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質問責め。

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翌日・・・





朝、いつも通り少し早い目に学校にきた俺は、なぜか少し早い目に来てたクラスメイトに囲まれていた。




生徒「中谷と付き合ってるって本当か!?」




席に座った俺に、囲ってるうちの1人が聞いてきた。

昨日、クラスに残っていた数人に『彼女』と答えたことが一瞬で広まったようだ。

どう答えるか悩むけど、ここは正直に言ったほうが後々でいいような気がした。



秋臣「・・・本当。」




俺の返答を皮切りに、次々に質問が飛び始める。




生徒「どっちが告白したの!?」

秋臣「・・・俺。」

生徒「なんて返事もらったんだ!?」

秋臣「『よろしくお願いします』?」

生徒「嘘だろ!?中谷の相手がオミなんて・・・!」

秋臣「・・・本当。」




ぎゃあぎゃあ言われながら囲まれ、質問に答えてると、りらが教室に入ってきた。




りら「おは・・よ?どうしたの?みんな・・・・。」




入ってきたりらに、女子たちが群がり始めた。

当然、りらも質問攻めにあう。




生徒「りらちゃんっ!工藤くんと付き合ってるって本当なの!?」

りら「え?・・・本当だけど・・?」

生徒「なんで!?」

りら「なんでって・・・好き・・・だから?」

生徒「きゃーっ!もっと詳しくききたいっ!!」

りら「えぇぇ?」





席に座って教科書を出すりら。

授業の用意を始めてるけど、そんなの関係なしに俺たちは質問攻めにあってた。

なんとか受け答えをしてると、担任が教室に入ってきた。




ガラガラガラ・・・




担任「ほら席に着けー。」



担任が教室に入ってきたことで、俺たちの周りにいたやつらが自分の席に戻って行った。



りら「・・・なんかすごいことになっちゃった?」



俺を見ながらこそっと言ったりら。




秋臣「まぁ・・・隠す必要もないし。」

りら「・・・ふふっ。」




なぜか嬉しそうなりら。

そんな顔を見ると自然と頬が緩むもので・・・俺も笑ってしまった。



秋臣「あ、来週からさ、一緒に昼・・食べない?りらさえよければだけど。」



そう言うとりらの目が一気に輝いた。



りら「食べるっ・・!」

秋臣「来週からな。それまでに準備するから。」

りら「?」




俺はこの日、家に帰ってから母親に相談するつもりでいた。

管理栄養士の資格を持つ母親は、言えば必ず弁当を作ってくれる。

りらのことを話して・・・りらも食べれる弁当を作ってもらおうと思っていた。




秋臣(それなら・・・交換もできるしな。)




