96 / 118
空を満たす何か
なんじゃいそれ
しおりを挟む
「異世界人だけが持つ条件があるはずなんです。」
「条件とは?」
私の言葉に、ギルミアさんが馬鹿にしたように言った。
「それが分からないから今まで誰も成し遂げられなかったんだよ。まったく。君は頭が悪いね。」
「条件が分からないからじゃなくて、今まで誰も禁止しようと行動してこなかったからでしょ。 森の賢者様は利用することしか考えてなかったようですもんね?」
私がばっさり切り捨てた。こっち来てからどんどん口が悪くなってるなぁ、私。ついでに性格も。ここまでひねくれてなかったはずなんだけど。
「ララ。喧嘩腰は良くありませんよ。」
ラヴァルさんが窘めるも、
「何で私だけ怒られるの?こいつだって煽ってきてるんだから、注意するなら両方するべきでしょ?」
あぁ、だめだ。苛々する。何故どいつもこいつも論点がずれているんだ。
「ねぇ、本当に貴方達はここに何しにきたの?今まで魔族領を回って何を見てきたの?
その態度でドラゴンの里に入ろうとしてたわけ?なら、悪いけど今すぐここから消えてくれない?」
謝る人の態度ではないし、片方しか窘めないし。裁判官はどこにいるの!両者の言い分は聞きなさいよ!
「言い過ぎでは?」
ラヴァルさんもギルミアさんも反論してくるけど、構いやしない。
「口が悪いのは認めるけど。言い過ぎ?自分の言動省みてみなよ。あぁ、腹が立つ。」
ツニートはショックからそろそろ回復したかな…。
もう私一人では(苛々が)押さえられなくなってきた。まとめて怒鳴りつけたい。あぁ、怒鳴ったらさぞかしすっきりするんだろうな。やっちゃう?そんな事を考えていると、ツニートが
『殴っていい?』
そう声をかけてきた。
「いいよ。」
ツニートの質問に食い気味に答えた。
ラヴァルさんとギルミアさんの二人が何か言う前に、ツニートは拳を振りかぶっていた。
人形が吹き飛ぶように二人は身体を九の字にして飛んでいった。
「羽虫退治したし、帰ろうか。」
私の言葉に、ツニートはこっくりと頷いた。羽虫はまたそのうち勝手に湧いてくるからね。瀕死でもカーミラさんが見つけてくれれば助かるし。
行きとは違い、辺りに吹く心地よい日差しと風を感じながらゆっくりと帰りの道を歩いた。
ツニートがぽつりと言った。
『ありがとう。カエデ、怒ってくれた。情けない。俺、言い返せなかった。言いたいこと、一杯あった、はずなのに。何言えばいいのか、分かんなくなった…。』
ツニートの目から水滴が後からどんどん溢れてくる。
この素直で純真な弟のようなツニートが私は大好きだった。
「それでいいんだよ。ツニートは一歩前進出来た。だからいいんだよ。」
私はツニートの頭を撫で回した。サイズ的に撫で回した事にも気付いてないかもしれないけど、それでも良かった。
『俺ずっと、アノーリオンと、復讐することしか、考えてなかった。俺が追い出された、あの日、皆、死んだんだ。駆けつけた時、もう、手遅れだった。もし、異端児じゃなくて、普通に産まれて、追い出されてなかったら…』
「ツニート、それは違うよ。私に言わせたら、この世界の人間も魔族も全員クレイジーで異端で野蛮だから、気にすることないし。
ツニートの一族の人達が死んだのはツニートのせいじゃなくて、さっきのあの人でなし達のせい。追い出された事を恨むんじゃなくて、死んだ人達の為にここまで心を砕いてるんだから、集落の人達は幸せだね。」
『…そっか。うん。そっか、うん。』
噛み締めるように頷くツニートが可愛い。どこまで優しいんだ、この子は。
確か小さい時に追い出されて、アノーリオンが保護したんだったよね。アノーリオンと長く一緒にいたから、アノーリオンの感情に引きずられて刷り込みのように復讐心抱いたんだと思ってたよ。ごめんね、ツニート。
