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両方の想い。

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翌日・・・




朝早くに学校に行った私は職員室に立ち寄った。

この前受けた『前倒しテスト』の結果を聞くために。




コンコン・・・ガラガラ・・・




りら「失礼します。おはようございます。」



まだ数人しかいない職員室。

入る前に担任がいる机を見ると、そこに工藤くんの姿があった。



りら(工藤くん?あ、テストの結果かな?)



職員室の中に入り、担任の元にいくと工藤くんが私に気がついて振り返ってくれた。



秋臣「あ、おはよ。」

りら「おはよう。どうしたの?工藤くん。」

秋臣「テストの結果聞いたから次の範囲もらってた。」

りら「!!・・・合格したんだ!おめでとう。」

秋臣「ありがと。じゃあ、俺戻るわ。」




工藤くんはもらったであろうプリントをひらひらと振りながら職員室から出て行った。




担任「中谷も結果か?」

りら「はいっ。」

担任「お前も合格。次の範囲、いるか?」

りら「もちろんっ!」




私も次の範囲をもらい、職員室を出る。

職員室を出ると、出たところで工藤くんが壁にもたれながら立っていた。



りら「?」

秋臣「中谷も合格なんだろ?」

りら「う・・うん。」

秋臣「はー・・追いつくのはいつになるやら・・・。」




ぶつぶつ言いながら歩き出した工藤くんの後ろをついていく。




りら「・・・私に追いつくようにテスト受けてるの?」




さっきの言葉から考えたらそうとしか思えなかった。




秋臣「そうだけど?」

りら「なんで?」

秋臣「なんでって・・・。」




彼は歩いてた足を止めた。




秋臣「まぁ・・・病気のことを聞いて・・・純粋に『守りたい』って思ったんだけど・・・成績で負けてたら守れないかなーって思って・・?」

りら「えぇ?」

秋臣「告白する前にテスト追いつきたかったけど・・・どうしても『好きだ』って言いたくなって。」

りら「そ・・・そうなんだ・・。」




さらっ言うその姿があまりにも清々しく、なんだかおかしく思えた。




りら「・・・あははっ。」

秋臣「?・・・どうした?」

りら「ううん?・・・あ、今日部屋に来てくれる?ちゃんと返事するから・・・。」

秋臣「!!・・・わかった。」




工藤くんは先に歩き始めた。

・・・ちゃんと話をして・・・それでもいいって言ってくれたら・・・『付き合いたい』って伝える。

そう心に決めて、私も教室に向かって歩き始めた。





ーーーーーーーーーー






りら(今日四時間目体育だった・・・。)



朝からテストの結果を聞くことで頭が一杯だった私。

体育のことはすっかり忘れていた。



りら(あんまり動かない内容だったらいいけど・・・。)



そう思いながら授業を受けていき、

四時間目・・・・





先生「今日は陸上しまーす。短距離を何回か走って記録取るので、各自番号順に並んでー。」

りら(まさかの短距離!)




風を切る疾走感みたいな感覚を得られる短距離は好きだけど、息があがる種目なことは間違いない。




りら(まー・・2・3回くらいなら平気かな?)




そう思いながら列に並び、順番を待つ。

番号の早い工藤くんが先にスタートしていた。




りら(すごい・・・速い・・・。)




さすが男子・・・なのか、1位でゴールしてる姿が見えた。

体操服で汗を拭ってる。



りら(・・・かっこいい。)




どきどきと胸が高鳴ってる中、私の順番が来た。



先生「よーい・・・スタートっ!」



5人で一気に走りだす。

最初こそはみんな一列で走ってたけど、すぐに遅くなってしまった私。

あっという間にみんなに置いていかれ、ダントツに遅くゴールした。




りら「はぁっ・・はぁっ・・・。」

生徒「・・りらちゃん、随分息が上がってるけど・・大丈夫?」




心配して私の側に来てくれたクラスの子。

私は必死に息を整えながら答える。



りら「はぁっ・・・はぁっ・・・だいっ・・じょうぶっ・・。」

生徒「人数も多いし・・・あと一回走ったら終わりかなー。」

りら(あと一回なら・・・。)





スタート位置に戻るために歩いてると、工藤くんがこっそり近づいてきた。




秋臣「・・・大丈夫か?」

りら「・・・大丈夫。」

秋臣「無理するなよ?」

りら「うん。」





さっきよりもゆっくり走れば大丈夫な気がした。

流れ作業のように進む隊列。

思いのほか早くに順番が来て、私はもう一度走った。

今度はわざとゆっくりめに。



りら「はぁっ・・!はぁっ・・!」




なんとかゴールをし、その場で息を整える。

どくどくと波打つ心臓に、治まることを要求しながら・・・。




りら(大丈夫・・・治まって・・・。)



まだ二回目を走ってないクラスメイト達が走る中、

私は歩き、先生の陰に隠れた。

息が整うまでの間、隠れ蓑にさせてもらう。




先生「大丈夫?」


こそっと聞いてくれた先生。

先生が聞いてくれた時にはもう息はだいぶ整っていた。



りら「大丈夫ですー。」



そう言って隠れ蓑から出て、私は歩くクラスメイトたちに紛れ、みんなのとこに戻った。





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