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幸せバレンタイン
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熱を出した。かれこれ三日前からだ。昨日と一昨日は無理して仕事へ行った。しかし、熱を出していることがオーナーにバレ、昨日途中で無理やり帰らされた。おまけに「インフルだったら承知しないぞ」と怒られた。
病人に酷いことを言うものだ。
けど、確かにインフルエンザだったとしたら、店内で伝染して全滅の危機に陥る。しかし、昨日の帰りに診察してもらったらインフルではなかった。不幸中の幸いか。
「はぁ……、寒い……節々が痛い。辛い、しんどい、死ぬ」
「大丈夫か? なんか食うか?」
ベッドの横にダイニングの椅子を持ってきて、ギターを弾いている恋人が僕の弱音に、心配そうに顔を覗いてくる。
「死ぬったら死ぬ」
「え? 汁? 何、味噌汁?」
「汁じゃない!!」
ボケをかましてくる亮介を恨めしく睨みあげ、だけどワインレッドのセーターをキュッとつまんだ。
「プリン……食べたい」
「分かった。買ってくるから待ってて」
「やだ、一緒に居て」
「……作れ、と?」
「ううん、美味しいの食べたいから買ってきて」
「俺のプリンが食えない、と?」
「ふふふ」
床に伏していても、亮介とじゃれ合えるのが嬉しい。
「今日、亮介お休みで良かった」
「そうだな。もっとも、ここ一週間ずっと篭ってるけど」
そう、亮介は篭っている。仕事に出掛けていないわけではない。だけど、出勤時間まで自室に篭もり、ちらっと仕事に出かけてからまた部屋に篭る。作曲活動をしているみたい。
寄りを戻してから、いつだったかな? 亮介の作曲作業を見てみたいと言ったことがある。そしたらすごく地味だぞって死んだ目で言われた。
今ならわかる。すごく地味だ。ものすごく地味。
「曲、仕上がりそう? 時間大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。気にすんな」
髪を撫でつけ、亮介はギターを立てかけ立ち上がった。
「プリン買ってきてやる。冷えピタもな」
「ごめん、いいよ。別に」
「ううん。俺の昼飯もついでに買ってくる」
そう言って、亮介は家を出て行った。
病人に酷いことを言うものだ。
けど、確かにインフルエンザだったとしたら、店内で伝染して全滅の危機に陥る。しかし、昨日の帰りに診察してもらったらインフルではなかった。不幸中の幸いか。
「はぁ……、寒い……節々が痛い。辛い、しんどい、死ぬ」
「大丈夫か? なんか食うか?」
ベッドの横にダイニングの椅子を持ってきて、ギターを弾いている恋人が僕の弱音に、心配そうに顔を覗いてくる。
「死ぬったら死ぬ」
「え? 汁? 何、味噌汁?」
「汁じゃない!!」
ボケをかましてくる亮介を恨めしく睨みあげ、だけどワインレッドのセーターをキュッとつまんだ。
「プリン……食べたい」
「分かった。買ってくるから待ってて」
「やだ、一緒に居て」
「……作れ、と?」
「ううん、美味しいの食べたいから買ってきて」
「俺のプリンが食えない、と?」
「ふふふ」
床に伏していても、亮介とじゃれ合えるのが嬉しい。
「今日、亮介お休みで良かった」
「そうだな。もっとも、ここ一週間ずっと篭ってるけど」
そう、亮介は篭っている。仕事に出掛けていないわけではない。だけど、出勤時間まで自室に篭もり、ちらっと仕事に出かけてからまた部屋に篭る。作曲活動をしているみたい。
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今ならわかる。すごく地味だ。ものすごく地味。
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髪を撫でつけ、亮介はギターを立てかけ立ち上がった。
「プリン買ってきてやる。冷えピタもな」
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「ううん。俺の昼飯もついでに買ってくる」
そう言って、亮介は家を出て行った。
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