りらの喜ぶ顔が見たい。

そのことだけを考えながら・・・俺はその日の授業を受けた。







ーーーーーーーーーー








夜・・・







りらを病院に送ってから家に帰ってきた俺は、キッチンでご飯を作ってる母親に・・・まとわりついていた。





母「?・・・なに?」

秋臣「・・・。」




なんって言って弁当をお願いするかわからない俺は、出来上がっていくから揚げをつまみ食いしながら言葉を探していた。





母「もー・・秋臣の分、減らすからね?」

秋臣「んー・・・あのさ、かぁさん・・。」

母「なに?」

秋臣「来週から・・・弁当って頼める?」




そう聞くと母親は驚いた顔をしながら俺を見た。






母「・・・どうしたの?急に。」

秋臣「ちょっと・・・一緒に昼を食べたい子がいるんだけど・・・その子、弁当でさ。」

母「まぁまぁ!彼女!?」

秋臣「!?・・・ちがっ・・・。」








『違う』・・って言おうと思ったけど、『違わない』ことに気がついた。

りらは俺の『彼女』だ。




母「?・・・違うの?」

秋臣「いや・・違わないんだけど・・・。」




りらのことを言うべきか悩んでると、母さんは驚くことを俺に言った。




母「もしかして・・・りらちゃん?」

秋臣「・・・は!?・・え!?」

母「?・・・違うの?」

秋臣「り・・らだけど・・・何で知ってるの!?」





そう聞くと、かぁさんはりらのことを知ってる経緯を話してくれた。

あの海で倒れた日の翌日に病院に行ったこと。

そこで点滴をしてる女の子に出会って、それがりらだったことを。





秋臣「それで知ってたのか・・・。」

母「で?りらちゃんとお弁当?何入れようかしらねー。」

秋臣「・・・できれば・・薄味がいいんだけど・・。」

母「薄味?どれくらい?」

秋臣「どれくらいって・・・・わかんないんだけど・・・。」

母「わかんないって・・・どれくらい薄味にしたらいいのかわからなかったらできないわよ?」

秋臣「・・・。」





ここでかぁさんに『りらは心臓が悪い』って言ったら・・・付き合ってることは反対される?

でも、伝えないと・・・『おかずの交換』ができなくなる。




秋臣「りらは・・・心臓が悪くて・・・食べ物の制限があるんだよ。」




俺は思い切って言った。

ずっとりらと一緒にいるのなら・・・いつかは親に言わないといけないことだ。





母「あ、なるほどね。・・・それ、一つ作ってみるからりらちゃんに持って行ってくれる?食べれるかどうかの返事が聞きたいし。」

秋臣「・・・へ?」

母「レシピも渡すし。・・・・なぁに?変な顔してかぁさんを見て・・。」

秋臣「や・・・そんな返事が返ってくるとは思わなかったから・・。」

母「まぁ、難しいけど・・レシピを作ってるかぁさんからしたら『できない』ことじゃないわよ。」

秋臣「そ・・うなんだ・・。」




予想外の返事に、俺は戸惑った。

『できない』とか『そんな友達辞めなさい』とか言われるかもとか思っていたから。




母「・・・『無理』って言うのは簡単なの。でも『無理』って言い続けたらなんのチャンスも回って来ないわよ?覚えておきなさい。」

秋臣「・・・はい。」




ジュージューとから揚げを揚げて、皿に盛りつけていく母親。

俺は父親の皿からから揚げを一つ摘まんだ。




ぱくっ・・・!





母「もうっ。秋臣のご飯、ブロッコリーだけにするわよ!?」

秋臣「勘弁ー・・・」






俺はキッチンから出た。

自分の部屋に戻る前に振り返って・・・母親に言った。






秋臣「ありがと。」

母「いいのよ。秋臣の彼女なんだしね。」

秋臣「!?・・・俺、りらが『彼女』だなんて一言も言ってないけど!?」

母「え?だってりらちゃんと話をしたときに秋臣のこと好きそうだったから・・・秋臣も名前で呼んでるし・・・。」

秋臣「~~~~っ。」

母「まだまだ子供なんだから。」

秋臣「・・・・・。」





かぁさんには敵わないことを再自覚して、俺は自分の部屋に戻った。

晩御飯ができるまでの間・・・『雄星』に電話をかける。





ピッ・・ピッ・・ピッ・・・・




雄星「・・・オミ!?」

秋臣「久しぶり・・・ではないけど久しぶり。」

雄星「おぉ!どうした?お前からの電話なんて珍しい・・・」

秋臣「頼みごとがあってさ。・・・いい?」

雄星「お前の頼みならな!なんだ?」

秋臣「実はさ・・・・」




俺はまた曲を書き始めたことを伝えた。

いくつか書いたけど、まだ音が溢れて止まらないことを。





雄星「!!・・・いいな!録りに来るか?」

秋臣「・・・行く。他にも頼みがあるし。」






俺と雄星はお互いの予定を確認した。

予定が合うのは1か月後。

それまで曲を溜めて・・・見せることになった。




雄星「楽しみにしてるからな!」

秋臣「俺も。」

雄星「じゃなー。」ピッ・・・





電話を切ってすぐに部屋の内線が鳴った。

この部屋は完全防音だから階下から呼ばれても聞こえない。

だから内線電話をつけてある。




ビーッ!!ビーッ!!ビーッ!!




秋臣「はい。」

母「ご飯よ、下りてらっしゃい。」

秋臣「すぐ行くー。」



俺は内線を切って、ご飯を食べに下りた。










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