16 / 76
オレ、モテ期。
しおりを挟む悩み事かと言われたきり黙ってしまった相手を見てどうしたものかと首を傾げる。
悩み事と言えば悩み事だけど、ほぼ初対面の人に話す内容でもない。
うん、ここは誤魔化そう。
「ちょっと疲れただけなので、大丈夫です」
「…そうは、見えないが」
うーーーーん面倒な人っぽいぞー?
大丈夫って言ってんだからスルーするのが常識だろーい!多分。
というかこの人誰なの。村人という事以外何も知らないけど。まあ村人でもないけどさ。
「…いえ、大丈夫です。それじゃあ、僕はもう行くので」
「いや、こっちで話そう。生徒の悩みは放っておけない」
ぺこっと頭を下げて立ち去ろうとしたら腕を掴まれてどこかに引っ張られ始めた。
何この人ぉ…ごういーん。
気付かれないように溜息を吐いて大人しくついていく。
生徒の悩みは~とか言ってたけどこの人も生徒だよね?どゆこと。
大人しくついて行った先の部屋には『生徒会室』と書かれていて、オレやべー奴に目つけられたんかなぁと遠い目になった。
「そこのソファに座っていてくれ。飲み物を淹れてくる」
「え、いや、おかまいなく…」
もう帰りたいんですけどォ…というオレの気持ち虚しく無視されて給湯室へと入って行った。
…これしれっと帰ってもバレなさそうだな。あの人何考えてるか分かんないしここで帰っても意味なさそうだけど。
コトッと目の前に置かれた紅茶はすごく美味しそうで、有難く頂いた。お茶請けも用意してくれてるし、その好意を無碍にすることなんて出来ないよねー。ってことでいただきまぁす。
むぐむぐと食べていると目の前の人はふっと笑った。
…おい、今鼻で笑っただろ。
「……それで、貴方は僕に何が聞きたいんですか」
「ん?あぁ…そうだな。直球に聞くが、今恋人はいるか?」
紅茶を噴き出さなかったことを褒めてほしい。
この人何言ってんだ!?もう怖すぎるんだけど!
てかオレに恋人がいたところで何か問題でも!?いないけど!!
「…いませんが」
「そうか。じゃあ、俺と付き合ってほしい」
「は!?…僕と、貴方は殆ど話したことはないですよね…」
「そんなものは関係ない。お前が好きだ」
「えぇ…」
この人は宇宙人ですか?
頭が痛い。話が通じない。もうオレ泣いちゃいそう。
ここに来て色んなことが起こりすぎて混乱してるのに、なんでこんな事になるわけ?
ぐっと手を握りしめ頭を下げる。
「…すみませんが、僕は付き合えません」
「何故だ」
「……貴方の事を、よく知らない事もそうですが…」
頭に浮かんだのは楢原の顔。ここで断らなければ楢原を傷ついてしまいそうで。
そこまで考えてオレはあぁ…答え出てるじゃん。と少しおかしくなった。
「…僕、大切な人がいるんです」
なので、すみません。とまた頭を下げれば男は少し黙った後「わかった」と言った。
ほっとして顔をあげれば「まあ、俺の方がいいと思わせればいいだけだしな」と言われこいつまじでやべぇ奴じゃん。とドン引きした。
0
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
視線の先
茉莉花 香乃
BL
放課後、僕はあいつに声をかけられた。
「セーラー服着た写真撮らせて?」
……からかわれてるんだ…そう思ったけど…あいつは本気だった
ハッピーエンド
他サイトにも公開しています
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる