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発作。
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それから数日が経ち、2学期が始まるまであと3日になった。
俺は朝からりらの病院に向かって歩いていた。
りらが出した熱は、翌日には引いたようですぐに面会を許してもらえて・・・
4日ぶりにりらに会えることになった。
秋臣(今日は・・・天気はいいけど暑いからなー・・散歩は無理か。病み上がり?だし。)
病院で過ごす時間のほとんどを勉強してる俺たち。
涼しい時間帯は病院の中庭を歩いたりもするけど・・・昼間は暑い。
なかなか外に出れない日が続いてる。
秋臣(まぁ・・勉強もいいんだけど・・。)
俺はテストは二回分、通ることができて・・・次の勉強をしなきゃならない。
それに加えて曲を書いて・・・雄星と調節して・・・することが盛りだくさんだ。
秋臣(りらがうちに来る日も決めないといけないし・・・あとはライブハウスの件も・・・。)
ぶつぶつ言いながら着いたりらの病院。
エレベーターで5階に上がると・・・ナースステーションがなにやら騒がしかった。
秋臣「?・・・なんかあったのかな。」
そんなことを思いながらりらの部屋に向かうと、りらのお兄さんが部屋から飛び出てきた。
秋臣「?・・・りらのお兄さん?」
葵「!!・・・オミ!今日の面会は禁止だ!帰れ!」
秋臣「え・・・・?」
葵「りらが発作を起こした!今日は面会できない!」
秋臣「!?」
ばたばたと走り回る看護師さんは・・・みんなりらの部屋を行き来していた。
いろんな薬や機械が・・・次々に運ばれていく。
秋臣「り・・りらは・・・?」
葵「まだ大丈夫だから・・・!今日は帰れ!」
秋臣「・・・わかりました。」
俺は踵を返して歩き始めた。
数歩歩いては足を止めて・・・りらの部屋を見る。
秋臣(禁止って言ってたよな・・・ここにいちゃ・・・ダメなんだよな・・・。)
一目でいいからりらの姿を見たい。
無事なことを確認したい。
そう思うけど、俺にできることなんて何もない。
秋臣(・・・・・・。)
俺はエレベーターの近くにある休憩所みたいなところに向かった。
一番壁際の・・・誰にも見つからないような場所を選んで座り、この状況が落ち着くまで・・・ずっと座っていた。
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
葵「・・・・オミ!?ずっといたのか!?」
椅子に座って10時間が経ったころ、俺を見つけたりらのお兄さんが声をかけてきた。
秋臣「お兄さん・・・りらは?」
葵「今さっき落ち着いたところだ。・・・帰れって言っただろう?」
秋臣「俺にできることなんて無いんです。ただ・・・待つことしか。」
家に帰ったってりらのことが気になるに決まってる。
ならここで待つのも一緒だ。
葵「・・・少しだけだからな?声はかけるなよ?」
秋臣「え?」
葵「行ってこい。ただ寝てるからな?あと・・・いろいろあるけど驚くなよ?」
秋臣「・・・わかりました。」
俺は立ちあがり、大きな伸びを一つした。
ゆっくり歩いて・・・りらの部屋に向かう。
秋臣(声はかけるなってことは・・・ノックもしないほうがいいか。)
そう思った俺はそっと部屋のドアを開けた。
静かに部屋の中に入ると・・・いろんな機械の音が耳に入る。
ピッ・・ピッ・・ピッ・・・
シューっ・・・シューっ・・・
カチッ・・・カチッ・・・
秋臣「?」
りらが眠っているであろうベッドのところを覗くと・・・
そこにはりらが眠っていた。
ただ・・・・
秋臣(・・・どれだけ薬入れてんだよ・・。)
ベッドの両端に点滴台がある。
三つずつ点滴の袋をぶら下げて・・・合計六つの点滴。
口にはマスクをあてられ・・・いろんな機械が周りで動いていた。
モニターがあるものや・・・よくわからない動きをしてる機械。
すべてにおいてそれが何かはわからなかったけど・・・ただ一つだけわかったことはあった。
秋臣(これは・・・今日、明日に目を覚まさない。)
それだけは直感でわかった。
ただ眠ってるだけのように見えるけど・・・りらの意識はかなり深いところで眠ってるような感じがした。
秋臣(明日もちゃんと来るから・・・。)
『声をかけるな』といわれてたから、心の中で伝えて俺は部屋を出た。
歩いてエレベーターに向かってると、りらのお兄さんがナースステーションの前で立ってるのが見えた。
葵「・・・眠ってただろ?」
秋臣「はい・・・。」
葵「起きたら連絡するから・・・しばらく来なくていい。もう学校も始まるだろ?」
秋臣「あの・・・・・」
葵「なんだ?」
俺は・・・さっきのりらを見て思ったことを・・・お兄さんに聞いた。
秋臣「りらの命は・・・ほんとに高校卒業まで・・・・」
葵「『もたない』。・・・前も言っただろう?発作の回数が増えていって・・・目を覚まさない時間も増えていく。」
秋臣「治療法って・・・無いんですか!?」
詰め寄るようにしてお兄さんに聞いた。
お兄さんは俺をなだめるように肩をポンポンっと叩いて・・・
葵「無い。」
そう言った。
秋臣「医療費なら俺がいくらでも出しますから・・・!!りらを助けてくださいよ!!」
葵「いくらでもって・・・お前は高校生だろ?それにいくら金があっても治らないものは治らないんだよ。」
秋臣「!!・・・・それでも医者かよ!?」
葵「!!」
俺の言葉を聞いたりらのお兄さんは、俺の胸ぐらをぐぃっと掴んだ。
葵「・・・医者にもできることに限界があるんだよ!!」
秋臣「このままだったらりらが死ぬんだろ!?」
葵「俺がりらを失っても平気だと思ってんのか!?」
秋臣「!!」
平気だなんて・・・思えるはずがない。
そんなこと・・・わかってたはずだ。
秋臣「・・・・すみませんでした。」
一気に冷静になった俺はお兄さんに謝った。
言っちゃいけない言葉を・・・俺は言ってしまった。
葵「・・・帰れ。」
秋臣「・・・失礼します。また明日来ます。」
俺は荷物を持ってエレベーターのボタンを押した。
もう面会も診察もないこの時間のエレベーターはすぐにやってきて・・・俺はエレベーターに乗り込んだ。
1階のボタンを押して『閉まる』のボタンを押したとき、りらのお兄さんが俺に向かって言った。
葵「悪かった。」
秋臣「・・・すみませんでした。」
そう俺が言ってすぐにエレベーターのドアは閉まった。
秋臣(りらの命を失いたくなんてないよな・・・。)
考えればすぐにわかることだ。
なのに俺は・・・
『それでも医者かよ!?』
なんて言ってしまった。
秋臣(くそっ・・・!)
自分自身に腹をたてながら・・・俺は家に帰った。
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
りらが発作を起こしてから1週間が経った。
学校は2学期が始まってしまい・・・りらが学校に来ないことを不審に思い始めたクラスメイト達には『旅行中』と言っておいた。
まだりらは目を覚まさない。
秋臣「今日も・・・起きないのかな。」
ミニブーケを買って持って来た俺は、枕元にそれを置いた。
もしかしたらいい匂いにつられて・・・りらの目が覚めるかもしれないから。
山のようにあった点滴も、日に日に数が減って・・・今は一つだけ。
酸素マスクも外れて、ほんとに眠ってるだけだった。
葵「もう起きてもいいんだけどな・・・。」
りらのお兄さんが様子を見に来て呟く。
秋臣「あの・・・目が覚めて、また調子が良くなったら行きたいとこがあるんですけど・・・いいですか?」
そう聞くとお兄さんは目線をりらから俺に移した。
葵「どこだ?」
秋臣「ライブハウスです。」
葵「はぁ?無理に決まってるだろ?」
秋臣「手は考えてます。貸しきりで・・・音量も最大限に下げます。それならカフェのBGMと変わりません。」
お兄さんは俺の言葉を聞いて悩み始めた。
りらの調子さえよければ・・・この条件なら大丈夫なはずだ。
葵「まぁ・・・それならいいけど・・・」
秋臣「よしっ・・・!」
葵「貸しきりでって・・・めっちゃ金かかるんじゃないのか?」
秋臣「そうですね・・・えーと・・・半日も貸しきらないなら・・・小さいとこで・・・100万もあれば大丈夫かと思いますけど・・・。」
そう言うとりらのお兄さんはぎょっとした目で俺を見た。
葵「・・・100万!?」
秋臣「はい。・・・あ、俺が用意するんで。」
葵「『俺が用意する』って・・・お前の金じゃないだろ・・・。」
秋臣「・・・俺の金です。ちゃんと自分で稼ぎました。」
葵「はぁ?」
『意味がわからない』って目で俺を見るお兄さん。
最初にりらに言いたかったけど・・・仕方なくお兄さんに先に話すことにした。
秋臣「俺、中学の頃にちょっと金を稼ぐ機会があって・・・収入があったんです。」
葵「・・・はい?中学で?」
秋臣「去年、その仕事を辞めたんですけど・・・多いときで2億ありました。」
葵「・・・は!?」
秋臣「税金とか・・・家のローンとかを払って、手元には1億残ってます。」
そう言うとお兄さんは自分の手で頭を押さえ始めた。
葵「待て待て待て・・・一体なんの仕事をしたら・・・中坊が『億』なんて稼げるんだ?」
秋臣「・・・主に『作曲』です。作詞もあるんですけど・・・曲のほうがダントツに多いです。」
葵「!!・・・印税ってやつか。」
秋臣「はい。・・・『クレセント』ってバンド・・・ご存じないですか?」
そう聞くと、りらのお兄さんの目が大きくなった。
表情がみるみるうちに変わっていき・・・俺をゆっくり指差した。
葵「3年くらい前から有名になり始めたバンド・・・!まさか・・・!」
秋臣「俺が曲を提供してました。」
葵「まじかよ・・・。」
秋臣「他にもアイドルとかもいるんですけど・・・りらにはまだ言ってなくて・・・てか、このこと知ってるのは高校の先生たちと親と・・親友だけなんで・・・。」
『また再開するかもしれない』。
そう考えて学校側には伝えていた。
すると、りらのお兄さんは壁にもたれて・・・笑いだした。
葵「・・・ははっ。」
秋臣「?・・・なんですか?」
葵「いや?オミとりらは何か似てる気がしたことがあってさ・・・高校生の割に大人びてるなーって。」
秋臣「・・・そうですか?」
葵「まるで・・・『大人の世界』を生きてきたような感じがしてた。・・・りらは小さい頃から入退院を繰り返して・・・大人びていったんだけどな。」
秋臣「・・・。」
大人の世界は甘くない。
自分の行動一つで何もかもがめちゃくちゃになることだってある。
だから自然と・・・回りを見ることを身につけた。
きっとりらも同じなんだろう。
葵「いいな、お前らお似合いで。」
秋臣「・・・そうですかね。りらがかわいすぎて・・・困りますけど。」
葵「それは同感だ(笑)」
お兄さんが手を口もとにあてて笑ってるとき、りらの目が覚めた。
りら「・・・んぁ?」
葵「!・・・・りら?わかるか?」
りらのお兄さんはすぐにかけより、りらの頭を撫でてる。
俺もお兄さんとは反対側にいき、りらを覗き込んだ。
りら「大丈・・夫・・・どれくらい・・・寝てた・・?」
葵「1週間。」
りら「・・・そう。」
お兄さんのほうを向いてるりら。
俺も・・・話しかける。
秋臣「・・・りら?」
名前を呼ぶとりらはゆっくりと俺のほうを見て・・・言った。
りら「オミ・・・くん・・・?」
秋臣「よかった・・・。」
俺は布団の中に手をいれて、りらの手を握った。
ほんのり温かい手に・・・安心感がこみ上がってくる。
りら「ごめん・・ね・・?」
秋臣「謝んなくていい。・・・元気になったらさ、行きたいとこあるんだよ。」
りら「・・・どこ・・?」
秋臣「内緒。知りたかったら早く元気になれよ?」
りら「・・・うん。」
目が覚めたけど、まだまだ調子が悪いりら。
俺と、少し話をしただけでまた眠りについてしまった。
りら「・・・zzz。」
葵「寝ちまったか。まぁ1週間もすれば歩けるようになる。」
秋臣「そうなんですか・・・。」
葵「1週間眠ってたからな、筋力も落ちてるし負担もかけないようにリハビリだな。」
寝てるりらの手を布団の中に残して、俺は手を離した。
また起きるのを待ちたかったけど・・・俺にもやることはある。
秋臣「今日は帰ります。また明日来ますんで。」
葵「気をつけてな。」
秋臣「はい。失礼します。」
俺はりらの部屋から出て『しなきゃいけないこと』をするためにスタジオに向かった。
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
目が覚めたりらは、日に日に体力を回復させていき、順調に歩けるようになっていった。
本曰く、『よくあるからリハビリは慣れてるよー。』とか言って病院内を歩いたり、専用の部屋(?)みたいなところに行ったりしてる。
俺も付き合って一緒に歩いたりして・・・1週間が経った頃、りらはいつも通りの生活に戻った。
りら「ねぇ、この前言ってた『行きたいとこ』ってどこ?」
病院にある部屋でおやつをつまみながらりらが聞いてきた。
俺もりらのおやつをつまんで口に放り込む。
秋臣「あー・・・お兄さんの許可が出てからな。あと予約要るからもうちょっと待って?」
りら「むー・・・。」
秋臣(拗ねるのかよ・・・。)
りらのおやつをもう一つつまんだ時、部屋のドアが開いた。
ガラガラガラ・・・
葵「りらー。」
入ってきたのはりらのお兄さんだ。
りら「?・・なぁに?お兄ちゃん。」
葵「来週から外に出ていいからな。それまで体力増やしとけよ。」
りら「はーい。」
それだけ言って、お兄さんはすぐに部屋から出て行ってしまった。
りらはお兄さんの言葉が嬉しかったらしく、俺を見てにこにこ笑い始めた。
りら「来週からいいって!」
秋臣「来週かー・・・もう学校始まってるし・・・来週のー・・土曜にに予約取っとくから。」
りら「楽しみだなー・・・なんだろ。何系?」
秋臣「そうだなー・・・1回俺と話したことがあるやつ・・かな。」
そう言うとりらは眉を寄せて文句を言い始めた。
りら「えー、そんなのたくさんありすぎてわかんないよっ。」
秋臣「じゃあもう一つ。・・・・付き合う前に話したことのあるやつ。」
りら「付き合う前?うーん・・付き合う前・・・・」
腕を組んで悩むりら。
答えは・・・当日まで秘密だ。
秋臣「答えは来週な。」
りら「うーん・・・わかった。」
悩むりらは放っておいて、俺はこの日から忙しくなった。
元から忙しかったけど、りらに俺の『仕事』のことを伝えるために・・・雄星に連絡取って・・・ライブハウスを押さえて・・その合間を使ってりらに会いに行く。
もちろん学校も。
秋臣「・・・・準備は整った。あとはりらに伝えるだけ。」
ほぼ1週間かけて準備を整え・・・俺はりらを連れてライブハウスに行く。
俺は朝からりらの病院に向かって歩いていた。
りらが出した熱は、翌日には引いたようですぐに面会を許してもらえて・・・
4日ぶりにりらに会えることになった。
秋臣(今日は・・・天気はいいけど暑いからなー・・散歩は無理か。病み上がり?だし。)
病院で過ごす時間のほとんどを勉強してる俺たち。
涼しい時間帯は病院の中庭を歩いたりもするけど・・・昼間は暑い。
なかなか外に出れない日が続いてる。
秋臣(まぁ・・勉強もいいんだけど・・。)
俺はテストは二回分、通ることができて・・・次の勉強をしなきゃならない。
それに加えて曲を書いて・・・雄星と調節して・・・することが盛りだくさんだ。
秋臣(りらがうちに来る日も決めないといけないし・・・あとはライブハウスの件も・・・。)
ぶつぶつ言いながら着いたりらの病院。
エレベーターで5階に上がると・・・ナースステーションがなにやら騒がしかった。
秋臣「?・・・なんかあったのかな。」
そんなことを思いながらりらの部屋に向かうと、りらのお兄さんが部屋から飛び出てきた。
秋臣「?・・・りらのお兄さん?」
葵「!!・・・オミ!今日の面会は禁止だ!帰れ!」
秋臣「え・・・・?」
葵「りらが発作を起こした!今日は面会できない!」
秋臣「!?」
ばたばたと走り回る看護師さんは・・・みんなりらの部屋を行き来していた。
いろんな薬や機械が・・・次々に運ばれていく。
秋臣「り・・りらは・・・?」
葵「まだ大丈夫だから・・・!今日は帰れ!」
秋臣「・・・わかりました。」
俺は踵を返して歩き始めた。
数歩歩いては足を止めて・・・りらの部屋を見る。
秋臣(禁止って言ってたよな・・・ここにいちゃ・・・ダメなんだよな・・・。)
一目でいいからりらの姿を見たい。
無事なことを確認したい。
そう思うけど、俺にできることなんて何もない。
秋臣(・・・・・・。)
俺はエレベーターの近くにある休憩所みたいなところに向かった。
一番壁際の・・・誰にも見つからないような場所を選んで座り、この状況が落ち着くまで・・・ずっと座っていた。
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葵「・・・・オミ!?ずっといたのか!?」
椅子に座って10時間が経ったころ、俺を見つけたりらのお兄さんが声をかけてきた。
秋臣「お兄さん・・・りらは?」
葵「今さっき落ち着いたところだ。・・・帰れって言っただろう?」
秋臣「俺にできることなんて無いんです。ただ・・・待つことしか。」
家に帰ったってりらのことが気になるに決まってる。
ならここで待つのも一緒だ。
葵「・・・少しだけだからな?声はかけるなよ?」
秋臣「え?」
