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アデュー・トリステス ~月明かりの夜、今度こそ、君と~

クロードとの別れ

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「なるほどね」
「はい。俺も、働き盛りですしね。やりたいことも、たくさんありますし」と言って、クロードが笑う。
「そうか。イルミナティで、ギルドで、お前、どんな仕事するんだ?ごめん、俺、鍛冶屋の息子だから、魔法使いの仕事には、疎くてよ」
「いいんです、ハンス兄さん、気にしないで。また、ギルドに入ったら、頻繁に手紙、イブハールへ送ります。ギルドでは、主に一般市民から王侯貴族まで、魔法でしか解決できない困りごとを解決する仕事です。イルミナティはギルドの中でも上級のギルドなんで、料金も高めなんで、難しめの任務が来ることがおおいそうですが……。王宮勤めもよかったんですが、俺も負傷していく仲間を見ていくのに耐えられなくて……。やめることにしたんです」
「なるほどな」
「兄さん、シュザンヌを、幸せにしてやってください。従兄として、お願いします」そう言って、クロードはペコリと頭を下げた。
「任せろ、と言いたいけど……。任せてくれ、クロード。俺には、それが、たぶんできると思う」そう、神妙な顔でハンスが言うので、クロードはほっとした笑顔を見せた。
「シュザンヌとお幸せに、兄さん」
 そういって、クロードとハンスは、固い握手を交わし、抱擁を交わした。

 式の日はあっという間にやってきた。その日は、エルフの慣習に従い、昼間からだというのに、エルフの花火があちこちからあがっていた。
 ドラゴンたちも参列し、ハート型の炎を作って遊んでいた。
 マリウスもスーツを着て参列した。セルフィもドレスを着ている。二人とも、シュザンヌとハンスの姿を見たくて、ワクワクしているようだ。
 やがて、マラルメ監視のもと、結婚式が始まった。
「新郎新婦の入場です!」と、司会進行が言う。
 会場の人々の拍手とともに、右側から花嫁姿のシュザンヌが、左側から、白いタキシード姿のハンスが入ってきた。
 舞台は野外に設置してあり、会場には椅子が置いてある。たくさんのエルフが参列している。
 青色と白のドレスを着たシュザンヌが、長いドレスのすそをエルフの子供に持ってもらいながら、舞台の中央に進み出た。
 ハンスが、シュザンヌの手を取り、かがんでキスをする。
 会場の中央には、十字教の祭壇がある。
 楽器隊のバイオリンとピアノ演奏とともに、神父が取り仕切る。
「汝、エルフとして結婚せし者、」と、神父が言う。
「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
 と、まずハンスに聞く。
 ハンスが、にっこりと微笑み、「はい、命の限り、誓います!」と宣言した。
「では、新婦、シュザンヌ嬢よ、」と、神父様が言う。
「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
 と、聞いたので、シュザンヌが泣きながら、
「はい、私も、この命が続く限り、誓います」と言った。
 続いて、誓いのキスで、会場は一気に盛り上がり、盛大な拍手に包まれた。
 お祝いの風船があがる。
 エルフの風習で、バラの花束を、会場の人々が天に向かって投げる。
「では、指輪の交換を」と、神父。
 ハンスが、結婚指輪を、シュザンヌの左手の薬指にはめた。
 続いて、シュザンヌが、ハンスに、結婚指輪をはめる。
 珍しく、クロードが泣いている。ハンカチで涙をぬぐいながら、クロードは、(俺は、この姿が見たかったんだよな……)と思いながら、泣いていた。
 その後、誓いの言葉を何度も述べ、一応、神父様の役目は終わった。
 その後、会場での立食パーティー、シュザンヌの4回のお色直し、ハンスの黒いタキシードへのお色直しなどを含め、結婚式は終わった。
 式の間中、花嫁であるシュザンヌは、笑顔で、美しく、いつも幸せそうであった。
「シュザンヌ、綺麗だよ」と、クロードは言って、シュザンヌに花束を渡した。
 従妹は、満面の笑みで、とても幸せそうだ。

8 クロードとの別れ

 結婚式のあと、シュザンヌ・ハンス夫妻は、新居となる、宮殿の奥の住まいへと通された。宮殿の中の一角にある部屋で、複数の部屋がある部屋だという。
 クロードとカルロスもついてきていたのだが、4人は話し合い、二日後のクロードとの別れに備え、各々、クロードに託すもののチェックなどをした。(手紙など)
「父さん、母さんにも、報告しないとな」と、ハンス。
「シュザンヌ、もう、君は今から、シュザンヌ・ラファージュだな」と、クロードが微笑む。
「そうね、クロード!私、心から幸せ!」
「よかった」
「二人とも、本当におめでとう」と、部屋の前で、カルロスが言った。
「俺は王子だが、君たち二人は特別だ。いつでも会えるし、これからも、よき友人として、よろしく頼む、二人とも」
「はい!」と、シュザンヌ。
「おう!」と、ハンス。
 これから、シュザンヌとハンスは、エルフとして、悠久の時を、永遠に、ここイブハールで夫婦として暮らしていくことになるのだ。対する、クロードは、有限の命を持つ者として、世界アラシュアで生きていく。
「シュザンヌ、従兄としても、一人の男としても、君にお祝いを述べたい。この度の結婚、本当におめでとう!!」そう言って、クロードとシュザンヌはしばらく抱きあった。
「クロード、君も、あと1カ月ぐらい、ゆっくり滞在していったらいいのに」
「そうよ、クロード!!」と、シュザンヌ。
「いや、俺は……」そう言って、クロードは下を向いて、
「そうなると、別れが名残惜しくなっちゃうだろ!それに、今帰れば、イルミナティの、今年度の入隊に、間に合うとか、いろいろあってな」と、クロードがはぐらかす。
「そう……残念……」と、シュザンヌ。
 そういって、その日は、一行は離散した。
「シュザンヌ……」と、ハンスが戸を閉めて言う。
「クロードと会えなくなるのは、本当につらいな」と、しんみりという。
「そうね、ハンス。私も、つらいわ。でも、手紙のやりとりが、できるから……」
「そうだな」
「今日の君、綺麗だったよ」と、ハンスがウィンクし、シュザンヌを抱きしめた。
「今日も、夜、いい?」と、ハンスが聞くので、
「もちろん、ハンス♪」とシュザンヌが顔を赤くして言った。
 二人はキスすると、夕食を取り、その後、ベッドに入った。
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