one hour writing short story

深月珂冶

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ルーマー

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 物事の真偽を判断する際、何をどうすればいいか本当に難しい問題だ。
 ある日。友達の宇和うわ紗子さこがこんな話をしてきた。
「人の噂が原因で起きた事件って知ってる?」
 どういうことだろうか。私にはピンと来なかった。全く知らないので、私は聞き返す。
「何?」
「1973年に愛知県の銀行、「とよかわ信用しんよう金庫」の事件だよ」
「銀行がたんしたの?」
「うん。それの原因がね。女子高生の噂が原因なんだって」
 私はにわかに信じられなかった。けれど。人の噂はそれなりに力がある。
 私たちはかなり、マスメディアで流された情報を何の疑いもせずに信じてしまうところがある。マスメディアが嘘をつくことだってあるのにだ。
「そうなの。あーでも、有り得そう」
「うん。女子高生は友達が豊川信用金庫に就職が決まっていて、冗談のつもりで「豊川信用金庫は(ぎんこう強盗ごうとうに襲われるから)危ないよって電車で言ったの。そしたら、あれよ、あれよという間に広がったって話だよ」
 紗子は面白そうに話した。当事者にとっては洒落にならない話だろう。本当に迷惑極まりないとはこのことかもしれない。
 紗子は昼食の唐揚げを一口頬張った後、話を続ける。
「1973年は石油ショックとかペーパーがどうとかって。世の中が不安定だった。だから。そういう噂が拡がりやすい土壌があっただろうね」
 話を聞くだけではリアリティを感じないだろう。けれど。私たちの生活の中でも、「デマ」や「真偽の判断が解り難いこと」が拡がりやすかったりする。
「そうなんだね。冗談でも、友達の就職先を危ないって言う子もどうかと思えてくるね」
「あー。それな過ぎる。本当そう。いくら仲良しでも酷い冗談は止めたほうがいいよね」
「わかる」
 私は紗子が冗談でも酷いことを言う人じゃなくて安心した。”友達への冗談”のつもありでも洒落にならないのは本当に許し難い。
 ”友達への冗談”を言わなければ、破綻にならなかったのだろうと思った。
 改めて、私は噂に本当に気を付けようと心から誓った。
了 題材 「噂」 40:17
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