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第二章 私と618
4:万端 六月二十二日、午前三時十一分から六月二十五日、午前八時三十一分まで 1
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ゾンビがこちらに来る、との確定情報を受け、我々は段取りを確認して解散した。
既に掃討作戦を立案し、準備も完了していた。仮にそれで決着がつかなくとも、二の手三の手まで準備済みである。
だから、我々が最も欲しかった情報は、『どのくらいの量のゾンビが来るのか』であった。
さて、この封じ込め作戦失敗の少し前から、SNS等の命知らずな配信者達の動画が爆発的に増えていた。
彼らは自己承認や野次馬が目的だった者が殆どだったのかもしれないが、しがらみや責任、利益を考える必要が無い為、マスコミ各社よりも身軽で、研究熱心だった。
素早く移動し、素早く撤退する。それでも当初は、オフザケが大半を占めていたのだが、六月二十二日の封じ込め作戦失敗で状況が一変したことにより、そういった配信者は、減少していった。(勿論、そういった配信者達の命がけの野次馬動画もまた、大勢の命を救う一因となったのは否定できない現実である)
包囲網を突破したゾンビ達の数は、モニター越しでも強烈な威圧感があった。撮影は恐怖と混乱の為に、失敗する者が後を絶たなかったらしい。(――と、相も変わらず、飲み会の席で聞いた。作者は事態が収束してから、二ヶ月近く、毎晩飲み会を行って情報を集めていた)
そこで、あの『まとめ役』である『ロメロ先輩』が出現するのである。(一説によると、当初、この名前は『□×□』だったらしい。いかにもネット! という感じがして、作者はこの説が大好きである)
いかにもなハンドルネームで出現した、この人物は結局今に至るも正体は不明である。自称ロメロ先輩のインタビュー映像は、今でもネットや民放で頻繁に流れるが、どれもこれも何かが違う。
大体、あれだけ、自己を主張せずに淡々とまとめ役をした人物が、今更メディアに露出するだろうか?
故に、私はいまだに根強く流れている、『ロメロ先輩AI説』を推すものである。
ロメロ先輩が最初にネットに現れたのは、SNSに残っている時刻表記によると、六月二十二日、午前三時十一分である。
つまり、ゾンビが進撃を始めた約二時間後であり、まだ配信者の混乱が表面化していなかったはずなのである。勿論、全てを予期して、あらかじめ手を打ったという説を否定する事は出来ないのだが、やはり、あまりにもタイミングが良すぎると感じる。(実はネット界隈では最初から、『ロメロ先輩』=『災害対策AI』という噂が流れていた。我々も、そういう類の物じゃないのか? という話はしていたし、他の自治体でもそういう話は出ていた。だからこそ、全幅の信頼を寄せることができたのだが)
ロメロ先輩は、SNS及び、動画サイトの配信者一同に対し、協力を求めた。強力なサーバーを用意し、リアルタイムにゾンビの群れの情報を配信する、まとめサイト『デッドウォッチ』を開設した。(海外の類似サイトにお手本にされた所からも、このサイトが、あの時点でいかに優れていた――いや、万全過ぎる――いやいや、やはりここら辺は、放っておこう)
同時に配信者をバックアップする、『隊員』も募集し始めた。
隊員の構成は今に至るも明かされていないが、私が集めた情報では、電話会社の人間、自衛隊員、元暴力団員などが地方ごとに、数ユニット用意され、交代制で二十四時間稼働していたらしい。
これにより、『群れ』(百体以上)と『はぐれ』(百体以下。通常は一~十体)を随時追跡することが可能になり、かくしてデッドウォッチ発の『ゾンビ予報』が流れ始めるのである。(この辺りの細かい経緯は、読者諸君の方が詳しいかもしれない)
また、『ゾンビが干物みたいだ』という情報が出てきたのも、この『ゾンビ予報』が初だった。
ただ――我々は『干物情報』をスルーした。我々にとって、『群れの規模』が最重要だったからだ。
その情報が一体、どういう意味を持っているのか、を思い知るのは、掃討作戦が開始された、正にその時だったのだ。
封じ込めが失敗してから六時間後、六月二十二日の午前七時。私の地元でゾンビ対策のボランティアが募集され始めた。
ボランティア、と言っても命にかかわる仕事である。無給というわけにはいかないし、補償無しというのも論外だ。だから、そこそこの報酬を用意したのだが、となると、誰でも彼でもというわけにはいかなくなる。『やる気』だけではダメなのだ。
