聖なる二人のトリステス ～月明りの夜、君と～

第九章 死霊の国

３発の引き金

「水流波！」
　と言って、剣でその方向に、水の竜を作り出す。
「チッ……！」と言って、メフィストフェレスがジャンプして攻撃をかわす。
「やはりな……精霊の攻撃までは、冥王ハデスも加護しきれなかったと見える」
「うるさい……！」と、メフィストフェレスが叫ぶ。
「やっぱシェバンが一番使いやすいなぁ……」と、クロードが言って微笑む。
　その後、３０分ほど、二人は戦いあった。たまに、メフィストフェレスの斬撃が、クロードに傷を負わせることもあったが、悪魔・ナベリウスの力で、修復しつつあった。
　クロードは、火・水・風・地の精霊で、攻撃をしかけ続けた。魔力が尽きるまで。悪魔の力がつきるまで、自身の傷が修復されるスピードで計算しつつ、残りの力を計算しながら戦った。
　やがて、クロードの、傷の修復スピードが、落ちて来た。
　一方、メフィストフェレスも、傷を負い、ちょっとよろめいて、立っている。
「メフィストフェレスよ、」と、頭上から声がした。野太い声だ。
「我は貴様を見捨てることにした。加護も捨てる。あとは、勝手にするがいい」と、冥王ハデスの声がした。
「ハデス様……！！どうか、我にも、もう一度チャンスを……！！」
「それしきの魔術師にてこずるようでは、貴様の力もわかったもの。それに、剣技があっても勝てるぐらいの力、力量を、我に見せてみよ。そうすれば、再び登用することも、考えてやろう」と、冥王は言って、その声は白い靄の彼方に消えていった。
「あぁあぁーーーーーーーーーーーー！！！ハデス様――――……！！」と、メフィストフェレスは言って、くっ、くっ、と笑った。よろよろと立ち、クロードをにらみつける。
「貴様ぁーーーー！！許さんぞ、クロード・グラニエーーーー！！！」
「フン、貴様のなれの果てだな、メフィストフェレス」と、クロードが、口の切れ端からの血を手でぬぐいながら言う。
「これで俺も剣技・シャイン・ソードが使えるようになった……ようだな。ここからは、やらせてもらうぜ。俺は、精霊使いなんだが、アルテミスのシャイン・ソードが、使ってて一番楽しいんだよ！！だから、剣が好きなんだ！！」
「貴様……」と、メフィストフェレスがゼイゼイ言いながら睨む。
「俺の心には、正義の炎が宿っている。それは、男なら、全員が何かしらの形で持っている、光だ」と、クロードが言う。
「だから、俺はアルテミスの正義の剣で戦うのが、好きなんだよ！！」
　そういって、傷口の修復能力が消え、血をぼたぼたと流しながら、クロードはメフィストフェレスとの間合いを一気につめた。悪魔の力が、底をついたようだ。
「こっからは、サシで勝負だ！！」クロードが、シャイン・ソードを構え直す。
「あえて言う。お前は俺より、格下だ！」と、クロードがけん制をかける。
　二人は、降魔剣とシャイン・ソードで戦いあった。斬り合いが続く。
　やがて、二人とも、地に倒れ、動けなくなった。
　クロードも魔力が底をつき、悪魔の力も底をついている。
　一方のメフィストフェレスも、力をもうこれ以上は使えないようだ。
　クロードは、自身の魔力の最後を感じ取り、事前に、最後の魔法を使っていた。
　それが、「重力波グラウィタス」だった。それが、クロードの最後の魔法だった。
　その力のせいで、メフィストフェレスは地に伏して動けない。
　血を流しながら、じりじりと、クロードは地面をはい、敵に向かってにじり寄った。
　そして、メフィストフェレスの隣まで来ると、ポケットから銃を取り出した。
「フン、」とメフィストフェレスが血まみれの顔で言った。
「貴様には、もう魔力も、悪魔の力も、何も残っていはいまい。人間の作り出した普通の銃の銃弾では、我をすりぬけ、通り抜け、我を殺すことなど、できんぞ」
「あるんだよ、たった一つの手段がな、」と、クロードは言った。
　はぁはぁと息を切らせながら、クロードは自身の上半身だけをゆっくりと持ち上げた。
　そして、銃口をメフィストフェレスの心臓にピタリとあてた。
「てめぇの命がなシャイン・ソードがな」
　そういって、彼は引き金を、３発弾いた。