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第八章 さようなら
王笏座の3つの能力
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そこで、クロードは言葉通り、光の精霊アルテミスの宿る、シャイン・ソードを出し、頭上に大きく掲げた。
「汝、我が王笏座の力を継ぐもの、この時代の平和を守る者として、我、ブランデンブルクが認める」
ブランデンブルクの手から、深緑色の光が放たれ、クロードのシャイン・ソードに宿った。
あまりのパワーに、剣を持つクロードが、「うっ、」と言って、剣を握り直した。
「正しき道に、その力を使うように。旅路の安寧を祈っている。と同時に、クロード・グラニエ君、君の人生をとして、その力を生かし、世界の平和を守ってほしい……」
「それは、俺が大魔法使いになるということですか?」と、クロードがシャイン・ソードを胸の位置に戻して聞いた。
「さあ、それはすべては神のお導きによるもの。汝らの旅に、幸あらんことを」
そういって、もやが再び濃くなり、クロードにはブランデンブルクの姿が見えなくなった――。
「クロード、クロード……!!」と、カルロスやマリウスの呼ぶ声がする。
クロードははっと目を覚まし、思わず手に持っていたはずのシャイン・ソードを見た。だが、現実世界では、シャイン・ソードは出ていない。手にも、持っていない。
「クロード君、目が覚めたかね?」と、マリウスがやや焦って言った。
「はい、ブランデンブルク様という偉いお方から、お話を伺いました」
「ふむ、月の女神の時のハンスと同じだな」と、カルロス。
「クロード、王笏座の特殊能力は3つある。それについて、説明させてもらう」
「はい、お願いします、カルロスさん」
「王笏座は、3つの加護がある。一つが、『王の威厳』と呼ばれるもの。もう一つが、『王の怒り』と呼ばれるもの。最後の一つは、『王の責務』と呼ばれるものだ」
「なるほど……」と、クロードが、手帳にメモをとっている。
「それぞれ、王笏座の加護を使いたいときは、『ミトラ、ミトラス、グレイン……』のあとに、王笏座の名前を呼べばいい。それは、他のエルフと一緒だ」
「はい」
「『王の威厳』とは、『重力波(グラウィタス)』のことだ。視界に入るすべての敵を地にひれ伏せさせる。『王の怒り』は、『激情波』と呼ばれる。クロード君、君の使う斬撃波を強化したものだ。感情の高ぶりによって剣技を強くする波状攻撃だ。『王の責務』……これについても、説明せねばなるまい。本当は、君には使ってほしくないのだが……。これは、『命(ライフ)の(・)一(レー)滴(ゲン)』と呼ばれる特殊能力だ。これを使えば、本来はできないことができる。それは、自分の魔力、体力を、最後の一滴まで、使い切ることができるというものだ。最後の一滴まで使っても、死ぬことはないが、動けなくなる。体にも負荷がかかる。多用はしない方がいい」と、カルロスの説明は終わった。
「カルロスさん、」とクロードが手帳をしまって言った。
「死霊の国に行くまでに、一週間、時間をください。そこで、俺に修行をさせてください。この、授かりし力を、最も有効に使うため……」
「うむ、分かった、クロード。だが、一週間だけで、ものにできるようになるかな?」と、カルロスがちょっと意地悪なことを言う。
「してみせます!必ず……!!ハンス兄さんの命は、俺が取り戻します!!」そう言って、クロードはカルロスの監修のもと、その日からほぼ一日中、修行を続けた。
シュザンヌは、最後に、別れる前にフォーマルハウトと話したことを思い出していた。
『死霊の国への入り口は、リラ西部にあります。ここからも近い。ドラゴンなら、居場所も知っているはずです。彼らに聞いてみるといい。ちなみに、僕らユニコーンも、場所なら知っていますが、恐ろしくて、あまりにまがまがしくて、口には出したくありません』と言っていた。
3日後の夜、シュザンヌとマリウスの見えないところで、カルロスやドラゴンたちに見守られながら修行をしていたクロードは、カルロスから「OK」をもらった。
「早かったな、さすがクロードだな」と、カルロスがクロードの肩をポンポン、と叩く。
ライフ・レーゲンを疑似的に使ってみたクロードは、動けなくなりながら、はぁはぁと息をしながら、
「明日には、死霊の国へ行きましょう。時間は、あまりない……」と、とぎれとぎれに言った。
「うむ。そうだな。君の体力的に、一休みしなくても大丈夫か」
「俺ならいけます」そう、クロードは即答した。なんといっても、クロードは21歳、血気にはやる若者なのだ。
カルロスが、3人の護衛と、ドラゴンに目を合わせ、「うんうん」と頷いた。
「ドラゴン殿たちが、死霊の国への行くルートを知っていらっしゃるそうだ。君さえ準備が整えば、俺たちは行くぞ」
「ありがとうございます」
「うむ」
その晩は、作戦会議が続いた。
「汝、我が王笏座の力を継ぐもの、この時代の平和を守る者として、我、ブランデンブルクが認める」
ブランデンブルクの手から、深緑色の光が放たれ、クロードのシャイン・ソードに宿った。
あまりのパワーに、剣を持つクロードが、「うっ、」と言って、剣を握り直した。
「正しき道に、その力を使うように。旅路の安寧を祈っている。と同時に、クロード・グラニエ君、君の人生をとして、その力を生かし、世界の平和を守ってほしい……」
「それは、俺が大魔法使いになるということですか?」と、クロードがシャイン・ソードを胸の位置に戻して聞いた。
「さあ、それはすべては神のお導きによるもの。汝らの旅に、幸あらんことを」
そういって、もやが再び濃くなり、クロードにはブランデンブルクの姿が見えなくなった――。
「クロード、クロード……!!」と、カルロスやマリウスの呼ぶ声がする。
クロードははっと目を覚まし、思わず手に持っていたはずのシャイン・ソードを見た。だが、現実世界では、シャイン・ソードは出ていない。手にも、持っていない。
「クロード君、目が覚めたかね?」と、マリウスがやや焦って言った。
「はい、ブランデンブルク様という偉いお方から、お話を伺いました」
「ふむ、月の女神の時のハンスと同じだな」と、カルロス。
「クロード、王笏座の特殊能力は3つある。それについて、説明させてもらう」
「はい、お願いします、カルロスさん」
「王笏座は、3つの加護がある。一つが、『王の威厳』と呼ばれるもの。もう一つが、『王の怒り』と呼ばれるもの。最後の一つは、『王の責務』と呼ばれるものだ」
「なるほど……」と、クロードが、手帳にメモをとっている。
「それぞれ、王笏座の加護を使いたいときは、『ミトラ、ミトラス、グレイン……』のあとに、王笏座の名前を呼べばいい。それは、他のエルフと一緒だ」
「はい」
「『王の威厳』とは、『重力波(グラウィタス)』のことだ。視界に入るすべての敵を地にひれ伏せさせる。『王の怒り』は、『激情波』と呼ばれる。クロード君、君の使う斬撃波を強化したものだ。感情の高ぶりによって剣技を強くする波状攻撃だ。『王の責務』……これについても、説明せねばなるまい。本当は、君には使ってほしくないのだが……。これは、『命(ライフ)の(・)一(レー)滴(ゲン)』と呼ばれる特殊能力だ。これを使えば、本来はできないことができる。それは、自分の魔力、体力を、最後の一滴まで、使い切ることができるというものだ。最後の一滴まで使っても、死ぬことはないが、動けなくなる。体にも負荷がかかる。多用はしない方がいい」と、カルロスの説明は終わった。
「カルロスさん、」とクロードが手帳をしまって言った。
「死霊の国に行くまでに、一週間、時間をください。そこで、俺に修行をさせてください。この、授かりし力を、最も有効に使うため……」
「うむ、分かった、クロード。だが、一週間だけで、ものにできるようになるかな?」と、カルロスがちょっと意地悪なことを言う。
「してみせます!必ず……!!ハンス兄さんの命は、俺が取り戻します!!」そう言って、クロードはカルロスの監修のもと、その日からほぼ一日中、修行を続けた。
シュザンヌは、最後に、別れる前にフォーマルハウトと話したことを思い出していた。
『死霊の国への入り口は、リラ西部にあります。ここからも近い。ドラゴンなら、居場所も知っているはずです。彼らに聞いてみるといい。ちなみに、僕らユニコーンも、場所なら知っていますが、恐ろしくて、あまりにまがまがしくて、口には出したくありません』と言っていた。
3日後の夜、シュザンヌとマリウスの見えないところで、カルロスやドラゴンたちに見守られながら修行をしていたクロードは、カルロスから「OK」をもらった。
「早かったな、さすがクロードだな」と、カルロスがクロードの肩をポンポン、と叩く。
ライフ・レーゲンを疑似的に使ってみたクロードは、動けなくなりながら、はぁはぁと息をしながら、
「明日には、死霊の国へ行きましょう。時間は、あまりない……」と、とぎれとぎれに言った。
「うむ。そうだな。君の体力的に、一休みしなくても大丈夫か」
「俺ならいけます」そう、クロードは即答した。なんといっても、クロードは21歳、血気にはやる若者なのだ。
カルロスが、3人の護衛と、ドラゴンに目を合わせ、「うんうん」と頷いた。
「ドラゴン殿たちが、死霊の国への行くルートを知っていらっしゃるそうだ。君さえ準備が整えば、俺たちは行くぞ」
「ありがとうございます」
「うむ」
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