そしてアノーリオンさんよ、アフターフォローはしておいて欲しかった。
「あいつが論点ずらしてくるから腹が立って、結局あの人達が何しにきたのか分からず仕舞いになっちゃったじゃないの。謝りに来たとか言ってたけど、里で何しでかすつもりだったんだか。」
ぶちぶちと文句を言う。
土下座してたから敵意はなかったんだろうけど。言葉に敵意がある時はどーするんだ。
あの態度はそれにしても酷くない?私だけにああなのか?売り言葉に買い言葉で、更に買い言葉叩きつけちゃったけど。
ラヴァルさんを焚き付ける事に成功したから、後は母様にコンタクト取ればいいんでしょ?やり方分かんないけど。
それにしてもあの人達がお詫び行脚、ねぇ?ギルミアさんまで土下座してたんだから、よっぽど酷い目にあったんだろうね。自業自得だね。あいつはもっと反省が必要だ。森の賢者じゃなくて森の愚者でしょ。
言葉による傷が目に見えないからって何を言っても良いことにはならないんだから。
この先、どうなるんだろう。先行きの不安さに溜め息しかでなかった。
でもその溜め息に、悪い気はしなかった。
少しずつ世界が再び歩き始めた気配を感じたから。
「条件とは?」
私の言葉に、ギルミアさんが馬鹿にしたように言った。
「それが分からないから今まで誰も成し遂げられなかったんだよ。まったく。君は頭が悪いね。」
「条件が分からないからじゃなくて、今まで誰も禁止しようと行動してこなかったからでしょ。 森の賢者様は利用することしか考えてなかったようですもんね?」
私がばっさり切り捨てた。こっち来てからどんどん口が悪くなってるなぁ、私。ついでに性格も。ここまでひねくれてなかったはずなんだけど。
「ララ。喧嘩腰は良くありませんよ。」
ラヴァルさんが窘めるも、
「何で私だけ怒られるの?こいつだって煽ってきてるんだから、注意するなら両方するべきでしょ?」
あぁ、だめだ。苛々する。何故どいつもこいつも論点がずれているんだ。
「ねぇ、本当に貴方達はここに何しにきたの?今まで魔族領を回って何を見てきたの?
その態度でドラゴンの里に入ろうとしてたわけ?なら、悪いけど今すぐここから消えてくれない?」
謝る人の態度ではないし、片方しか窘めないし。裁判官はどこにいるの!両者の言い分は聞きなさいよ!
「言い過ぎでは?」
ラヴァルさんもギルミアさんも反論してくるけど、構いやしない。
「口が悪いのは認めるけど。言い過ぎ?自分の言動省みてみなよ。あぁ、腹が立つ。」
ツニートはショックからそろそろ回復したかな…。
もう私一人では(苛々が)押さえられなくなってきた。まとめて怒鳴りつけたい。あぁ、怒鳴ったらさぞかしすっきりするんだろうな。やっちゃう?そんな事を考えていると、ツニートが
『殴っていい?』
そう声をかけてきた。
「いいよ。」
ツニートの質問に食い気味に答えた。
ラヴァルさんとギルミアさんの二人が何か言う前に、ツニートは拳を振りかぶっていた。
人形が吹き飛ぶように二人は身体を九の字にして飛んでいった。
「羽虫退治したし、帰ろうか。」
私の言葉に、ツニートはこっくりと頷いた。羽虫はまたそのうち勝手に湧いてくるからね。瀕死でもカーミラさんが見つけてくれれば助かるし。
行きとは違い、辺りに吹く心地よい日差しと風を感じながらゆっくりと帰りの道を歩いた。
ツニートがぽつりと言った。
『ありがとう。カエデ、怒ってくれた。情けない。俺、言い返せなかった。言いたいこと、一杯あった、はずなのに。何言えばいいのか、分かんなくなった…。』
ツニートの目から水滴が後からどんどん溢れてくる。
この素直で純真な弟のようなツニートが私は大好きだった。
「それでいいんだよ。ツニートは一歩前進出来た。だからいいんだよ。」
私はツニートの頭を撫で回した。サイズ的に撫で回した事にも気付いてないかもしれないけど、それでも良かった。
『俺ずっと、アノーリオンと、復讐することしか、考えてなかった。俺が追い出された、あの日、皆、死んだんだ。駆けつけた時、もう、手遅れだった。もし、異端児じゃなくて、普通に産まれて、追い出されてなかったら…』
「ツニート、それは違うよ。私に言わせたら、この世界の人間も魔族も全員クレイジーで異端で野蛮だから、気にすることないし。
ツニートの一族の人達が死んだのはツニートのせいじゃなくて、さっきのあの人でなし達のせい。追い出された事を恨むんじゃなくて、死んだ人達の為にここまで心を砕いてるんだから、集落の人達は幸せだね。」
『…そっか。うん。そっか、うん。』
噛み締めるように頷くツニートが可愛い。どこまで優しいんだ、この子は。
確か小さい時に追い出されて、アノーリオンが保護したんだったよね。アノーリオンと長く一緒にいたから、アノーリオンの感情に引きずられて刷り込みのように復讐心抱いたんだと思ってたよ。ごめんね、ツニート。
そしてアノーリオンさんよ、アフターフォローはしておいて欲しかった。
「あいつが論点ずらしてくるから腹が立って、結局あの人達が何しにきたのか分からず仕舞いになっちゃったじゃないの。謝りに来たとか言ってたけど、里で何しでかすつもりだったんだか。」
ぶちぶちと文句を言う。
土下座してたから敵意はなかったんだろうけど。言葉に敵意がある時はどーするんだ。
あの態度はそれにしても酷くない?私だけにああなのか?売り言葉に買い言葉で、更に買い言葉叩きつけちゃったけど。
ラヴァルさんを焚き付ける事に成功したから、後は母様にコンタクト取ればいいんでしょ?やり方分かんないけど。
それにしてもあの人達がお詫び行脚、ねぇ?ギルミアさんまで土下座してたんだから、よっぽど酷い目にあったんだろうね。自業自得だね。あいつはもっと反省が必要だ。森の賢者じゃなくて森の愚者でしょ。
言葉による傷が目に見えないからって何を言っても良いことにはならないんだから。
この先、どうなるんだろう。先行きの不安さに溜め息しかでなかった。
でもその溜め息に、悪い気はしなかった。
少しずつ世界が再び歩き始めた気配を感じたから。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
最強のギルド職員は平和に暮らしたい
月輪林檎
ファンタジー
【第一章 完】 【第二章 完】
魔物が蔓延り、ダンジョンが乱立する世界。そこでは、冒険者という職業が出来ていた。そして、その冒険者をサポートし、魔物の情報やダンジョンの情報を統括する組織が出来上がった。
その名前は、冒険者ギルド。全ての冒険者はギルドに登録しないといけない。ギルドに所属することで、様々なサポートを受けられ、冒険を円滑なものにする事が出来る。
私、アイリス・ミリアーゼは、十六歳を迎え、長年通った学校を卒業した。そして、目標であったギルド職員に最年少で採用される事になった。騎士団からのスカウトもあったけど、全力で断った。
何故かと言うと…………ギルド職員の給料が、騎士団よりも良いから!
それに、騎士団は自由に出来る時間が少なすぎる。それに比べて、ギルド職員は、ちゃんと休みがあるから、自分の時間を作る事が出来る。これが、選んだ決め手だ。
学校の先生からは、
「戦闘系スキルを、それだけ持っているのにも関わらず、冒険者にならず、騎士団にも入らないのか? 勿体ない」
と言われた。確かに、私は、戦闘系のスキルを多く持っている。でも、だからって、戦うのが好きなわけじゃない。私はもっと平和に暮らしたい!!
