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29.対決

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一時間後、救出部隊が揃った。

「狙撃班から準備完了の合図きました」
「よし!狙撃開始」

市ヶ谷基地の建物の上で監視をしている敵一名が狙撃された。
「狙撃成功!」

「よし、突入!できるだけ隠密に敵を排除、捕虜を救出するように。最重要はアキラ君だ。」

田所の号令で救出隊が動き出した。二十名の救出隊が監視が疎かになったところから基地内に侵入した。そして建物に近づいていった。

そのころ市ヶ谷の部隊は包囲を完了していた。

「降伏せよ。命の保証はする」
三島は拡声器で降伏勧告を告げた。しかし返答はなかった。

「一時間待つ。返答がない場合、攻撃を開始する」
三島は、目黒駐屯地があまりにも静かすぎるのをいぶかしんだ。

「偵察隊を出して、降伏勧告を伝えろ」

白旗を掲げた偵察隊が、目黒駐屯地に入っていった。しばらくして彼らが駆け足で戻ってきた。

「十数名しかいませんでした!基地は放棄された模様です」

「何!しまった、先手を取られていたのか!至急市ヶ谷に戻るぞ!」
三島は、握りこぶしを震わせて号令した。

部隊が市ヶ谷へ転進を開始した、その時各地で爆発が起こった。

「敵襲!?」緊張が走った。

しかし、その後の攻撃はなかった。

「退路を塞がれました!各方面でビルが倒壊し、道路が遮断。大きく迂回しないと戻れません」

三島は地団駄を踏んだ。
「くそ!こちらが罠に嵌ったのか!田所にしてやられた」


そして市ヶ谷基地。

救出隊は建物の一角の敵を排除していた。第二班五人が壁を登り、四階の壁が崩れたところから侵入していった。誰もいないのを確認し、第一班が残り、第三と第四班が四階へ登った。第二班が上階へ、第三班と第四班が下の階へと進んでいった。
二階の階段を巡回していた敵が、上から石が落ちてくるのに気がついた。

「誰かいるのか?返事をしろ!」

敵が銃を構えとき、ナイフが飛んできて銃に当たった。

「敵襲!」大声を出し、同時に発砲した。

救出隊が駆け足で行動した。
「第三班は一階へ、第四班は二階だ」

江田は一階の部屋で、アキラとマリを見ながら煙草をふかしていた。
「銃声!くそ、もう来やがったのか!人質を盾に三島と合流だ」

そう言って、アキラとマリと三名の部下を引き連れて部屋を出た。
アキラは手を縛られていた。マリはまだ眠っていて、手足を縛られている状態だった。

江田はアキラを盾にして、外に出た。

「おい、車を持ってこい」

外を巡回していた部下が江田のところ集まりだしていた。

第四班は二階に監禁されていた目黒、朝比奈を救出していた。

目黒たちが建物の外に出たとき、江田はアキラに銃をつきつけていた。周りには江田の部下が銃を構えていた。

江田が不敵に笑った。
「銃を捨てて手を挙げろ」

アキラとマリが人質になっている以上、言うこと聞くしかなく、目黒は歯ぎしりした。

「狙撃班は?」目黒は救出隊に尋ねた。
「建物の死角で狙撃は無理です」
「くそ、無理か」

「早くしろ。そうしないと…」
江田は、地面に寝ているマリに銃口を向け発砲した。

「マリ!」
アキラはマリに覆いかぶさった。

江田はアキラを見てニヤッと笑った。
「ちゃんと外して撃ったから、怪我はしてねえよ」

江田は大声を上げた。
「次は当てるぞ!銃を早く捨てろ!」

目黒は号令した。
「全員銃を捨てて待機だ」

その時、マリは銃声とアキラの声で目を覚ましかけた。まだ頭がぼーっとしていたが、目の前に銃が見えた。「アキラを助けなきゃ」体に力を入れて、バッと立ち上がり、縄をぶち切り、目の前の男、江田を羽交い絞めにした。

「うわ!」江田は驚き、思わずマリに発砲してしまった。

胸から血が噴き出し、マリがゆっくり倒れていくのが見えた。

「マリー!きさま、よくもマリを!」

アキラの怒りが爆発した。無意識のうちに魔力が額に集中していった。すると魔法陣が現れた。炎の魔法ファイアだった。炎が江田を襲った。魔石は持っていなかったが、自分自身の魔力でファイアを放ったのだ。アキラは眩暈がして倒れた。魔力切れを起こしていた。

