上 下
2 / 4

第2話:来訪者

しおりを挟む





 夜明けの光が窓辺に柔らかく射し込んだ。
 
 王都から遠く離れた古びた家で、レイラは目を覚ました。

「新しい一日の始まりね」

 彼女は伸びをした。布団から抜け出ると、階下からアレンの作る朝食の香りが漂ってきた。

 王都の生活では考えられないようなシンプルな食事だが、レイラはそれを心から楽しみにしていた。

 ダイニングに降りると、アレンはパンと新鮮なフルーツ、そして香ばしいコーヒーをテーブルに並べていた。

「おはようございます、レイラ様。 今日も素敵な一日となりますように」

 レイラは笑顔で応えた。

「ありがとう、アレン。」

 食事を楽しんだ後、レイラは庭へと足を運ぶ。

 彼女が大切にしている小さな花畑が、朝の光を浴びて輝いていた。
 レイラは手を伸ばし、一輪の花を撫でた。

「この花、きれいね。」

 アレンはそばに寄ってきて、花を見つめた。 

「王都のものとは異なりますが、こちらの自然は確かに美しいですね」

 レイラはアレンに微笑みかけた。

「私たちは、この地で新たな生活を始めるんだもの。 これからの日々を楽しんで生きていきましょう」

 アレンは頷いた。

「そうですね、レイラ様」

 この古びた家とその周辺の自然は、彼らにとっての新しい舞台となった。追放の後、彼らはここで新たな日常を刻んでいくこととなる。





 太陽が真上に昇るころ、レイラの家には予期せぬ訪問者がやってきた。
 門のノック音に、レイラとアレンは驚きの顔をした。

「一体誰が…?」

 アレンが扉を開けると、そこには若い男が立っていた。
 彼は黒いローブをまとい、疲れたような顔をしていた。

「失礼します。 私の名前はテオドール。 遠い土地からやってきました」

 彼は頭を下げて挨拶をした。

 レイラは警戒心を隠そうともしなかった。

「あなたは、なぜ私たちのところに?」

テオは深々と息をついて言った。

「正直に申し上げます。 あるものを探しておりまして、王都の情報屋からこの地にあると聞きました」

 アレンは身を前に出し、レイラを守る姿勢を見せた。

「何の情報を求めているのか、はっきりと申し上げなさい」

 テオドールは困ったように笑った。

「怖がらせてしまって申し訳ありません。 実は、私はある伝説の花を探しているんです。 そしてそれがここの庭で見かけました」

 レイラは思い出した。

「あの綺麗な花のことかしら? 必要であれば摘んでいってもらって構わないわよ?」

 テオドールは目を輝かせて言った。

「それは本当に助かります!」

その後、三人は花畑に向かい、伝説の花を探した。 
 テオはその花を見つけると、感謝の涙を流していた。

「この花は、故郷で病気を治すための薬草として使われます。 これで妹を助けられます! 本当にありがとう!」

 彼は礼を言って家を後にするのであった。

 なんだか良いことをしてレイラが気分良さそうにしているのを感じたアレンは今日はごちそうを出してあげようと考えながら、微笑むのであった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

眼鏡を外した、その先で。

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
お父様の部屋の前で、偶然聞いてしまったのは。 執事の高原が結婚するということ。 どうして? なんで? 高原は私のこと、愛してくれてるんだと思ってたのに。 あれは全部、嘘、だったの……?

これはとても円満な婚約破棄のお話し~色々ありましたがほぼみんな幸せです

ひよこ麺
恋愛
僕の仕えているエカチェリーナ・ミハイロフ公爵令嬢には、幼い頃からの婚約者である第2皇子のピョートル殿下がいる。けれどふたりは相性が悪く決して良好な関係ではないが、お互い義務と割り切っていると思っていた。あの日までは……。 僕はお嬢様の専属執事のテオドール。元捨て子の平民である僕を拾ってくださったお嬢様をずっとお慕いし、そのためならなんでもすると自負がある。 そんな僕には天敵がいる。それがピョートル殿下の兄でこの国の皇太子であるアレクサンドル殿下。お嬢様とは幼馴染で趣味が合うのもありとても親しい友人関係でいらっしゃるが、彼は何故か僕を狙っている。 お嬢様に襲い掛かる、黒い陰謀と、17年前に起きた未解決事件の真相。お嬢様を、僕の大天使様をお守りするためならなんだってしてみせる! これは、なんやかんやあるけど、最後には丸くおさまるタイプのコメディータイプのストーリー。 ※物語の都合でBL表現が一部ございます。苦手な方はご注意ください。(そこそこがっつりある場合は※をタイトルにつけて注釈をいれます)

この悪女、私が殺します〜聖女が現れ王子に婚約破棄されましたが、お気に入りの執事と復讐させていただきますね〜

海老島うみ
恋愛
ハワード男爵令嬢であるイメルダは、王子、またその婚約者の暗殺未遂の罪で処刑されようとしていた。 イメルダは無実を叫ぶが、罪を告発したのは信頼していた執事のロイクだったと知る。 そもそもあの女さえいなければ、婚約破棄などされなかったのに! イメルダは、自分の婚約者ザーグベルト王子を奪った謎の異界の聖女セイラに復讐してやる! と強く思う。 処刑直前、イメルダは復讐心の強さからハワード家の不思議な力が目覚める。イメルダは自分の人生をやり直すため、ロイクと時間を遡った。 ロイク、今度こそ、ずっと味方でいてくださいね? 今度こそイメルダは婚約破棄されずに無事結婚できるのか? そして本当の悪女は誰なのか――? しかし、イメルダの復讐は思わぬ展開となるのだった。 ※小説家になろうにも投稿しています。

家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。 その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。 そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。 なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。 私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。 しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。 それなのに、私の扱いだけはまったく違う。 どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。 当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。

処理中です...