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ふるさとの文学と読書のつどい 2017 in 横手市

会場潜入レポート(2):表彰式(1)「受賞者」

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「はじめに。『ふるさと秋田文学賞』の表彰です。夢野さま、中央へお願いします」


 女性がアナウンスする。夢野さんと対面すると、知事が賞状に目を落として読み上げた。


「賞状。小説の部『ふるさと秋田文学賞』夢野寧子さま。あなたの作品は、第四回『ふるさと秋田文学賞』において、最も優秀な作品と認められましたので、ここに表彰します。平成二十九年十月二十八日、秋田県知事・佐竹敬久。
 素晴らしい作品でした。ありがとうございます」


 最後に、そう呟きつつ、知事は賞状を手渡す。最後の言葉は盛大な拍手の前では、空前の灯のようにか細く消えそうな声だった。女性のアナウンスが戻るよう促し、夢野さんは元の立ち位置へ移動する。


「夢野さまには賞状のほかに、副賞として賞金五十万円の目録と、県産品である樺細工かばざいくフォトフレームを贈呈いたしました。
 青山さま、中央へお願いします」


「賞状。随筆・紀行文の部『ふるさと秋田文学賞』青山トーゴさま。以下同文でございます。たいへん素晴らしいです。ありがとうございます」


「ステージへお戻りください」拍手が収まってから、女性は続けた。「青山さまには賞状のほかに、副賞として賞金三十万円の目録と、県産品である樺細工フォトフレームを贈呈いたしました。
 続きまして『ふるさと秋田文学賞 佳作』の表彰です。渡部さま、中央へお願いします」


「賞状。小説の部『ふるさと秋田文学賞 佳作』渡部麻実さま。あなたの作品は、第四回『ふるさと秋田文学賞』において、優秀な作品と認められましたので、ここに表彰します。平成二十九年十月二十八日、秋田県知事・佐竹敬久」


「そのまま、ステージへお戻りください。渡部さまには賞状のほかに、副賞として賞金五万円の目録を贈呈いたしました。鹿住さま、中央へお願いいたします」


「賞状。随筆・紀行文の部『ふるさと秋田文学賞 佳作』鹿住敏子さま。以下同文でございます」


「そのまま、ステージへお戻りください。鹿住さまには賞状のほかに、副賞として賞金三万円の目録を贈呈いたしました。知事と受賞者のみなさんは、お席へお戻りください」
 全員が着席するのを見届け、拍手が収まったのを確認すると、女性が再び口を開いた。
「それでは。受賞されました方々から、受賞のお言葉をお願いいたします。はじめに、夢野さまより、お願いいたします」


「みなさん、こんにちは。きょうは秋田に来ることができて、とても嬉しいです。え~、たいへん私事わたくしごとではあるんですが、わたくし今年の六月にですね、八年間働いていた会社をいろいろ思うところがあって辞めたばかりでして、そんな退職した直後に『ふるさと秋田文学賞』の存在を知りまして、自分の心の整理も兼ねて書いた小説が今回、運よくと言うかとてもありがたいことに、賞をいただくことができました。
 本当に世の中、いろんなことがあるんですけども、毎日こつこつやっていけば、いいこともあるものだなと、今回のことでしみじみ思いました。きょうは秋田の美味しいもの『いぶりがっこ』ですとか『稲庭うどん』ですとか、お土産にいっぱい買って帰りたいと思います。
 この場にいるすべてのみなさんに感謝したいと思います。どうもありがとうございました」


