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もう、本当に無理

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「ん……はっ!!!」

ガタッという音に目を覚まして一気に覚醒した俺はまたガバッと体を起こした。
…思い出したくないけどあのおかげで体はすっきりしている。
俺…こっちにきて1日も経たずに男と…。しにてぇ…。

もう怖すぎて何も近づきたくないし、一刻も早くこの場所からも去りたい。
丁度家主もいないみたいだし今のうちに…。
そう思って寝かせられていたベッドを抜け出そうとしてべちょっと床に倒れた。

こ、腰が痛い…足にも力がはいらねぇ…!!
さっき起き上がった時は気のせいだとごまかしていたけどやっぱり気のせいじゃなかった…!
そしてこの体勢から起き上がれん…!

くっ…誰も来るなよ…もう少ししたら動けそうな気がする…。
そんな願い虚しくすぐに部屋の扉が開いた。
はは、まじかよ。

そちらに目を向けることなく倒れた体勢のまま現実逃避していると「おい、大丈夫か?」とひょいっと抱き起こされた。
起こしてくれたのは有難いが何故横抱き?何も嬉しくないんだが?
この時の俺は本当に死んだ目をしていたと思う。

「…先ほどはすまない。何もしないと言ったのだが、抑えがきかなかった。」

「ぅぇ…あ、いや…俺も、すんません…。」

「何故お前が謝る?お前は被害者だろう。」

「あー…いや、うん…。」

ははは、と乾いた笑いを出しながら「そろそろ下ろして下さい。」と相手の腕を叩く。
そっと壊れ物を扱うかのようにベッドにおろされた俺はなんとも言えない気持ちでお礼を言った。

「ところで、どこから来たんだ?」

「…えっと…。」

俺これなんて言えばいいんだ?異世界?そんなこと言ったってどうせ通じないし頭の心配されるだけだろう。
うーんと悩んでいると男は深刻そうな顔をして聞いてきた。

「…もしかして、記憶がないのか?」

「は?…あ、そう!そうなんだよ…今までの記憶がなくて!」

「そうか、そうだったのか…。本当にすまないことをしたな。」

ぽかんと一瞬呆けた顔をしてしまったがその設定もーらいとすぐに肯定する。
実際は全くもって何一つ記憶は失ってないし、むしろ知らないだけなのだが。
しかしそれを知らない男はしゅんと落ち込んでしまった。
…まさか同じ性別の人間に犬耳が見えようとは。

くっそ…罪悪感…!
仕方ない、気にしてないと言えば嘘になるが俺も男だ。

「…もう、いいっすよ。気にしてないんで。」

「だが、しかしな…。」

ああもう!この世界の人間は皆こうなのか!?

「俺がいいって言ってるんだからいいの!…それより、俺、出て行くから俺が着てた服返して欲しいんだけど…。」

「なっ…出て行くだと!?」

「え、むしろダメなの?」

「ダメだ!許さない!」

「えぇ…。」

なんだこいつ…。
俺が出て行くからと手を差し出せば腕ごと逃さないとばかりに掴まれてすごい剣幕で言ってきた。

「お前みたいな奴が身一つで外に出てみろ!すぐに食われちまうぞ!俺より酷い輩なんてたくさんいるんだからな!?」

自分が酷いという自覚はあるんだな。
てかここそんなに危険な場所なの?モンスターとか?

「食われるって…モンスターでも出るわけ?」

「そうじゃなく…いや、モンスターもある意味ではお前を食うだろうが…。」

「えー俺まだ食べられたくないなぁ…じゃあしばらくここにいてもいい?」

「!!!!大歓迎だ!!!」

そんな嬉しそうな顔されても頃合い見て出ていきますけどね。


***
大きなわんちゃん。獲得。
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