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第九章 新たなるメッセージ

ゴッド・ハンド・スプラッシュ

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その言葉には答えず、ヨハンネスはじっとその父親を見つめた。
「俺はたしかにフレデリクさんの友人、いや知人、と言ったところです。ところで、お父さん、決闘なら、私が彼の代わりに致します。決闘相手を、さっさと紹介してください」
「フン、いいだろう、背は高いが、ひょろひょろのお前じゃあ、彼にはかなうまいよ!何と言っても、コレットの確約されている将来の結婚相手は、アストランの首都に魔法学を学ぶために勉強留学していた、秀才だ!おまけに、貴族出身で、我々の遠縁のいとこにあたる、身内だ!立派な家柄だ。コレットには、彼、エーミールと結婚してもらう!!」
 そう言って、コレットの父親は、身を退け、手招きして、家の奥から、ある男性を引き出した。
 背丈はそこまで高くないが、どちらかというと筋肉質な体系をしている男性は、、「エーミール・アンドレだ。お前、名前はなんと申す?」と聞いてきた。
「俺は、ヨハンネス・リューベック、18歳。正確にいえば、あと7日で成人する男だ」
「ほう?若造をいたぶるのは趣味ではないがな……。俺は、エミール・アンドレ、貴族の出で、23歳だ。コレット嬢のいいなずけだ」
「嘘よ!!」と、コレットが叫ぶ。
「私とは幼少期に会ったきりじゃない!私はフレデリクが好きなのよ!!」
「コレット、お前は下がっておれ!」と、父親が注意する。
「コレットさん、ご安心を。俺がエーミールさんを倒し、あなたとフレデリクさんを結婚させてみせますから!俺の腕を信じて!」と、ヨハンネス。
「ヨハンネスさん、気を付けて下さい」と、フレデリクがヨハンネスに囁く。
「奴は魔法をバンバン使ってきます!それだけはご注意を!」
「おう、フレデリクさん!承知しました!それはそうと、フレデリクさん、あなたも危ないから、後ろに下がってて!!」
 そう言って、ヨハンネスはシャイン・ソードを繰り出すと、それをしっかりとした手つきで構え、じりじりとエーミールの間合いへと近づく。
「ほう、お前も魔術師か。だが、俺に勝てるかな?」と言って、相手もシャイン・ソードを出す。
「決闘、開始!」と、コレットの父親に指示された執事が片手を宙にあげ、叫ぶ。
 まずは、シャイン・ソードでの斬りあい。ヨハンは、冷静な手つきで、相手の剣さばきをひょいひょい、とかわしていく。
(ふむ、剣さばきは並程度、ってところだな……。こりゃ、スペツナズの奴らより、弱いかも)と思いながら、ヨハンは剣で剣の応酬をし、相手の力量をはかる。
「なめてんのか、コラァ!?さっさと打ちかかってこんか、若者!!」と、エーミールが怒り心頭で叫ぶ。
「そっちがその気なら!」と言って、ヨハンが押し上げ返しの剣技で、相手に斬りかかる。
 相手に直撃したが、エーミールはすんでのところでシールドをはっていたらしい。とっさに、二人は距離をバックステップでとる。
「くそっ」と、エーミールが、剣の腕が相手が上だと悟り、呟く。
「それなら……」と言って、
「アーネト・ヘラーク・シュウ」と言って、風の精霊を呼び出した。
「ちょっとちょっと、一対一の決闘では、普通精霊を使うのは反則行為でしょーが!!」と、ヨハンネスが警告するが、相手はニンマリ笑って、
「お前ら下民どもに、ルールなんざねぇんだよ!!俺は貴族様なんだぞ!!お前ら一般市民に負けてたまるか!!」と言って、
「風のカッター攻撃を受けな!!」と言って、風の精霊・ジンを呼び出し、見えないカッターで攻撃をしかける。
「ったく、警察沙汰……といいたいが、しょうがねぇ!!」と言って、
「お前がそれなら!」と言い、ヨハンネスは剣でカッターを次々とはじくと、
「ミトラ・ミトラス・グレイン・・・・カシオペア!!」と叫び、群青色の剣を光らせて、一気に相手との間合いを詰める。
(俺はエルフと人間とのハーフ!ということは、この加護も、特別な意味を持つはず……!)
 通常の人間が、エルフからの加護を受けて戦うのと、エルフの血を引いているものが、加護を受けて戦うのでは、雲泥の差がある、と聞いたことがある。
「カッターがなんだ、こちらは・・・・」と言って、相手のシールドを剣で一発でうちやぶり、恐怖の顔色を浮かべている相手の脳天に、思いっきり一発、パンチを食らわせた。
「カシオペア座の加護を受けた、星の光パンチ、ってところかな・・・・・?どう?目がチカチカする?」と、ヨハンが笑いながら言う。
 続いて、相手が立ち上がれないよう、一発念のため蹴りを入れておき、パンパン、と手をたたいて、汚れを払い、
「終わりました、コレット嬢、それから、コレットさんのお父さん!これでケリです!」と陽気に言った。
「く、くそっ……!だが、待て!」と、気を失っているエーミールを足でどけて、コレットの父親が、懐から銃を取り出して、ピタリとヨハンに狙いを定めた。
「私から最後のチャンスをやる、逃げるチャンスをな、このろくでなし!下民どもに、私の大切な娘をやるものか!!いくらお前の剣裁きの速さでも、銃弾ははじけまい!!どうだ、逃げるなら今だぞ!ただし、フレデリク、貴様は殺すがな!!」
 そう言って、コレットの父親が、フレデリクの方をちらりと見やる。フレデリクは動けない。
「下民、下民・・・・・ってあんた、脳みそ腐ってるぜ!!人の価値は、生まれやそんなもんじゃ決まんねぇ!!中身で決まんだよ!!フレデリクの方が、そこでおねんねしてる、決闘のルールを破るようなエーミール青年より、よっぽどマシで決まってる男だぜ、お父さん!」
 そう言って、ヨハンネスが、銃をつきつける父親に向かって、剣を構えなおす。
「いいぜ、撃ってみな?俺は、仕事柄、そういうやつらには慣れっこでな!」
「なに?貴様、何者だ、ヨハンネスと名乗っていたが……」
「いいから、撃ってみろよ」
「……くそっ、まあいい、おだぶつだ、ヨハンネス青年!!」と言って、父親が連射して銃を放つ。
 コレットが思わず恐怖で目をつぶる。
 ヨハンネスは、カシオペア座の加護で、すばやく剣をアーチ状に薙ぎ払い、群青色のシールドをはった。そこで、銃弾がすべて綺麗な音を立ててはじかれた。
「なにぃ!?」と言って、父親が、慌てて弾を入れなおす。そのすきに、ヨハンネスが俊足で間合いをつめ、父親に駆け寄り、
「ゴッド・ハンド・スプラッシュ!!」と言って、肘鉄を顎にくらわせた。
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