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第一章 ジゼルとヨハン
ミッシング・リンクの謎かけ
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「お兄ちゃん、ちょうどできたところだから、一緒に食べよ!」
「おう、ありがとうな、ジゼル!」
「いただきまーす」と言って、二人は仲良くスプーンでカレーをすくった。
「おいしいな」と、ヨハンがお代わり、と言って微笑みながら言う。
「うん、おいしいね、お兄ちゃん」
兄妹二人、母と別離してから約10年、一緒に暮らし始めて5年。こうやって、二人は支えあって生きて来た。
この小さな小国の片隅で。
「ジゼル、今日は久しぶりにお兄ちゃんと一緒に寝ないか。今日は星が綺麗だな、ジゼルちゃん」
「いいよ、お兄ちゃん!」
二人は、4階にかけあがり、屋根裏部屋の窓から夜空を眺めた。綺麗な星がきらきらと瞬いている。
「あ、そうだ、お兄ちゃんの服、縫わなきゃ」
「明日でもいいのに」と、ヨハンがあぐらをかいて言う。
「いいの。今日やりたいの、お兄ちゃん」
そういって、星を眺めるヨハンの横で、ジゼルがヨハンのジャケットの穴を縫い始めた。
ヨハンはふいに、二人で何度も投影した、失われた鎖から映し出された謎の問いかけについて考え始めた。
「成人したら」と書かれた文字から始まる、意味不明な文字の羅列。
「斉唱せよ」とあるから、国歌や校歌、ゴスペル、正式な歌、いろいろと探ってはみた。しかし、答えはでなかった。
ヨハンネスの方は、早々と解くことを諦めてしまったのだが、ジゼルは、「大切なお母さまからのメッセージだ」と言って譲らず、毎日考え込んでいたし、教会によその地域から旅人が来るたび、謎に関する知識を知らないか、尋ねていた。
〇の縦の数や横の数などからも、文字が浮かび上がってこないか、考えたりした。しかし、答えはでなかった。
ヨハンは本を読みながら、ジゼルが袖のほつれを縫い終わるのを待っていた。
上の窓からは、夜空の星が輝いている。
「お兄ちゃん、できたわよ」と、ジゼルがにっこり笑って言った。
「おう、ありがとな、ジゼル」
「うん」
「そろそろ、寝るか、ジゼル。もう11時だ」
「そうね、お兄ちゃん」
*
俺の隣に、ジゼルちゃんがそっと寝間着を身にまとい、横になる。俺は、ジゼルとは違う方を向いて、ランプの明かりで読書をしていたのだが、ジゼルが俺の隣に来たことで、俺はため息をつき、読みかけの本にしおりをさし、近くのサイドテーブルに置いた。
「ジゼル……こうして寝るのも、久しぶりだ、な」と言って、俺はジゼルちゃんの前髪をいじり、そっとおでこをなでた。
ジゼルはといえば、くすくすと笑い、にっこりと微笑んでいる。ピンクの寝間着が、非常によく似合っている。
「お兄ちゃん、今日も危ない目にあったの?」と、ジゼルが健気に言うものだから、俺は、
「なにいってんの、ジゼルちゃん。俺は無敵のジゼルちゃん専属ヒーローって、昔から教えてるだろ。お兄ちゃんに不可能はいの。今日だって、そんなに怪我はしてねぇし……」
と言ったのだが、俺の強がりをジゼルちゃんは察したのか、
「お兄ちゃん、無理しちゃダメ。今日の怪我、もう少しで、打撲の域を超えてたよ!」
「分かった、わーーった」と言って、俺はジゼルちゃんを胸元に手繰り寄せた。ジゼルを抱きしめ、しばらくその体の温かみに触れて、俺は疲れが吹っ飛んでいく気がした。
「なんでもいいから、しばらくこのままでいさせて」と、俺がちょっと頬を赤くして言う。
ジゼルは、「うん」と頷くと、俺の体に身をうずめて、そのままじっと俺と抱き合っていた。
頼れる身寄りもいない。司祭様たちだけが、俺たちのことを心配してくれる。稼ぎがまともになって、この建物に住み始めたのも、ここ数年のこと。それまでは、司祭様たちの孤児院に、幼かったジゼルちゃんだけを預けて、俺一人、働きにでたりしていた。(自分から言ったことだ。司祭様たちは当然のごとく反対したが)