「ありがとうございました。次に青山さま、お願いいたします」


「え~と。青山トーゴと申します。わたくし、某報道機関の記者をしておりますけども、これはペンネームで初めてものを書きまして、賞をいただきたいへん嬉しく思っております。
 で、わたし実の母のことを書いたんですけども、わたしの母の名前はマキコと言うですね……わたし一回結婚しておりますけども、その妻の名前はマキと言うんです……もうみなさん気づかれましたね。わたし内館牧子先生に会うのが、きょう非常に楽しみにしておりました。先生に会うために、スポーツクラブで体を鍛えてまいりました。
 もう一つだけ言わせていただきますと、十年前にですね、先生がまだ『女はなぜ土俵にあがれないのか』を幻冬舎新書で一押しされる前ですね、わたし新聞の一ページ企画で、モンゴルの相撲部屋に入門してきました。相手をしてくれたのはモンゴルの、柔道八十一キロ級のナショナルチームの選手でした。
 わたしはコテンパンにやられたんですけども、いつかこのことを小説に書いてやりたいなと、ずっとモンゴル出身の力士を目の敵のように思っておりました。まあ、それはどうでもいいんですけども。
 あのですね、わたし今回、随筆で賞をいただきましたが、本当はこの席(小説の部)に座りたかったな~と。小説は出したんですが、落選してしまいました。来年も応募させていただきます。で、十年くらいしたら、せいぜい内館先生くらいにはなれないかもしれません、高校と大学の先輩である西木先生の足元にも及ばないと思うんですが、せめて浅田次郎あさだじろうくらいにはなりたいなと思っております。
 さらに、もう十年したらですね、あの席(選考委員)に座っていたいなと思っております。青山トーゴと申します。本日はどうも、ありがとうございました」


 ところどころで笑いを起こしながら、最後は拍手に包まれて青山トーゴさんは着席した。
「ありがとうございました。次に渡部さま、お願いいたします」


「渡部麻実と申します。本日は佳作をいただきまして、ありがとうございました。わたしの祖母はいま一〇三歳になるんですけども、ここ横手市でいまも元気に住んでいます。今回、横手市でこの会が開かれるということで、ちょっと祖母にいいところを見せたいな~と思って書いた小説なんですが、二位ということで……実は第二回も二位をいただきまして、正直お電話をいただいたときに、だいぶ悔しかったです。
 やっぱり、ふるさと秋田なので、どうしても一回は一番を取りたいと思って頑張っているんですけど、なかなか足元にも及びませんで、まだまだ努力が必要だなと思っています。
 わたしは普段は、男の子ふたりを育てている、すごーく平凡な普通の主婦なんですけど、こんなわたしでも小説を書くことができる、そして小説の中ではなんにでもなれますし、どんなことも夢に見ることができますし、そして、一番になりたいとか負けたくないとか、まだ書きたいとか思えることが、すごい幸せで、これが小説の魅力だなと思います。
 これからも頑張って書いていって、いつか必ず一番を獲って、秋田に恩返しじゃないですけども、わたし秋田で一番になったよって言いたいと思います。きょうは本当にありがとうございました」


「ありがとうございました。次に鹿住さま、お願いいたします」


「毎年いまごろになると、母が蜜入りの美味しいリンゴを送ってくれました。十八歳のときに秋田を離れて、埼玉に住んでからのほうがずっと長くなったのですが、いまでも甲子園の高校野球とかを観て、秋田県勢と埼玉県がぶつかると、迷いなく秋田の選手を応援してしまいます。
 そんな、ふるさと秋田の賞をいただけたことを、とても嬉しく思います。本日はお招きいただきまして、ありがとうございました」


「ありがとうございました。四名の方々の作品が、これから広くみなさまに親しまれ、県民読書の輪が広がっていきますようにと願っております。受賞された方々がこれからも、秋田のファンであり続けてくださるよう、会場のみなさまから盛大な拍手をよろしくお願いします」


(※台詞セリフに関しては聞き取れた部分、聞き取れなかった部分は改変して記載しています。また、誤字脱字を含めて、部分的に間違って記載されている場合もあります)


『ふるさと秋田文学賞』の受賞作品については、秋田県立図書館、秋田県内の市町村立図書館、公民館図書室などで冊子を閲覧、または借用することができます。各図書館の貸出状況等は秋田県立図書館ウェブサイトから検索できます。(https://www.apl.pref.akita.jp/)
また、PDFデータをダウンロードして閲覧・印刷することもできます。(https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/21547)
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