11 / 56
伝言。
しおりを挟む葵「りらも大丈夫。悪いな、妹の我がままに巻き込んで・・・。」
秋臣「元気になったんなら・・・よかったです。」
結構苦しそうに見えた彼女。
元気になったのならそれでよかったと思った。
秋臣「中谷はもう帰ったんですか?」
葵「いや?俺の仕事がもうすぐ終わるから一緒に帰ろうと思ってる。」
秋臣「そうですか。」
ベッドから立ち上がると、お兄さんは鞄を差し出した。
学校の鞄だ。
葵「ほら、鞄。」
秋臣「それ、中谷のですよ。」
葵「え?・・・お前のは?」
秋臣「あー・・・結構鞄がデカいんで・・・俺のは捨ててきました。」
そう答えると、お兄さんは驚いた顔で俺を見た。
葵「は!?どうすんだよ、この先・・・。」
秋臣「また買います。」
葵「『また買う』って・・・親の金だろ?」
秋臣「いえ、自分で稼いだ金で。それなら文句も言われないんで。」
そんな会話をしてるとき、さっきの看護師さんが俺を呼びにきた。
看護師「工藤さーん、お母様が迎えに来られましたよー。」
秋臣「ありがとうございます。じゃあ失礼します・・・・っと、中谷に伝言お願いしてもいいですか?」
葵「?・・・いいけど?」
秋臣「『しんどい思いさせてごめん』って・・・お願いします。」
そういうとお兄さんは腹を抱えて笑いだした。
葵「ははっ!」
秋臣「?・・・俺、何か変なこといいました?」
葵「いや?わかった。必ず伝える。」
秋臣「よろしくお願いします。・・・ありがとうございました。」
看護師「こちらどうぞー。」
看護師さんの案内で、俺は廊下に出た。
出たところで母親が待ってくれていた。
母「秋臣!」
心配そうに俺の元に駆けてくる母親。
迷惑かけて申し訳ないと思うけど、未成年は面倒くさいとも思った。
母「もー・・学校もサボって・・大丈夫なの?」
秋臣「大丈夫。・・・学校は特に出席日数は関係ないんだし・・・大丈夫だから。」
うちの高校は成績が全て。
特に悪い成績さえ取らなければ学校に行かなくったって卒業できる。
テストは受けないといけないけど。
母「秋臣はどうなってもいいわよ。女の子が一緒にいたんでしょ?その子が大変だったとかって看護師さんに聞いたわよ?」
秋臣「あぁ。大丈夫って言ってた。」
母「大丈夫ならいいけど・・・よそのお子さんにケガなんてさせないでよ?」
秋臣「・・・わかってる。」
母親は廊下を歩き始めた。
その少し後ろをついて歩く。
母「お会計ってどっちかしら?」
秋臣「俺、払う。」
母「何言ってんの。まだ子供なんだから払わなくていいわよ。・・・たとえ親より収入があっても。」
秋臣「・・・ありがとう。」
支払いを済ませ、病院の外に出る。
少し太陽が傾いた時間。
まだまだ暑いけど、海で中谷のお兄さんを待ってた時よりは全然マシに感じた。
母「・・・・デートしてたの?」
秋臣「!!・・・そういうこと聞く?普通。」
母「聞きたいじゃない。」
秋臣「もー・・。」
楽しそうに根ほり葉ほり聞いてくる母親。
俺は一生懸命、はぐらかしながら帰路についた。
0
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
『番外編』イケメン彼氏は年上消防士!結婚式は波乱の予感!?
すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は年上消防士!・・・の、番外編になります。
結婚することが決まってしばらく経ったある日・・・
優弥「ご飯?・・・かぁさんと?」
優弥のお母さんと一緒にランチに行くことになったひなた。
でも・・・
優弥「最近食欲落ちてるだろ?風邪か?」
ひなた「・・・大丈夫だよ。」
食欲が落ちてるひなたが優弥のお母さんと一緒にランチに行く。
食べたくないのにお母さんに心配をかけないため、無理矢理食べたひなたは体調を崩す。
義母「救護室に行きましょうっ!」
ひなた「すみません・・・。」
向かう途中で乗ったエレベーターが故障で止まり・・・
優弥「ひなた!?一体どうして・・・。」
ひなた「うぁ・・・。」
※お話は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
My Doctor
west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生
病気系ですので、苦手な方は引き返してください。
初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです!
主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな)
妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ)
医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)
『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?
すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。
ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。
要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」
そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。
要「今日はやたら素直だな・・・。」
美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」
いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる