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第四章 訪れた旅人

謎解きのヒント

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 第四章 訪れた旅人

「えっ、今日も旅人さんが?」と、ジゼルがシスターの一人から聞いた。
「そうなのよ、ジゼル。また、例のペンダントのなぞかけを知らないか、聞いてみる?」
「はい、シスターさん」
「そうよね、母君の形見だものね」
「お母さま……いつか、会えたらいいのに……」
 そういって暗い顔をするジゼルに、シスターたちは、顔を見合わせて、複雑そうな顔をした。
「ジゼル……」
「こんにちは、お嬢さん」
 と、司祭様に案内されて、一人の背の高い、成人している若者が、ジゼルに向かって手を振った。
「ジゼルちゃん、こちら、シェトランドという遠い国から来られたヒッチハイカー、まぁ、つまり、旅人の、コンラッドさんだ。君の失われた鎖ミッシング・リンクの、○の数に、ちょっと心当たりがあるそうだ……」



「俺、アストランよりだいぶ北にある国・シェトランドという国から来ました。俺が小さいころ、おふくろが歌ってくれた子守唄っつーか、国歌のようなものと、ちょっと似てて……」
「子守唄というか国歌、というのは、どういう意味かね?」と、司祭さま。
「昔は国歌として歌われていたものが、廃止になって、現在は子守唄として歌われている程度、というものなんです」と、青年は言った。
「聞いて下さい。

 汝の信じるもの
 人生は旅であれども
 げに失うことなかれ
 世の光となる
 我らが神
 ランスロットのお膝もとに」
 そう青年は歌い終わると、一同の反応を見た。
「ね?字の画数が、この失われた鎖ミッシング・リンクの○の数と同じでしょ?」
「なるほど……!」と、司祭様が言う。
「だったら……」と、ジゼル。
「その歌詞、もう一度教えて頂けますか?」と言って、ジゼルが紙を持ってきて、書きだした。
 そして、失われた鎖ミッシング・リンクの謎かけの数字の順番通り、読んでみると……
「タビニデヨ、となる……」と、シスターが言った。
「つまり、暗号の答えは、『「成人したら」、旅に出よ』ってこと……?」と、ジゼルが言う。
「うむ、その通りらしい」と、司祭様がうなる。「まさか、シェトランドの古い国歌のものだったとは……!!」
 その時、失われた鎖ミッシング・リンクが強い光を放ち、まばゆい光が天井までさした。
「な、なにごと……?」と、シスターたちが手で目を隠す。
 光は徐々に失われ、失われた鎖ミッシング・リンクは再び落ち着きを取り戻した。
「ジゼルちゃん、失われた鎖ミッシング・リンクに何か異常がないか、試してみよう」
「はい、司祭さま」
 そういって、ジゼルは、少し影になっているところへ行って、失われた鎖ミッシング・リンクのボタンを押した。
「司祭さま……!!」思わず、ジゼルは呟いた。
「暗号の中身が、微妙に変わっています!!」
「なんだって……?」と、司祭さまが駆け寄る。若者とシスターたちも加わる。




「こ、これは……!!」と、司祭様が言った。
「だが、○の数や構成は、変わってない……!シェトランドの子守歌は、また使えるようだ……!」
「あてはめてみます……!」と、ジゼル。
「ウミ……!」と、鉛筆で書いたジゼルが呟いた。
「目指すべき場所は、海、か……」と、司祭様が手を顎に当てて言う。
「君、えーっと、コンラッド君、非常に助かった。お礼を言う。今晩は、教会に泊まっていきなされ」
「ありがとうございます、司祭さま」
「ではね、ジゼルちゃん」と言って、若者は去って行った。
「ありがとうございました!」と、ジゼルがペコリとおじぎをする。
(どうしよう……早く、お兄ちゃんに、知らせなきゃ……!)
 その時、遠くから、いつものように、「ジ~~ゼ~~ル~~ちゅわ~~~ん」という声がした。
「お兄ちゃん!!」
「ヨハンネス君!!」と、司祭様。

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