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第五章 月の女神アリアンロッド
守れなかった約束
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カルロスは、思わず真っ青になりつつ、「ハンス!」と叫んだ。続いて、グリム・リーパーとハンスの斜め上らへんに浮かんでいるメフィストフェレスを見やる。
「やぁ、一介のエルフさん」と、メフィストフェレス。
「この子……ハンス、という少年、ね。最初はね、威勢が良かったんですがね……途中、肩に傷を負って、グリム・リーパーくんの特有の傷の副作用にやられてから、一気に弱くなっちゃってね……それでも、よく持ちこたえた方だと思いますよ。彼は彼なりに応戦していたようですし、少しは認めてあげましょう♪」
「なん……だと……?」とカルロス。
「エルフさん、その少年はまだ死んではいませんよ。我々が君を呼んだのも、君にちょっといいことを教えてあげようかと思いましてね……その少年、死神により、心の臓をまっすぐに貫かれ、心臓は凍り付きましたし、今は仮死状態といったところです。私も少し呪いをかけときました……このまま普通に殺してもおもしろくありませんからね!」
「貴様、ハンスになんてことを……!」
「ヒントを一つさしあげましょう。あえていいましょう、ハンスは心のどこかで裏切っている、とね。“ノエリアという少女の裏切り”、それがヒントです」
「いったい何を……」
絶句するカルロスのそばで、高笑いをした挙句、メフィストフェレスはシルクハットのような帽子をとり、空中でカルロスに向かって一礼し、くるりと回転して、悪魔ガープとともに、虚空のかなたへと消えていった。
「ハンス!!」
カルロスがハンスにかけより、彼の様子を確かめる。ハンスにさわってはみたものの、ぞっとするほど体が冷たい。「死神」と言っていたあの敵の仕業か……と、カルロスは思った。
ハンスの背中と胸の中心部分を貫いていると思われる傷口も確認できた。出血はない。だが、ハンスはぴくりとも動かない。仮死状態、と奴は言っていたが……。
「ハンス、聞こえるか、ハンス……」
カルロスは何度かハンスの名を呼んだが、返事はない。本当に生きているのかもわからない。実は死んでいるのではないか、と思うくらい、ハンスの体は冷たかった。
「頼む、救援が、早く来てくれればいいんだが……!」
と、カルロスは思うほかなかった。1~2週間前に小鳥の足に結び付けた、護衛を頼む手紙の行方だけが気がかりであった。
とりあえず、救援チームが来るまで、ハンスを雨露しのげる場所に移動させなければ……と思い、カルロスは、水汲み場の対岸にあった、大きな木のうろを思い出した。
カルロスは、せめてハンスを雨や風から守るため、ハンスをかついで、その木のうろの場所まで向かおうと思った。
「シュザンヌ殿、すまない、ハンスを守るという君との約束を守れなかった……!」
そう思いつつ、エルフの救援が来たら、とりえあずハンスの治療を頼んでみよう、と思ったカルロスであった。
「やぁ、一介のエルフさん」と、メフィストフェレス。
「この子……ハンス、という少年、ね。最初はね、威勢が良かったんですがね……途中、肩に傷を負って、グリム・リーパーくんの特有の傷の副作用にやられてから、一気に弱くなっちゃってね……それでも、よく持ちこたえた方だと思いますよ。彼は彼なりに応戦していたようですし、少しは認めてあげましょう♪」
「なん……だと……?」とカルロス。
「エルフさん、その少年はまだ死んではいませんよ。我々が君を呼んだのも、君にちょっといいことを教えてあげようかと思いましてね……その少年、死神により、心の臓をまっすぐに貫かれ、心臓は凍り付きましたし、今は仮死状態といったところです。私も少し呪いをかけときました……このまま普通に殺してもおもしろくありませんからね!」
「貴様、ハンスになんてことを……!」
「ヒントを一つさしあげましょう。あえていいましょう、ハンスは心のどこかで裏切っている、とね。“ノエリアという少女の裏切り”、それがヒントです」
「いったい何を……」
絶句するカルロスのそばで、高笑いをした挙句、メフィストフェレスはシルクハットのような帽子をとり、空中でカルロスに向かって一礼し、くるりと回転して、悪魔ガープとともに、虚空のかなたへと消えていった。
「ハンス!!」
カルロスがハンスにかけより、彼の様子を確かめる。ハンスにさわってはみたものの、ぞっとするほど体が冷たい。「死神」と言っていたあの敵の仕業か……と、カルロスは思った。
ハンスの背中と胸の中心部分を貫いていると思われる傷口も確認できた。出血はない。だが、ハンスはぴくりとも動かない。仮死状態、と奴は言っていたが……。
「ハンス、聞こえるか、ハンス……」
カルロスは何度かハンスの名を呼んだが、返事はない。本当に生きているのかもわからない。実は死んでいるのではないか、と思うくらい、ハンスの体は冷たかった。
「頼む、救援が、早く来てくれればいいんだが……!」
と、カルロスは思うほかなかった。1~2週間前に小鳥の足に結び付けた、護衛を頼む手紙の行方だけが気がかりであった。
とりあえず、救援チームが来るまで、ハンスを雨露しのげる場所に移動させなければ……と思い、カルロスは、水汲み場の対岸にあった、大きな木のうろを思い出した。
カルロスは、せめてハンスを雨や風から守るため、ハンスをかついで、その木のうろの場所まで向かおうと思った。
「シュザンヌ殿、すまない、ハンスを守るという君との約束を守れなかった……!」
そう思いつつ、エルフの救援が来たら、とりえあずハンスの治療を頼んでみよう、と思ったカルロスであった。
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