「おう、ありがとうな、ジゼル!」
「いただきまーす」と言って、二人は仲良くスプーンでカレーをすくった。
「おいしいな」と、ヨハンがお代わり、と言って微笑みながら言う。
「うん、おいしいね、お兄ちゃん」
兄妹二人、母と別離してから約10年、一緒に暮らし始めて5年。こうやって、二人は支えあって生きて来た。
この小さな小国の片隅で。
「ジゼル、今日は久しぶりにお兄ちゃんと一緒に寝ないか。今日は星が綺麗だな、ジゼルちゃん」
「いいよ、お兄ちゃん!」
二人は、4階にかけあがり、屋根裏部屋の窓から夜空を眺めた。綺麗な星がきらきらと瞬いている。
「あ、そうだ、お兄ちゃんの服、縫わなきゃ」
「明日でもいいのに」と、ヨハンがあぐらをかいて言う。
「いいの。今日やりたいの、お兄ちゃん」
そういって、星を眺めるヨハンの横で、ジゼルがヨハンのジャケットの穴を縫い始めた。
ヨハンはふいに、二人で何度も投影した、失われた鎖から映し出された謎の問いかけについて考え始めた。
「成人したら」と書かれた文字から始まる、意味不明な文字の羅列。
「斉唱せよ」とあるから、国歌や校歌、ゴスペル、正式な歌、いろいろと探ってはみた。しかし、答えはでなかった。
ヨハンネスの方は、早々と解くことを諦めてしまったのだが、ジゼルは、「大切なお母さまからのメッセージだ」と言って譲らず、毎日考え込んでいたし、教会によその地域から旅人が来るたび、謎に関する知識を知らないか、尋ねていた。
〇の縦の数や横の数などからも、文字が浮かび上がってこないか、考えたりした。しかし、答えはでなかった。
ヨハンは本を読みながら、ジゼルが袖のほつれを縫い終わるのを待っていた。
上の窓からは、夜空の星が輝いている。
「お兄ちゃん、できたわよ」と、ジゼルがにっこり笑って言った。
「おう、ありがとな、ジゼル」
「うん」
「そろそろ、寝るか、ジゼル。もう11時だ」
「そうね、お兄ちゃん」
*
俺の隣に、ジゼルちゃんがそっと寝間着を身にまとい、横になる。俺は、ジゼルとは違う方を向いて、ランプの明かりで読書をしていたのだが、ジゼルが俺の隣に来たことで、俺はため息をつき、読みかけの本にしおりをさし、近くのサイドテーブルに置いた。
「ジゼル……こうして寝るのも、久しぶりだ、な」と言って、俺はジゼルちゃんの前髪をいじり、そっとおでこをなでた。
ジゼルはといえば、くすくすと笑い、にっこりと微笑んでいる。ピンクの寝間着が、非常によく似合っている。
「お兄ちゃん、今日も危ない目にあったの?」と、ジゼルが健気に言うものだから、俺は、
「なにいってんの、ジゼルちゃん。俺は無敵のジゼルちゃん専属ヒーローって、昔から教えてるだろ。お兄ちゃんに不可能はいの。今日だって、そんなに怪我はしてねぇし……」
と言ったのだが、俺の強がりをジゼルちゃんは察したのか、
「お兄ちゃん、無理しちゃダメ。今日の怪我、もう少しで、打撲の域を超えてたよ!」
「分かった、わーーった」と言って、俺はジゼルちゃんを胸元に手繰り寄せた。ジゼルを抱きしめ、しばらくその体の温かみに触れて、俺は疲れが吹っ飛んでいく気がした。
「なんでもいいから、しばらくこのままでいさせて」と、俺がちょっと頬を赤くして言う。
ジゼルは、「うん」と頷くと、俺の体に身をうずめて、そのままじっと俺と抱き合っていた。
頼れる身寄りもいない。司祭様たちだけが、俺たちのことを心配してくれる。稼ぎがまともになって、この建物に住み始めたのも、ここ数年のこと。それまでは、司祭様たちの孤児院に、幼かったジゼルちゃんだけを預けて、俺一人、働きにでたりしていた。(自分から言ったことだ。司祭様たちは当然のごとく反対したが)
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