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番外編 体育祭の話

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まだ蒸し暑さの残る、9月。
直也はあまりの暑さにへばっていた。

「あ゛つ゛い゛…」
「暑いって言うからだろ。ちゃんとクーラーついてんじゃん」
「…寧ろクーラーガンガンいれすぎてしにそうなんだけど、オレ」
「お前はクーラー苦手だもんな」

机にぐたっとなっている直也を尻目に佐原が言うとギロリと睨まれていた。
なんでこんなに寒い教室内でみんな普通にいれるのかがわかんない。
寒すぎてブランケット持参してっかんね、オレ。
今もブランケットに包まっていたら佐原に笑われた。うるせーぞ。
ざわざわと騒がしい教室にクラス委員長の声が響く。

「じゃーこの中から好きな競技選んでー」

黒板にズラっと並ぶ競技名を指差して委員長がそう言うと、また教室内は騒がしくなった。
今は今度ある体育祭の競技決めの時間で、各々何にしようか悩んでいる。

それは勿論オレ達も例外ではなく。

「神永達は何に出んの?」
「オレあんまり疲れないやつがいいなぁ~」
「無理無理、俺らの学校にそんな競技はない」
「うそ~ん…オレあんまり走ったりしたくなぁい…」
「え、なに?脚遅いの?」

がっくりと項垂れるオレを見て佐原は意外だ、とでもいうように驚いた目でこちらを見た。
脚が遅いとかじゃなくてさぁ…。

「脚は普通だと思うけど…オレ、肌とかすぐ真っ赤になって後から超痛くなんの…」
「あー日焼け?なんかお前見るからに貧弱そうだもんな」
「ちょっと?佐原よりは強いかんね、オレ」

そんなオレの言葉も軽くはいはいと流されて、楢原は?と佐原は死んだように机にべったりしている直也に尋ねていた。
直也大丈夫かな。めちゃくちゃ暑がりだもんね。
涼しいかは分かんないけど扇いでやろう。
パタパタとうちわで直也を扇げば少し回復したのか顔をオレ達の方へ向けた。

「…俺なんでもいー…」
「なんでもよくはねーだろ…早くしねーと変なのにいれられるぞ」
「そうだよ、直也ぁ…後から騒いでも誰も聞いてくれないと思うよ」
「ん゛ーー……じゃあ、智充とおんなじの…」
「えぇ?オレとぉ?んもー何になっても文句言わないでよね~」

ぺしぺしと頭を叩けばその手を掴まれてスリスリと頬擦りされた。
かわい。

「そういうイチャイチャは後でだーーーれもいないところでやってくださーい。おら、前行くぞ」

佐原が促すので席を立とうとしたけど直也が離してくれず佐原に助けを求めてみたが呆れたように溜息を吐かれて「適当に書いてくっからな」とオレを置いて行ってしまった。

「…直也?大丈夫?」
「ん…智充の手、冷たくて気持ちいい…」
「あはは、それはよかった。…佐原が書きに行ったんだけど、よかったの?」
「…別に、いい」

オレは良くないと思うんだよなぁ。
だって、佐原だよ?確かにとても有難い存在だけれど、今のこの時間は嫌な予感しかしない。



…変なのにいれてないと、いいけど。


そしてその嫌な予感は、後日当たる。



***
前編後編で完結したらいいなと思いつつ。
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