだ。

外は寒いけど・・・りらの部屋はいつも一定の温度が保たれてる。

コートを着たままじゃ暑い。





りら「なんで早退したの?」




りらは雑誌をペラペラとめくりながら俺に聞いてきた。



秋臣「りらに・・・会いたくて・・。」

りら「・・・へ?」

秋臣「好きすぎて・・・ずっと一緒にいたくて・・・早退した。」




そう言うとりらは目を丸くして驚いた。

でもすぐに表情が柔らかくなって・・・



りら「・・・ふふっ、私も大好きだよ?」

秋臣「!!」




ふにゃっと表情を崩して笑うりら。

その顔があまりにも可愛くて・・・俺はりらの身体を抱きしめた。




りら「?・・・どうしたの?」

秋臣「俺のこと・・・一生好きでいてくれる?」




運動の制限があるからか、細っこい身体をしてるりら。

ぎゅっと力いっぱい抱きしめたら、ぽきっと音を立てて折れてしまいそうだ。





りら「え?・・・好きでいるよ?」

秋臣「なら・・・もう少ししたら来る俺の誕生日に・・・結婚しよう。」






りらの時間が限られてるからプロポーズした・・・ってわけじゃない。

きっと長いであろう俺の人生に、『りら』以外の女はいらない。

なにがあっても・・・どんなことがあっても・・・俺はりらだけを好きでいる。





りら「!?・・・ちょ・・・早すぎない?」

秋臣「俺が18歳になったら法律上は結婚できる。」

りら「でも高校生だよ?」

秋臣「高校生は結婚しちゃいけないなんて法律はない。」

りら「でも・・・・・」





抱きしめていた腕からりらを解放すると、りらは俯きながら自分の胸を手で押さえた。

それは・・・心臓のあるところだ。




秋臣「俺は大人になってもずっとりらと一緒にいる。」

りら「え?」

秋臣「結婚してもりらくらい養える。今年の収入は・・・たしか4億だ。」

りら「よ!?」

秋臣「だからりらは働かなくったって全然大丈夫。結婚してゆっくり病気を治していこう?」





『ゆっくり治す』なんてことできないことはわかってる。

お兄さんから散々説明された『りらの余命』。

それはちゃんと・・・一年くらいかけて理解していた。


最初は信じたくなかったけど・・・りらの発作が・・・時間がないことを教えてくれてるようだった。





りら「・・・少し・・考えてもいい・・?」

秋臣「うん。お兄さんとも相談して?婚姻届けには保護者のサインがいる。俺も親に言うから・・・。」

りら「わかった。」






もう調子はいいとしても、今朝は発作で苦しんでいたりら。

俺はそのまま家に帰ることにした。

両親にも相談しないといけないから・・・





秋臣「また明日迎えに来る。」

りら「うん。気をつけてね?」

秋臣「ん。・・・ばい。」





俺はりらの部屋を出て病院をあとにした。

そのまま自宅に帰り・・・夜勤前で起きてきた父親と、キッチンで晩御飯の用意をしてる母親に結婚したいことを伝えた。





















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