彼女を奪還せよ！

本編

再びまさかの…

ナタリーを腕に抱いたまま、とりとめのないおしゃべりをしていた。ナタリーと一緒に朝を迎えられる事が嬉しかった。

何故か後ろから鼻をすする音がする。
「「「泣ける話じゃねぇか……」」」

誘拐犯のご一行だった。ナタリーを背に庇う。

「これから結婚式だったのか」「旦那が命懸けでここまで助けに来てくれたのか」「俺、感動系に弱いんだ…」
ハンカチで涙を拭っている奴までいる。正直、訳が分からない。戸惑っていると、

「俺達だって、はじめからやべーことに手を染めたりなんかしていなかったんだがよ」

何故か突然語りだした。ナタリーと顔を見合わせる。

「隣国を拠点に皆で運び屋をしてたんだ。手紙はどんな山奥にだって届けた。言葉が殆んど通じない田舎や隣の国だろうとな。手紙だけじゃねぇ。新鮮な食べ物とか工事に使うどんなに重たい材料だって運んださ。プライドを持ってな。

だが、つい最近になって俺達の仕事にケチがつくようになった。言いがかりなんて可愛いもんだ。人質を指定の場所まで送れってなぁ。最初は断ったさ。俺達は運び屋だが汚れ仕事はしないってな。するとな、仲間の家族が一家全員殺されてたんだ。産まれた赤ん坊も一緒にな。一番最初に家族を殺された奴は自殺しちまったよ。やっとこさ授かった赤ん坊だったのに。自殺した奴は俺達で丁寧に見送ったがな。
それで従わざるを得ない状況になって迎えたのが今回ってわけよ。言い訳はしねぇが、見逃してやる」

「それであんなに見張りが穴だらけだったのね…」
ナタリーがぼそっと呟いた。

「でも、良いの？失敗したら家族が殺されちゃうんでしょう？」
ナタリーが尋ねた。

「俺達だって家族を守りたいさ。そこで提案なんだが、俺達に仕事を頼んでくれないか。より良い条件を提示されたって事にすれば良い。もっと早く決断していたら良かったんだが。視野が狭くなっていたな」

ピンときた様子のナタリー。
「じゃあ、新しい仕事よ！『私たちを家まで送り届けて』!!報酬は期待しないことね！」

「「「よしきた！」」」

ナタリーと運び屋たちのノリが妙に合っていることが不思議だった。

そうして、二人のはずが14人のご一行で逃げることになった。