※異世界ロブスター※
Egimon
ファンタジー
異世界に行きたい。ネット小説サイトに潜っている人間なら一度は願ったであろうその夢を、彼はバカ真面目に望んでいた。
生活環境に不満はなく、今の自分が嫌いでもない。しかし彼は、ここ日本でこのまま生きていくことに耐えられずにいた。
そんな折、ひょんなことから異世界に転生する権利を獲得する。様々な種族を選べる中、彼が選択したのは意外! ロブスターである。
異世界のロブスターは生命の領域を逸脱することなく、半永久的命という神にも等しい特殊な生態を持っていた。
そこに惹かれた青年は、知力と武力と生命力の限りを尽くして異世界を生き抜いていく。
往くぞ異世界ッ! 掛かってこい異世界ッ! 冒険の物語が今始まる――――!
神様に世界を見てきて欲しいと言われたので、旅に出る準備をしようと思います。
ネコヅキ
ファンタジー
十七年の生を突然に終えて異世界へと転生をした彼女は、十歳の時に受けた『神託の儀』によって前世の記憶を取り戻し、同時に神様との約束も思い出す。
その約束とは、歴史の浅いこの世界を見歩く事。
学院に通いながら、神様との約束を果たす為に旅立つ準備を始めた彼女。しかし、人を無に帰す化け物に襲われて王都は壊滅。学ぶ場を失った彼女は偶然に出会った冒険者と共に領地へと避難をするのだが――
神様との約束を交わした少女の、旅立ちの序曲。
・更新はゆっくりです。
かわいいは正義(チート)でした!
孤子
ファンタジー
ある日、親友と浜辺で遊んでからの帰り道。ついていない一日が終わりを告げようとしていたその時に、親友が海へ転落。
手を掴んで助けようとした私も一緒に溺れ、意識を失った私たち。気が付くと、そこは全く見知らぬ浜辺だった。あたりを見渡せど親友は見つからず、不意に自分の姿を見ると、それはまごうことなきスライムだった!
親友とともにスライムとなった私が異世界で生きる物語。ここに開幕!(なんつって)
異世界に迷い込んだ盾職おっさんは『使えない』といわれ町ぐるみで追放されましたが、現在女の子の保護者になってます。
古嶺こいし
ファンタジー
異世界に神隠しに遭い、そのまま10年以上過ごした主人公、北城辰也はある日突然パーティーメンバーから『盾しか能がないおっさんは使えない』という理由で突然解雇されてしまう。勝手に冒険者資格も剥奪され、しかも家まで壊されて居場所を完全に失ってしまった。
頼りもない孤独な主人公はこれからどうしようと海辺で黄昏ていると、海に女の子が浮かんでいるのを発見する。
「うおおおおお!!??」
慌てて救助したことによって、北城辰也の物語が幕を開けたのだった。
基本出来上がり投稿となります!
新日本書紀《異世界転移後の日本と、通訳担当自衛官が往く》
橘末
ファンタジー
20XX年、日本は唐突に異世界転移してしまった。
嘗て、神武天皇を疎んだが故に、日本と邪馬台国を入れ換えた神々は、自らの信仰を守る為に勇者召喚技術を応用して、国土転移陣を完成させたのだ。
出雲大社の三男万屋三彦は、子供の頃に神々の住まう立ち入り禁止区画へ忍び込み、罰として仲間達を存在ごと、消されてしまった過去を持つ。
万屋自身は宮司の血筋故に、神々の寵愛を受けてただ一人帰ったが、その時の一部失われた記憶は、自衛官となった今も時折彼を苦しめていた。
そして、演習中の硫黄島沖で、アメリカ艦隊と武力衝突してしまった異世界の人間を、海から救助している作業の最中、自らの持つ翻訳能力に気付く。
その後、特例で通訳担当自衛官という特殊な立場を与えられた万屋は、言語学者が辞書を完成させるまで、各地を転戦する事になるのだった。
この作品はフィクションです。(以下略)
文章を読み易く修正中です。
改稿中に時系列の問題に気付きました為、その辺りも修正中です。
現在、徐々に修正しています。
本当に申し訳ありません。
不定期更新中ですが、エタる事だけは絶対にありませんので、ご安心下さい。
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる