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現在:10年目の再会

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 涙が落ち着いたのは、どれだけ後だっただろうか。
 おばさんがお茶を入れてくれて、お昼は食べたかと聞いてくれた。気にしないでくださいと首を振ったが、一緒に食べましょうと微笑んでくれた。

 おばさんがお昼ご飯を作ってくれている間に、おじさんは俺に「綺麗なネックレスをしているね」と俺の首元を指さした。

 梓とお揃いの……ネックレス。
 外せなかった。今日で終るけど、今日で終るからこそ、一緒にこれを連れて逝きたかった。

「……ありがとうございます……」

 まさかこれが、元恋人とお揃いのネックレスだとは言えない。おじさんは、俺を優臣《息子》の恋人だと思っているのだから。

 なのに──。

「良かったよ……。キミがそのネックレスを外していなくて」

 耳を疑った。
 意味が分からなかった。

 たまらず眉を寄せてしまう俺に、おじさんはふふっと笑うと、

「いい子だね。井川くん」

 あり得ない名前を言って、俺に優しく笑ってくれたのだ。

「井川……?」

 思わず聞き返す俺に、おじさんは「あれ? 井川くんじゃなかったかな?」と天を仰いだ。そして、キッチンに居る奥さんに声を掛ける。

「豊子。梓くんの名前は、井川だったな?」
「そうよ」

 少し遠くの方で頷く声。
 待て待て……。梓……って。

「ど……っ、どうして梓のことを……」

 狼狽する俺に、おじさんは「まぁお茶でも飲みなさい」と俺に落ち着くように言い聞かせると、すべてを話してくれた──。


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