江田は上半身を焼かれ、叫びながら、のたうち回ったが、すぐ動かなくなった。目黒たちが、すぐに銃を取ってアキラたちを囲んだ。

目黒が叫んだ。
「江田は死んだ!お前たちの負けだ!」

江田の部下たちは、江田が焼き殺されたのを見て恐怖し、投降した。

朝比奈がアキラの縄を解いて、アキラを抱いた。

アキラは、吐きそうだったのを堪えて声を上げた。
「魔石を、だれか魔石を持ってませんか?」

「ここに」
救出隊の一人が拳大の魔石をアキラに渡した。あらかじめ田所が用意し、救出隊に渡してあったものだった。

アキラは魔石を握ると、マリを抱き上げ、飛んでいった。

「アキラ君?」
目黒と朝比奈は急いでアキラが飛んで行った方へ走っていった。

アキラが目指したのは、ダンジョンだった。マリを救うには、魂の魔法陣で元の体に戻すしかない。「自分が死んでも構わない、マリは死なせない」アキラは決心していた。マリの顔がどんどん青くなる。早くしないと!

アキラはダンジョンに突っ込んでいって、すぐさま「サンダー」を発動し、魔物を一掃した。マリの胸から出血が続いているのを見て、魔石を胸に押し付けて、「頼む、血を止めてくれ!」と強く念じた。魔石は光り出し、マリの胸に埋っていった。そしてダンジョン・コアに触れ、意識を集中した。

「魂の魔法陣を!マリを助けてくれ!」

次の瞬間、ダンジョン・コアの中にいた。

何かが触れた感じがして、無数の魔法陣が出現した。
魂の魔法陣は?魔法陣に次々と触れていったが、どれも違った。

「魂の魔法陣を!オレとマリを入れ替えてくれ!」

早くしないと!アキラは焦った。

「オレは死んでもいい!だからマリを助けてくれ!」

「マリはオレが守る、って約束したんだ!」

その瞬間、魔法陣が濁流となってアキラの中に流れ込んできた。

そして最後に、一つの魔法陣がアキラの目の前に現れた。

魂の魔法陣

「マリ、マリ!」と叫びながら、その魔法陣に触れた。

次の瞬間、目が見えなくなるくらいの、眩い光に包まれ、アキラの意識は消えていった。


マリは目を覚ました。夢の中でアキラに呼ばれ、魔法陣が現れたような気がした。

「アキラ?」ハッとして、目の前を見ると、血だらけの九条アキラの体が横たわっていた。

「えっ?」何が起こっているのか分からなかった。
「確か、アキラを助けるため起き上がって…男に襲い掛かって…撃たれた?」

そして手で胸を触った。白く華奢な手、ふっくらとした胸。
「元の体に戻ったの?なら目の前のアキラは?」

恐怖に体が震えてきた。そっとアキラに触れてみた。アキラの顔は青ざめ冷たかった。

マリはアキラを何度もゆすった。しかしアキラは動かなった。
「アキラ?起きて!アキラ、ねえ、目をさまして、お願い、アキラ!」

マリはゆすりながら何度も叫び続けていた。
「いやー!アキラ、アキラ、アキラ!」

そこに目黒と朝比奈が現れた。

「アキラ君、マリ君」
目黒、朝比奈が二人の傍にやってきた。

マリは泣きながら朝比奈に抱きついた。
「アキラが、アキラが!」
「えっ?マリちゃんなの?元に戻ったの?」

目黒がアキラを抱きかかえた。
「アキラ、おまえってやつは」

マリは号泣し、朝比奈も泣き出した。
「アキラが、アキラが死んじゃったーー!」


目黒は二人の顔を見て、困った顔で言った。
「悲しんでるところ申し訳ないんだが……生きてるよ」

「えっ?」「うそ?」
二人がキョトンとした顔になった。

「重症には違いない。すぐに手当てが必要だ。さあ、行こう!」

マリの顔はパーッと明るくなり、アキラに抱きついた。
三人は急いで戻っていった。
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