葵「行ってこい。ただ寝てるからな?あと・・・いろいろあるけど驚くなよ?」
秋臣「・・・わかりました。」
俺は立ちあがり、大きな伸びを一つした。
ゆっくり歩いて・・・りらの部屋に向かう。
秋臣(声はかけるなってことは・・・ノックもしないほうがいいか。)
そう思った俺はそっと部屋のドアを開けた。
静かに部屋の中に入ると・・・いろんな機械の音が耳に入る。
ピッ・・ピッ・・ピッ・・・
シューっ・・・シューっ・・・
カチッ・・・カチッ・・・
秋臣「?」
りらが眠っているであろうベッドのところを覗くと・・・
そこにはりらが眠っていた。
ただ・・・・
秋臣(・・・どれだけ薬入れてんだよ・・。)
ベッドの両端に点滴台がある。
三つずつ点滴の袋をぶら下げて・・・合計六つの点滴。
口にはマスクをあてられ・・・いろんな機械が周りで動いていた。
モニターがあるものや・・・よくわからない動きをしてる機械。
すべてにおいてそれが何かはわからなかったけど・・・ただ一つだけわかったことはあった。
秋臣(これは・・・今日、明日に目を覚まさない。)
それだけは直感でわかった。
ただ眠ってるだけのように見えるけど・・・りらの意識はかなり深いところで眠ってるような感じがした。
秋臣(明日もちゃんと来るから・・・。)
『声をかけるな』といわれてたから、心の中で伝えて俺は部屋を出た。
歩いてエレベーターに向かってると、りらのお兄さんがナースステーションの前で立ってるのが見えた。
葵「・・・眠ってただろ?」
秋臣「はい・・・。」
葵「起きたら連絡するから・・・しばらく来なくていい。もう学校も始まるだろ?」
秋臣「あの・・・・・」
葵「なんだ?」
俺は・・・さっきのりらを見て思ったことを・・・お兄さんに聞いた。
秋臣「りらの命は・・・ほんとに高校卒業まで・・・・」
葵「『もたない』。・・・前も言っただろう?発作の回数が増えていって・・・目を覚まさない時間も増えていく。」
秋臣「治療法って・・・無いんですか!?」
詰め寄るようにしてお兄さんに聞いた。
お兄さんは俺をなだめるように肩をポンポンっと叩いて・・・
葵「無い。」
そう言った。
秋臣「医療費なら俺がいくらでも出しますから・・・!!りらを助けてくださいよ!!」
葵「いくらでもって・・・お前は高校生だろ?それにいくら金があっても治らないものは治らないんだよ。」
秋臣「!!・・・・それでも医者かよ!?」
葵「!!」
俺の言葉を聞いたりらのお兄さんは、俺の胸ぐらをぐぃっと掴んだ。
葵「・・・医者にもできることに限界があるんだよ!!」
秋臣「このままだったらりらが死ぬんだろ!?」
葵「俺がりらを失っても平気だと思ってんのか!?」
秋臣「!!」
平気だなんて・・・思えるはずがない。
そんなこと・・・わかってたはずだ。
秋臣「・・・・すみませんでした。」
一気に冷静になった俺はお兄さんに謝った。
言っちゃいけない言葉を・・・俺は言ってしまった。
葵「・・・帰れ。」
秋臣「・・・失礼します。また明日来ます。」
俺は荷物を持ってエレベーターのボタンを押した。
もう面会も診察もないこの時間のエレベーターはすぐにやってきて・・・俺はエレベーターに乗り込んだ。
1階のボタンを押して『閉まる』のボタンを押したとき、りらのお兄さんが俺に向かって言った。
葵「悪かった。」
秋臣「・・・すみませんでした。」
そう俺が言ってすぐにエレベーターのドアは閉まった。
秋臣(りらの命を失いたくなんてないよな・・・。)
考えればすぐにわかることだ。
なのに俺は・・・
『それでも医者かよ!?』
なんて言ってしまった。
秋臣(くそっ・・・!)
自分自身に腹をたてながら・・・俺は家に帰った。
ーーーーーーーーーー
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りらが発作を起こしてから1週間が経った。
学校は2学期が始まってしまい・・・りらが学校に来ないことを不審に思い始めたクラスメイト達には『旅行中』と言っておいた。
まだりらは目を覚まさない。
秋臣「今日も・・・起きないのかな。」
ミニブーケを買って持って来た俺は、枕元にそれを置いた。
もしかしたらいい匂いにつられて・・・りらの目が覚めるかもしれないから。
山のようにあった点滴も、日に日に数が減って・・・今は一つだけ。
酸素マスクも外れて、ほんとに眠ってるだけだった。
葵「もう起きてもいいんだけどな・・・。」
りらのお兄さんが様子を見に来て呟く。
秋臣「あの・・・目が覚めて、また調子が良くなったら行きたいとこがあるんですけど・・・いいですか?」
そう聞くとお兄さんは目線をりらから俺に移した。
葵「どこだ?」
秋臣「ライブハウスです。」
葵「はぁ?無理に決まってるだろ?」
秋臣「手は考えてます。貸しきりで・・・音量も最大限に下げます。それならカフェのBGMと変わりません。」
お兄さんは俺の言葉を聞いて悩み始めた。
りらの調子さえよければ・・・この条件なら大丈夫なはずだ。
葵「まぁ・・・それならいいけど・・・」
秋臣「よしっ・・・!」
葵「貸しきりでって・・・めっちゃ金かかるんじゃないのか?」
秋臣「そうですね・・・えーと・・・半日も貸しきらないなら・・・小さいとこで・・・100万もあれば大丈夫かと思いますけど・・・。」
そう言うとりらのお兄さんはぎょっとした目で俺を見た。
葵「・・・100万!?」
秋臣「はい。・・・あ、俺が用意するんで。」
葵「『俺が用意する』って・・・お前の金じゃないだろ・・・。」
秋臣「・・・俺の金です。ちゃんと自分で稼ぎました。」
葵「はぁ?」
『意味がわからない』って目で俺を見るお兄さん。
最初にりらに言いたかったけど・・・仕方なくお兄さんに先に話すことにした。
秋臣「俺、中学の頃にちょっと金を稼ぐ機会があって・・・収入があったんです。」
葵「・・・はい?中学で?」
秋臣「去年、その仕事を辞めたんですけど・・・多いときで2億ありました。」
葵「・・・は!?」
秋臣「税金とか・・・家のローンとかを払って、手元には1億残ってます。」
そう言うとお兄さんは自分の手で頭を押さえ始めた。
葵「待て待て待て・・・一体なんの仕事をしたら・・・中坊が『億』なんて稼げるんだ?」
秋臣「・・・主に『作曲』です。作詞もあるんですけど・・・曲のほうがダントツに多いです。」
葵「!!・・・印税ってやつか。」
秋臣「はい。・・・『クレセント』ってバンド・・・ご存じないですか?」
そう聞くと、りらのお兄さんの目が大きくなった。
表情がみるみるうちに変わっていき・・・俺をゆっくり指差した。
葵「3年くらい前から有名になり始めたバンド・・・!まさか・・・!」
秋臣「俺が曲を提供してました。」
葵「まじかよ・・・。」
秋臣「他にもアイドルとかもいるんですけど・・・りらにはまだ言ってなくて・・・てか、このこと知ってるのは高校の先生たちと親と・・親友だけなんで・・・。」
『また再開するかもしれない』。
そう考えて学校側には伝えていた。
すると、りらのお兄さんは壁にもたれて・・・笑いだした。
葵「・・・ははっ。」
秋臣「?・・・なんですか?」
葵「いや?オミとりらは何か似てる気がしたことがあってさ・・・高校生の割に大人びてるなーって。」
秋臣「・・・そうですか?」
葵「まるで・・・『大人の世界』を生きてきたような感じがしてた。・・・りらは小さい頃から入退院を繰り返して・・・大人びていったんだけどな。」
秋臣「・・・。」
大人の世界は甘くない。
自分の行動一つで何もかもがめちゃくちゃになることだってある。
だから自然と・・・回りを見ることを身につけた。
きっとりらも同じなんだろう。
葵「いいな、お前らお似合いで。」
秋臣「・・・そうですかね。りらがかわいすぎて・・・困りますけど。」
葵「それは同感だ(笑)」
お兄さんが手を口もとにあてて笑ってるとき、りらの目が覚めた。
りら「・・・んぁ?」
葵「!・・・・りら?わかるか?」
りらのお兄さんはすぐにかけより、りらの頭を撫でてる。
俺もお兄さんとは反対側にいき、りらを覗き込んだ。
りら「大丈・・夫・・・どれくらい・・・寝てた・・?」
葵「1週間。」
りら「・・・そう。」
お兄さんのほうを向いてるりら。
俺も・・・話しかける。
秋臣「・・・りら?」
名前を呼ぶとりらはゆっくりと俺のほうを見て・・・言った。
りら「オミ・・・くん・・・?」
秋臣「よかった・・・。」
俺は布団の中に手をいれて、りらの手を握った。
ほんのり温かい手に・・・安心感がこみ上がってくる。
りら「ごめん・・ね・・?」
秋臣「謝んなくていい。・・・元気になったらさ、行きたいとこあるんだよ。」
りら「・・・どこ・・?」
秋臣「内緒。知りたかったら早く元気になれよ?」
りら「・・・うん。」
目が覚めたけど、まだまだ調子が悪いりら。
俺と、少し話をしただけでまた眠りについてしまった。
りら「・・・zzz。」
葵「寝ちまったか。まぁ1週間もすれば歩けるようになる。」
秋臣「そうなんですか・・・。」
葵「1週間眠ってたからな、筋力も落ちてるし負担もかけないようにリハビリだな。」
寝てるりらの手を布団の中に残して、俺は手を離した。
また起きるのを待ちたかったけど・・・俺にもやることはある。
秋臣「今日は帰ります。また明日来ますんで。」
葵「気をつけてな。」
秋臣「はい。失礼します。」
俺はりらの部屋から出て『しなきゃいけないこと』をするためにスタジオに向かった。
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目が覚めたりらは、日に日に体力を回復させていき、順調に歩けるようになっていった。
本曰く、『よくあるからリハビリは慣れてるよー。』とか言って病院内を歩いたり、専用の部屋(?)みたいなところに行ったりしてる。
俺も付き合って一緒に歩いたりして・・・1週間が経った頃、りらはいつも通りの生活に戻った。
りら「ねぇ、この前言ってた『行きたいとこ』ってどこ?」
病院にある部屋でおやつをつまみながらりらが聞いてきた。
俺もりらのおやつをつまんで口に放り込む。
秋臣「あー・・・お兄さんの許可が出てからな。あと予約要るからもうちょっと待って?」
りら「むー・・・。」
秋臣(拗ねるのかよ・・・。)
りらのおやつをもう一つつまんだ時、部屋のドアが開いた。
ガラガラガラ・・・
葵「りらー。」
入ってきたのはりらのお兄さんだ。
りら「?・・なぁに?お兄ちゃん。」
葵「来週から外に出ていいからな。それまで体力増やしとけよ。」
りら「はーい。」
それだけ言って、お兄さんはすぐに部屋から出て行ってしまった。
りらはお兄さんの言葉が嬉しかったらしく、俺を見てにこにこ笑い始めた。
りら「来週からいいって!」
秋臣「来週かー・・・もう学校始まってるし・・・来週のー・・土曜にに予約取っとくから。」
りら「楽しみだなー・・・なんだろ。何系?」
秋臣「そうだなー・・・1回俺と話したことがあるやつ・・かな。」
そう言うとりらは眉を寄せて文句を言い始めた。
りら「えー、そんなのたくさんありすぎてわかんないよっ。」
秋臣「じゃあもう一つ。・・・・付き合う前に話したことのあるやつ。」
りら「付き合う前?うーん・・付き合う前・・・・」
腕を組んで悩むりら。
答えは・・・当日まで秘密だ。
秋臣「答えは来週な。」
りら「うーん・・・わかった。」
悩むりらは放っておいて、俺はこの日から忙しくなった。
元から忙しかったけど、りらに俺の『仕事』のことを伝えるために・・・雄星に連絡取って・・・ライブハウスを押さえて・・その合間を使ってりらに会いに行く。
もちろん学校も。
秋臣「・・・・準備は整った。あとはりらに伝えるだけ。」
ほぼ1週間かけて準備を整え・・・俺はりらを連れてライブハウスに行く。
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そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。
要「今日はやたら素直だな・・・。」
美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」
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