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月日が流れるのは早いもの。
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りらがうちに遊びに来てから・・・数週間。
時々学校を休むことはあっても、りらは元気に学校に来ていた。
暑い季節は終わりを告げて、朝晩が寒い季節に突入する。
コートこそはまだいらないものの、りらは風邪を引かないようにとマフラーをしてくるようになった。
りら「オミくんっ、テスト、どこまでいった?」
お昼ご飯を食べてるときに参考書を広げながらりらが聞いてきた。
秋臣「あー・・結構進んだけど?」
りら「やばい・・・追いつかれる日も近いかも・・。」
秋臣「すぐに抜いてやるさ。」
そんな話をしながらお弁当を食べていた時、翼が俺たちの前に現れた。
翼「なーなー、オミー。俺、今日パン1個しかないからおかず分けてくれっ。」
そう言って俺の弁当に手を伸ばして卵焼きを一つ奪い取った。
秋臣「あっ!!」
翼「いっただっきまーす!」
ぱくっと口に放り込んだ翼。
もぐもぐ食べながらも・・・味がないことに気がついたようだ。
翼「・・・あれ?」
秋臣「・・・・。」
卵焼きを飲み込んだあと、翼は俺の弁当に入ってるかぼちゃの煮物にも手を出した。
ぱくっと口に放り込んで味を確かめてる。
翼「・・・・・。」
秋臣(どうしよう・・・。)
翼が何て言って口を開くのか待ってると、翼は口を開かずにりらの弁当のおかずに手を出した。
一つ、つまんで口に放り込む。
翼「・・・・ふーん?ごちそうさま。」
そう言って翼は教室から出て行った。
りら「・・・味ないの・・気づいたよね・・?」
秋臣「たぶん・・・。でも翼は大丈夫だと思うんだけど・・。」
俺の秘密を教えたあとも、翼は誰にも話してない。
信用に値するやつなのは間違いない。
秋臣「言われたら・・・言っていい?」
りら「私のこと?いいけど?」
秋臣「ちゃんと口止めしとくから。」
りら「オミ君くんのことも知ってるんでしょ?なら大丈夫だと思うし・・・。」
今日の放課後あたりに翼は俺に聞いてくると思っていた。
でも聞いてくることなく時間は過ぎていき・・・いつも通り翼は帰っていった。
翼「じゃーなー、オミ。」
秋臣「おー・・・。」
スタスタと歩いて教室を出て行った翼。
翼のことだから気になってきたらきっと聞いてくるはず。
その時に説明することにして・・・俺もりらと一緒に帰った。
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年は明け、時間は過ぎて・・・俺たちは2年生になった。
クラス替えのないこの高校は・・・3年間、同じメンバーで過ごしていく。
りら「また同じクラスだねー(笑)」
秋臣「・・・クラス替えがないの知ってるだろ?」
りら「うんっ。オミくんと一緒ー。」
いつもと同じように授業を受けて、りらと一緒に弁当を食べて、病院に送って行く。
二人で時々出かけることもあるけど・・・俺はこの夏に一つ、計画してることがあった。
それはりらのお兄さんにも相談をしていて・・・ちゃんと許可も取ってある。
ただ一つ・・・問題があるんだけど。
秋臣(今度翼に頼むか。)
そんなことを考えながら、りらを病院まで送って行ったある日・・・
病院で翼が俺たちを待ち伏せしていた。
翼「・・・・よ。」
りら「!?」
秋臣「翼・・・。」
5階のナースステーションの前にある待合。
そこのソファーに・・翼が座っていた。
翼「・・・中谷ってさ、ここに入院してんだろ?」
りら「!!」
秋臣「どっから仕入れた?その情報。」
翼「この病院の人たちから。・・・事情、聞いてもいいか?」
俺たちは待合にのソファーに座り・・・りらの病気のことを話した。
心臓が悪いこと。
ここで寝泊まりしてること。
運動はだめなこと。
ご飯も・・・みんなと同じものは食べれないことを。
秋臣(余命のことは言わなくていいよな、ほんとかどうかもわかんないんだし・・。)
そう思って余命のことだけ伝えなかった。
翼「だからあの弁当、味が無かったのか。」
りら「あのね?このことみんなにはナイショにしてもらえるかな。負担に思われたくないから・・。」
『できるだけみんなといっしょがいい』と思ってるりら。
特別扱いは・・・好きじゃない。
翼「言わないよ?でもまぁ・・・なんかあったら言えよ?俺でできることならするし。」
りら「ありがとう。」
秋臣「翼、ちょっと待っててくれ、りらを送ったら俺も帰るから。」
翼「?・・わかった。」
俺はりらを連れて一番奥にある部屋に向かった。
ちゃんと送り届けるのが俺の仕事だ。
秋臣「悪い、りら。今日は帰る。」
りら「気をつけてねー?」
秋臣「うん。また明日な。」
そう言ってドアを閉め、俺は翼のところに戻った。
秋臣「翼、頼みがある。」
翼「?・・・なんだ?」
俺は夏に計画してることを翼に話した。
ものすごい金のかかる計画に、翼は目をぎょっとさせた。
翼「・・・・プールを貸切る!?」
秋臣「あぁ。市民プールを一日貸切る。でもな、俺とりらだけだったらりらが怪しむだろ?クラス全員連れ出せないか?」
翼「クラス全員って・・・・!」
秋臣「プールの水は全部腰の高さまで抜いてもらうようにお願いしてある。貸切るからそれは可能なんだよ。そのへんも上手く使って・・なんとかならないか?」
翼は仕切るのが上手い。
クラス会なんかあるときは決まって翼が司会を担当する。
その方がスムーズに流れるから。
翼「!!・・・できるけど・・。」
秋臣「なら頼むよ・・!」
海には入ったことがないってりらは言ってた。
それはおそらくプールも同じ。
波のあるプールに・・・入れたあげたいと思った。
翼「・・・・わかった。中谷の為なんだろ?」
秋臣「そうだ。」
翼「なら協力してやる。お前も俺が助けを求めた時は助けろよ?」
秋臣「もちろん。」
その日から俺は翼と綿密な計画を立て始めた。
どうやってクラス全員をプールに誘うか・・・
どうやって日にちを合わせるか・・・
毎日毎日少しずつ話を詰めていき・・・とうとう実行に移す日がやってくる。
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