『度胸』と『責任感』、『行動力』『判断力』が『本当に必要』になってくるわけである。
というわけで、三時間後の午前十時。私はXと共に、面接官となっていた。
既に掃討作戦を立案し、準備も完了していた。仮にそれで決着がつかなくとも、二の手三の手まで準備済みである。
だから、我々が最も欲しかった情報は、『どのくらいの量のゾンビが来るのか』であった。
さて、この封じ込め作戦失敗の少し前から、SNS等の命知らずな配信者達の動画が爆発的に増えていた。
彼らは自己承認や野次馬が目的だった者が殆どだったのかもしれないが、しがらみや責任、利益を考える必要が無い為、マスコミ各社よりも身軽で、研究熱心だった。
素早く移動し、素早く撤退する。それでも当初は、オフザケが大半を占めていたのだが、六月二十二日の封じ込め作戦失敗で状況が一変したことにより、そういった配信者は、減少していった。(勿論、そういった配信者達の命がけの野次馬動画もまた、大勢の命を救う一因となったのは否定できない現実である)
包囲網を突破したゾンビ達の数は、モニター越しでも強烈な威圧感があった。撮影は恐怖と混乱の為に、失敗する者が後を絶たなかったらしい。(――と、相も変わらず、飲み会の席で聞いた。作者は事態が収束してから、二ヶ月近く、毎晩飲み会を行って情報を集めていた)
そこで、あの『まとめ役』である『ロメロ先輩』が出現するのである。(一説によると、当初、この名前は『□×□』だったらしい。いかにもネット! という感じがして、作者はこの説が大好きである)
いかにもなハンドルネームで出現した、この人物は結局今に至るも正体は不明である。自称ロメロ先輩のインタビュー映像は、今でもネットや民放で頻繁に流れるが、どれもこれも何かが違う。
大体、あれだけ、自己を主張せずに淡々とまとめ役をした人物が、今更メディアに露出するだろうか?
故に、私はいまだに根強く流れている、『ロメロ先輩AI説』を推すものである。
ロメロ先輩が最初にネットに現れたのは、SNSに残っている時刻表記によると、六月二十二日、午前三時十一分である。
つまり、ゾンビが進撃を始めた約二時間後であり、まだ配信者の混乱が表面化していなかったはずなのである。勿論、全てを予期して、あらかじめ手を打ったという説を否定する事は出来ないのだが、やはり、あまりにもタイミングが良すぎると感じる。(実はネット界隈では最初から、『ロメロ先輩』=『災害対策AI』という噂が流れていた。我々も、そういう類の物じゃないのか? という話はしていたし、他の自治体でもそういう話は出ていた。だからこそ、全幅の信頼を寄せることができたのだが)
ロメロ先輩は、SNS及び、動画サイトの配信者一同に対し、協力を求めた。強力なサーバーを用意し、リアルタイムにゾンビの群れの情報を配信する、まとめサイト『デッドウォッチ』を開設した。(海外の類似サイトにお手本にされた所からも、このサイトが、あの時点でいかに優れていた――いや、万全過ぎる――いやいや、やはりここら辺は、放っておこう)
同時に配信者をバックアップする、『隊員』も募集し始めた。
隊員の構成は今に至るも明かされていないが、私が集めた情報では、電話会社の人間、自衛隊員、元暴力団員などが地方ごとに、数ユニット用意され、交代制で二十四時間稼働していたらしい。
これにより、『群れ』(百体以上)と『はぐれ』(百体以下。通常は一~十体)を随時追跡することが可能になり、かくしてデッドウォッチ発の『ゾンビ予報』が流れ始めるのである。(この辺りの細かい経緯は、読者諸君の方が詳しいかもしれない)
また、『ゾンビが干物みたいだ』という情報が出てきたのも、この『ゾンビ予報』が初だった。
ただ――我々は『干物情報』をスルーした。我々にとって、『群れの規模』が最重要だったからだ。
その情報が一体、どういう意味を持っているのか、を思い知るのは、掃討作戦が開始された、正にその時だったのだ。
封じ込めが失敗してから六時間後、六月二十二日の午前七時。私の地元でゾンビ対策のボランティアが募集され始めた。
ボランティア、と言っても命にかかわる仕事である。無給というわけにはいかないし、補償無しというのも論外だ。だから、そこそこの報酬を用意したのだが、となると、誰でも彼でもというわけにはいかなくなる。『やる気』だけではダメなのだ。
『度胸』と『責任感』、『行動力』『判断力』が『本当に必要』になってくるわけである。
というわけで、三時間後の午前十時。私はXと共に、面接官となっていた。
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