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全て。
しおりを挟む葵「・・・りらの全て?」
秋臣「はい。中谷に・・・・お兄さんにそう言うよう言われました。」
お兄さんは俺の向かいの席に座り、テーブルに肘をついた。
葵「何かあったのか?」
秋臣「好きだって言ったらお兄さんに聞いてくれって言われました。」
葵「・・・それで『りらの全て』か・・。」
お兄さんは話すことをためらってるのか、目線机にを落とした。
そのまま一言も話してくれない。
秋臣「?」
葵「・・・・・・。」
秋臣「あの・・・?」
葵「・・・・・・。」
無言のままのお兄さん。
しばらく待ってると、お兄さんは落としていた目線を上げ、俺をじっと見た。
葵「・・・諦めてくれないか?」
秋臣「・・・・・は?」
葵「お前のためにも、りらのためにも・・・『友達』なら構わない。でもそれ以上は・・・」
秋臣「・・・・・・。」
なんでここまで言い渋るのかがわからなかった。
そもそも俺は中谷と付き合いたいのにお兄さんと話をしてる。
その時点でおかしい。
秋臣「じゃあ俺、中谷の部屋に戻りますんで。」
そう言って席から立ち上がった。
ドアに手をかけ、開けようとした時お兄さんが俺を呼んだ。
葵「・・・待て。」
秋臣「・・・なんですか?」
葵「部屋に行って・・・どうする?」
秋臣「・・・そんなの決まってるじゃないですか。告白の続きですよ。返事をまだ聞いてないんで。」
お兄さんは俺の言葉を聞いて、大きいため息をついた。
葵「はぁー・・・、わかった。言う。言うから・・・座ってくれ。」
秋臣「・・・はい。」
さっき座ってた椅子に座り、俺はお兄さんを見た。
お兄さんは『言う』と言った割にまだ渋ってるみたいで、口をあけようとしては言葉を出せないでいた。
秋臣「・・・。」
葵「・・・りらは・・・心臓が悪い。」
秋臣「知ってます。」
葵「海外で・・・二回、手術をしたけど・・・もう治らないことが確定してる・・・。」
秋臣「・・・・・・え?」
お兄さんは俺の目をしっかり見た。
しっかり見て・・・言った。
葵「りらの命は、高校卒業までもたない。」
秋臣「え・・・・・・?」
耳を通り抜けていった言葉。
現実味のない言葉に、俺の頭は考えることをやめてしまった。
秋臣(もたないって・・・なんだ?どういう意味だ?)
葵「今は毎日の点滴で心臓の動きを補助してる。でも、動きの悪い心臓は回復しない。悪くなっていく一方で・・・そのうち停止する。」
秋臣「停止って・・・」
葵「・・・『死ぬ』ってことだ。計算上だと・・・高校卒業ぐらいだ。」
秋臣「・・・・・・。」
考えることを再開した俺の頭。
彼女の言動全てが頭のなかに甦ってきた。
学校で楽しく過ごしたり・・・
俺の耳からイヤホンを引っこ抜いて音楽聞いたり・・・
体調が悪くなるってわかってても体育の授業を受けたり・・・
『見たい!』と言って学校サボって海に行ったり・・・
秋臣「学校に行ってるのは・・・思い出作り・・・?」
葵「・・・そうだ。一日でも長くベッドで生きるより、一回でも多くみんなと過ごしたいから。」
秋臣「そっ・・・か・・・。」
俺は椅子の背もたれにもたれかかった。
天井を見上げながら頭の中を整理する。
秋臣(正直・・・受け止めきれない。)
『好きだ』と伝えてからの『別れ』宣告。
それも永遠の別れだ。
秋臣「でも・・・中谷はそんな悪そうには見えない・・・。」
葵「まだ・・・な。無理もきく。」
秋臣「・・・。」
どう考えたらいいかわからない頭の中。
天井を見たり・・・
机を見たり・・・
両手で頭を抱えたりして悩んだ。
・・・悩んだというか、考えた。
葵「だから諦めてくれ。お互いに『酷』だろう?別れの時が・・・必ず来る。」
秋臣「・・・・・・。」
葵「・・・この部屋は好きなだけ使っていい。整理がついたら帰れ。気を付けてな。」
秋臣「・・・。」
お兄さんが部屋から出ていったあとも・・・考えた。
『死ぬ』なんて言われてもわからない。
俺は医者じゃない。
人はいつかは死ぬ・・・それくらいはわかってる。
秋臣「・・・とりあえず返事は聞きたい。」
そう思った俺は椅子から立ち上がった。
部屋の時計を確認すると21時を回ってる。
俺はこの部屋で・・・3時間以上考えてたらしい。
秋臣「まだ・・・起きてるよな?」
カウンセリングルームを出て中谷の部屋に向かう。
ドアの前に立ち、深く息を吐いた。
秋臣「・・・よし。」
コンコン・・・・
りら「はーい。」
秋臣「入るよ。」
ガラガラとドアを開けると、中にいた中谷が驚いた顔をしながら俺を見た。
りら「・・・え!?帰ったんじゃ・・なかったの?」
秋臣「・・・うん。ずっといた。」
りら「そっか。」
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