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第一章 姫巫女の祓魔師

ダミアン

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「おはよう、マリア」と、サン=ジェルマンの家で、姉のシルフィーネからにっこりと微笑まれ、起こされ、マリアは13時ごろ起床した。
 出家と言っても、この世界アラシュア・リラでは、家に帰るのは自由である。
 マリアは、夜勤のあと、家に帰って寝ていたのであった。
「うーーん・・・・お姉ちゃん!」
「あなた、昨日の番も、事件を解決したって聞いたわよーー!!お姉ちゃんとしても鼻が高いわーー!!」と、シルフィーネがにんまりする。
「朝食は下の階に置いてあるからね!着替えて降りてきていらっしゃい!」そう言って、シルフィーネは、5歳になる息子
と、3歳になる娘の世話に戻って行った。
 お手伝いさんが、下の階に降りてきたマリアに、朝食はこちらです、お嬢様、といった。
「ありがとう、エヴリーヌ、」とマリアが言った。
 小柄な割にまあまあ食べるマリアではあったが、朝は苦手であった。
 家の中では、シルフィーネが、3歳の娘を執事に預け、5歳の息子と追いかけっこして遊んでいる。
 夫は仕事で外出中だ。
 マリア・シルフィーネの両親もまだ健在で、お屋敷に住んでいた。
 マリアはその日は、午後からシスターとしての仕事があった。
 出勤しながら、マリアは、
(祓魔師のシスターの仕事は主に夜だけど、)、と思った。
(ギルドになら、昼間も含め、もっといろんな方の力になれる。私の、この法力も。ギルドと連携する案は、どうなのかしら)とも考えていた。
「よっ、マリア!」と、マリアに声をかける者がいた。ダミアンだ。マリアの幼馴染であり、近所に住む、1つ年上で、魔法ギルドに入って仕事をしている。マリアの許嫁のような存在だ。
「昨日は夜勤だったんだな」と、ダミアン。
「そうなのよ、ダミアン!」と、マリア。
「ねぇ、ダミアン、私の案、ちゃんとギルド長に嘆願書、出してくれた?例の、祓魔師が、ギルドのお力になって、人々を助けたい、という話」
「ああ、それな」と、ダミアンが髪をかく。
「もちろん、お前との約束だから、出したさ!そしたら、どうなったと思う?一人の先輩が、その嘆願書を見て、ちょっと貸してくれ、って言って、持って行っちまったんだよ!ランスロット先輩、っていうんだけどな」
「ふぅん・・・・私たちシスター10人の嘆願書をね・・・・」
「まあ、俺に任せとけ!何とかしてやるって!」そう言って、ギルドへの道別れで、ダミアンとマリアは別れた。
 その日、シスターとしてのお勤めを終え、同僚と話し合っているとき、マリアは、志同じくして、ギルドと、ホーリークロス教会の祓魔師集団の協力、という使命について話しあった。
「このままじゃいけないわ、」と、ソフィアというシスターが言った。
「最近じゃあ、アンデッドに加え、ガーゴイルと呼ばれる、中級悪魔まで出没しているそうよ!!隣町の話だけど。この町はまだだけどね!ギルドなら倒せるだろうけど、それだと魂は救われない。私たちで、天国に送ってあげるのよ」と、ソフィアがえっへんと演説する。
「だいたい、魂が救われないと、またアンデッドやガーゴイルに転生して、その繰り返しじゃないの!その因果を、私たちで止めるのよ!なのにギルドは、女はだめ、とか言っちゃって。ましてや、シスターたちは教会で仕事してろ、ですって!いくらなんでもひどいわ!」
「ダミアンによれば、」と、マリアが呟く。ダミアンは、ギルドの中で、唯一、シスターの祓魔師たちに協力してくれる人でもあった。
「ランスロットという先輩が、私たちの10回目の嘆願書を、持って行ってしまったそうよ」
「なんですって?」と、アイリス。
「なんてことでしょう!11回目の嘆願書、また書かなきゃ!」と、ソフィア。
「・・・・・私、今度、そのランスロットっていう人に、会ってみようかな」と、マリアが呟く。
「?マリア、何を?どうせその人も、『女はひっこんでろ』っていうに決まってるわ!」とアイリス。
「私だって魔法ぐらい使えるのよ!!」と、アイリスが腕の筋肉を見せる。
 一週間後、マリアたちは夜勤のとき、ダミアンが護衛でついてきてくれるというので、アイリスとマリアとソフィアのコンビに、ダミアンが同行してくれることになった。
 なんでも、隣町で、またガーゴイルが出たというので、ダミアンが心配したらしい。
「大丈夫よ、ダミアン、」と、マリアが微笑む。
「最近は、神父様がついてきてくださるから。神父様は、高位の魔法も使えるの」
「けどよー、俺だって、ギルド・黄金の夜明け団の一員だぜ?これでもいっぱしの魔法使いだ!お前に何かあったらどうすんだよ?」
「ありがとう、ダミアン」そう言って、マリアがダミアンの頬にキスをした。
「とりあえず、今回は、神父様と行けよ、ちゃんと!!」と、ダミアンが言った。
「分かってるわ、ありがとう、ダミアン!」と言って、マリアは手を振って、彼と別れた。
 アイリス、マリア、ソフィア、そして神父のブルクハルトの4人で、夜勤が行われることとなった。
 ダミアンは有志で参加する、と言って聞かなかったのだが、マリアが、「次の日ギルドの任務入ってるでしょ、」と言って心配して、押しとどめたのだった。
 魔法のランタンをともし、午後9時から、一行はホーリークロス教会を後にした。
 神父たちはみな男性で、10名ほどいた。
 いつもは二人一組だったが、隣町のガーゴイルのうわさで、4人態勢がとられていた。
 その日は2体のアンデッドを倒しただけだった。
「んー――、収穫はなしですねぇ」と、ブルクハルト神父が言った。
「まあ、何も来ないのが一番ですが」
「そうですよ、神父様ぁ~~」と、ソフィア。
「うんうん」とアイリス。
 次の週になる前に、マリアは久しぶりに、3日間連続のお休みをもらった。
 偶然にも、ダミアンとの休日が重なったので、二人で近くの森にピクニックに行くことにした。
「こういうの、久しぶりだな」と、ダミアン。
「そうね、小さいころは、親を交えて、よく一緒にいったわよね」
「最近はどうだ、教会での仕事?」
「こっちは順調……というか、それはこっちのセリフよ、ダミアン!ダミアンこそ、ギルドではうまくいってる?」
「あったりまえよ!!ダミアン様を見ろ!先輩方の任務の補佐から、新人の世話まで、なんでもこなしてる中間管理職みたいなもんよ!!」と、ダミアンが両手を広げて言うので、マリアがくすくすと笑う。
「あそこなんて、いいだろ!あそこの開けた場所で、ピクニックしようぜ!!」と、ダミアンが手で示す。
「そうね」
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