26 / 48
本編
募る不安
しおりを挟む
(ナタリーはどこ?前半分にいるのかな…。そもそもこの列車であっている?)
日が落ち、辺りは暗く肌寒さを感じる。膝を抱えて木箱に寄りかかり体重を預ける。見知らぬ土地、疲労、犯人達に見つかるかもしれないという恐怖の中、思考がどんどんと後ろ向きになっていく。
「ナタリー…無事でいて…」
ナタリーの無事を祈る気持ちとこれまでの後悔から、今は膝を抱えてすすり泣く事しか出来なかった。
気が付くと、丁度朝陽が昇るところだった。朝陽に向かって両手を組み、祈る。
(今日こそナタリーを助け出せますよう、僕に勇気を下さい。全て上手くいきますように…!)
ナタリーが拐われて三日目を迎えた。
(拐われて三日…。きっとナタリーも限界が近いはず…。)
一つ前のコンテナに移ろうにも、左右のどこにも足場はなかった。
(屋根を伝うしかない…?一度降り……るのはナシだ。列車のスピードと並走は無理)
リュックの中身を見ても、もうロープはない。唯一使えそうなのは余った有刺鉄線だ。
(またこいつを使うのは避けたい…。痛いし。ナシナシ!)
麻の袋が目に止まる。
(勿体無いけど…。)
麻の袋をナイフで切ってどんどん紐状にしていく。紐はどれだけあっても困らない。大きな麻の袋の残りを加工して、小さな袋を作り、小麦粉を一掴み分だけポケットに忍ばせておく。目潰し位にはなるかも。
大きな麻の袋3つに紐状にしたものをくくりつけ、紐一本通す隙間を開けて、左右に木箱を積んでいく。
コンテナの端まできたら、足場になるように階段状に積む。紐を軽く引っ張り命綱になることを確認する。これでコンテナから落ちても紐さえ握っていれば、なんとかなる…はず!いや、するんだ!
(よし…!!行くぞ!!)
木箱に足をかけ、コンテナの屋根に登ると、列車の車両を数える。
「コンテナはあと四つもあるのか…。」
登った屋根は、捕まるところが何もないことが怖い。這って慎重に進む。
列車が丁度左カーブに差し掛かった。
「うおぉぉぉぉ…!落ちる!落ちる!落ちる!」
身体が右に流される。何とか手足を踏ん張って耐えるがジリジリと流されていってしまう。
縁ギリギリのところで何とか耐えきり、列車はまた直線に進む。
コンテナの端に辿り着き、後ろ向きに降りる。足場は車両連結部の僅かな部分しかないので、慎重に降りていく。
(もうちょっと…!)
爪先が何度も空を蹴る。握力が限界を迎えた頃、爪先に僅かに触れる感触があった。そっと爪先に体重をかけ、後ろ向きに着地できた。
なんとか身体を正面に向け、次のコンテナの扉を開けようと試みる。
(無理無理無理!!)
方法は二つ。
一つ目は、扉が開いた瞬間、握っていた紐から手を離し、コンテナの中に飛び込む。それも足から。
二つ目は、扉を開けたら再度、連結部分を戻り、開いた扉に向かって中に飛び込む。
連結部分を戻れるかな!?
冷や汗が出る。爪先しか置けないような足場を戻る位なら、一つ目の方法の方が成功率はありそうだった。
(やるしかない…!!でも、やりたくないぃぃ!!)
何度か深呼吸する。深く息を吸ったところで紐をナイフで切って、連結部分を爪先で走り、取っ手に全身ですがり付く。
取っ手を上に動かし、扉が少し開いた感触を感じる。右手はコンテナの取っ手を掴んで身体を支え、左手は開いたコンテナの縁を掴むことができた。何とか左足をコンテナの中にかけたいが扉が邪魔をして足が届かない。
(飛ぶしかない…!!)
左足を振り子のように降ってタイミングを計る。
「せーーのっっ!!!!」
日が落ち、辺りは暗く肌寒さを感じる。膝を抱えて木箱に寄りかかり体重を預ける。見知らぬ土地、疲労、犯人達に見つかるかもしれないという恐怖の中、思考がどんどんと後ろ向きになっていく。
「ナタリー…無事でいて…」
ナタリーの無事を祈る気持ちとこれまでの後悔から、今は膝を抱えてすすり泣く事しか出来なかった。
気が付くと、丁度朝陽が昇るところだった。朝陽に向かって両手を組み、祈る。
(今日こそナタリーを助け出せますよう、僕に勇気を下さい。全て上手くいきますように…!)
ナタリーが拐われて三日目を迎えた。
(拐われて三日…。きっとナタリーも限界が近いはず…。)
一つ前のコンテナに移ろうにも、左右のどこにも足場はなかった。
(屋根を伝うしかない…?一度降り……るのはナシだ。列車のスピードと並走は無理)
リュックの中身を見ても、もうロープはない。唯一使えそうなのは余った有刺鉄線だ。
(またこいつを使うのは避けたい…。痛いし。ナシナシ!)
麻の袋が目に止まる。
(勿体無いけど…。)
麻の袋をナイフで切ってどんどん紐状にしていく。紐はどれだけあっても困らない。大きな麻の袋の残りを加工して、小さな袋を作り、小麦粉を一掴み分だけポケットに忍ばせておく。目潰し位にはなるかも。
大きな麻の袋3つに紐状にしたものをくくりつけ、紐一本通す隙間を開けて、左右に木箱を積んでいく。
コンテナの端まできたら、足場になるように階段状に積む。紐を軽く引っ張り命綱になることを確認する。これでコンテナから落ちても紐さえ握っていれば、なんとかなる…はず!いや、するんだ!
(よし…!!行くぞ!!)
木箱に足をかけ、コンテナの屋根に登ると、列車の車両を数える。
「コンテナはあと四つもあるのか…。」
登った屋根は、捕まるところが何もないことが怖い。這って慎重に進む。
列車が丁度左カーブに差し掛かった。
「うおぉぉぉぉ…!落ちる!落ちる!落ちる!」
身体が右に流される。何とか手足を踏ん張って耐えるがジリジリと流されていってしまう。
縁ギリギリのところで何とか耐えきり、列車はまた直線に進む。
コンテナの端に辿り着き、後ろ向きに降りる。足場は車両連結部の僅かな部分しかないので、慎重に降りていく。
(もうちょっと…!)
爪先が何度も空を蹴る。握力が限界を迎えた頃、爪先に僅かに触れる感触があった。そっと爪先に体重をかけ、後ろ向きに着地できた。
なんとか身体を正面に向け、次のコンテナの扉を開けようと試みる。
(無理無理無理!!)
方法は二つ。
一つ目は、扉が開いた瞬間、握っていた紐から手を離し、コンテナの中に飛び込む。それも足から。
二つ目は、扉を開けたら再度、連結部分を戻り、開いた扉に向かって中に飛び込む。
連結部分を戻れるかな!?
冷や汗が出る。爪先しか置けないような足場を戻る位なら、一つ目の方法の方が成功率はありそうだった。
(やるしかない…!!でも、やりたくないぃぃ!!)
何度か深呼吸する。深く息を吸ったところで紐をナイフで切って、連結部分を爪先で走り、取っ手に全身ですがり付く。
取っ手を上に動かし、扉が少し開いた感触を感じる。右手はコンテナの取っ手を掴んで身体を支え、左手は開いたコンテナの縁を掴むことができた。何とか左足をコンテナの中にかけたいが扉が邪魔をして足が届かない。
(飛ぶしかない…!!)
左足を振り子のように降ってタイミングを計る。
「せーーのっっ!!!!」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
もう、振り回されるのは終わりです!
こもろう
恋愛
新しい恋人のフランシスを連れた婚約者のエルドレッド王子から、婚約破棄を大々的に告げられる侯爵令嬢のアリシア。
「もう、振り回されるのはうんざりです!」
そう叫んでしまったアリシアの真実とその後の話。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる