12 / 76
オレ、諦める。
しおりを挟む「んっ……ん、あふっ……」
寝室に戻ると、殿下はそのまますぐにシディを寝台へ連れていった。
ちなみにティガリエ以下の護衛たちは、魔法訓練場の時点から遠い物陰に隠れ、敢えてこちらを見ないようにしていたらしい。どうやらそれが貴人の護衛官として当然の作法であるようだ。
だが、ただの平民であるシディにとってこれは恥ずかしい以外のなにものでもなかった。殿下に抱かれて移動しながらいきなりその事実に気付いたとき、ほとんど蒸発しそうな気分にさせられる羽目になったのである。
いま、そのティガリエたちは部屋の外での警護になっている。かれらも獣人だからシディ同様耳はいいはずだ。だからあまり声をあげたりしたらマズイのだろうな、とちょっと思った。
しかし、結果的にそれは「思っただけ」ということになった。
「あ、あんっ……や、ああ……っ」
そうなのだ。声を我慢するなんて無理だった。
殿下は巧みにシディの衣服を脱がしていきながら、肌の上にひとつひとつ、優しく口づけを落としている。まるで「どこもかしこも私のものだ」と言わんばかりに、彼の唇が触れていない場所などいっさい許さないかのように。
額から頬、鼻先、顎。
それから耳、うなじを通って首筋から鎖骨。
……そして、胸の小さな尖りへ。
「はうっ……!」
そこをぺろりと舐められ、ちゅうっと吸い上げられた時、シディの背中はビクンと弓なりに跳ねた。片方を舌先でさらにちろちろと舐められ、もう片方は指でつままれ、こねられる。
触れられるごとに下腹部にどんどん熱が溜まっていく。するとそれを堪えようとして、つい膝が上がってしまう。まるで殿下の身体を挟むみたいにして。
「シディ……シディ。可愛い、愛してる……シディ」
「ん、んんぅ……でん、かあ……っ」
勝手にあふれてくる涙をどうすることもできない。
つらいからでもなく、こんな風に涙が溢れたのは初めてかもしれなかった。
そうして潤んだ目と、半泣きみたいになった甘い声。別にシディ自身が何を意図したわけでもないけれど、勝手にそうなってしまうのだ。でもそれが、ますます殿下を興奮させてしまうようだった。
殿下の頬が紅潮し、吐息が荒くなっていく。その手が胸元から脇腹を撫で、臍のところからさらに下りていく。指先がそうっと優しくシディの足の間のものに触れ、ビクッと腰が震えた。
「はうっ!」
「ふふ。気持ちよさそうだな? シディ」
「うっ……うう」
そうだった。シディのそこはすっかり欲望を主張して、殿下の胸元をぐいぐい押し戻すような勢いだ。そう言う殿下も、すでにかなりおつらそうに見えた。
(ああ……ちゃんと準備しなきゃ、いけなかったのに──)
朦朧となりながらそう思うけれど、すっかり腰が砕けていて、もう起き上がることもできない。殿下の腰がしっかり自分の上に乗っているので、ほとんど身動きもできないのだ。
本来であれば客をとる前に、きちんと自分の身体の準備をしておかねばならないのに。いやもちろん、殿下は「客」ではないけれど。
そうでなければ、結局自分自身が後悔することになる。穴と奥をしっかりきれいにし、入口は十分に広げて柔らかくしておく。滑りをよくするために、専用の油や塗り薬を塗っておく。でないとひどく傷つけられて流血の憂き目を見ることになるからだ。
傷ができて痛むからといって、男娼に次の客を拒む権利はない。そういう傷がもとで熱病にかかり、死んでいった仲間もたくさんいた。だからこれは、自分の命を守るために必須の準備だったものだ。
それなのに。
「でっ……殿下! なにを──」
殿下の手が寝台の脇から油壺のようなものを取り、たらたらとその中身を自分の股間に垂らしたのに気づいて、シディは慌てた。すっかり天を向いてそそり立ってしまっているシディのものの先端に、温かい油がとろとろと注がれる。どうやらそれも、ちゃんと事前に温められていたらしい。
「だめ……殿下。そんなの、オレが」
「だめだ。準備はすべて私がする」
「でも──」
「いいから。どうか私にさせてくれ。シディ」
首をのばして、殿下がちゅっとまた唇に口づけを落としてくださる。優しい瞳で見つめられると、もう何も言えなくなった。
油はシディのものから自然に下へと垂れていき、袋を濡らして最奥への入り口までをもぬるりと濡らした。香ばしい油の香りに、また意識がふわふわしはじめる。男娼のときに使ったものとは雲泥の差だ。きっとこれは貴人がお使いになる特別なものなのだろう。
と、股間からにちゅっと淫靡な音がして、シディはまた仰け反った。
「はううっ!」
殿下の手が自分の芯をつかみ、ゆっくりと上下し始めたのだ。
1
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。
マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。
いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。
こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。
続編、ゆっくりとですが連載開始します。
「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる