彼女を奪還せよ！

本編

人探し(ナタリー視点)

誘拐事件から数日経った。翌日から外出禁止を言い渡され、ナタリーは暇をもて余していた。

ふと、枕元に置いてあるナイフが目に留まる。

手入れもされているようだし、大事な物のはずよね？
テオさんなのかテディさんなのか分からないけれど、まさか恋人の名前じゃないわよね？

何にせよ助けてくれた人に、お礼は言いたい。フードを外した顔も見てみたいし。意外と背はありそうよね…。

確か、噴水広場の片隅に料金を払って落とし物や落とし主を探してくれる場所があったはず。そこに向かえば何か分かるかも！

お礼を言いたいと言えば、外出禁止を解いてくれるはずだ。そもそも外出禁止だったのだって、私を心配してのことだし。精霊祭も終わったし、日中に行動すれば安全なはずだ。すぐに向かってみよう。

ついていくと言い張っていた兄も、商会で問題が起きたとかで、私に言い含めて慌てた様子で仕事に向かった。

「この辺りにあるはずなんだけど…」
噴水広場の周りをうろうろしていると、広場の片隅に小さな作業台を置いただけの所にスキンヘッドの男が立っていた。

ここかな？手書きの看板に『キースの案内所』って書いてあるし…。違ってもその場所までの案内を頼めば良いのよね。恐る恐る話しかけてみる。
「あの…、落とし主を探してて……」

「ん？お嬢ちゃん、これをどこで拾ったんだい？」

厳つい風貌の男だったが、フレンドリーな様子に少しホッとする。

自分を助けてくれた人が落としていった物だと説明すると、

「ほぉ…。あいつがそんな事をねぇ…。」と呟いたかと思うと、
「俺が代わりに返しといてやるよ。ちと知り合いなもんでな。お代はいらんよ。」と男はすぐに背を向けようとするのを慌てて引き留める。

「ちょ、ちょっと待って！この人を知っているの!?私も会わせて欲しいの!!」

「う～ん…。まぁ、いいけどよ。案内してやるが、あんまり期待するなよ」
と何故か渋る様子だった。

「お礼が言いたいだけよ」
そう言って、自分を助けてくれた人の元へ案内されるまま歩き始めた。

なぜ期待するな、なんていうのかしら？
まさか、犯罪者で牢にいるなんてこと無いわよね？
鉄格子ごしに再会なんて嫌よ。指名手配……ではさすがに無いわね。居場所を知っているなら捕まっているはずだもの。

そんな事を考えていると、工事現場に案内される。 

「あそこだ」

指を指す方を見ると、一際青年が一人、重たい角材を肩に抱えて運んでいく所だった。

「おーーーーーい！! テーーーオーーーーー!!」

呼び声に気付いた青年が、親方らしき人に頭を下げ、こちらに向かってくるのが見えた。

「じゃあ、おれは帰るな」
とここまで案内してくれた男はさっさと帰ってしまった。













次回、やっとヒーローとヒロインが出会います。長かった…。
ヒーロー視点に戻ります。