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第八章
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「…………ッ、ああそうだよ。俺は前から祥のことが好きだった。でも、何で園山なんかに先に言われなくちゃならないんだ」
(え、えっ? ほんとに、俺のこと好きなの?)
目の前で何が起こっているのか、まだ頭で処理しきれていなかった。だが優梨の、嘘をついているとは思えない口ぶりに、それが事実なのだと教えられる。
それに、永緒は〝まだ気付かないの〟と言っていた。今までに気付くポイントはあったという事だろうか。
「永緒は、知ってたのか……?」
「そんなこと、俺が心の声聞こえなかったとしても、筑戸の態度見てれば分かる!」
「園山! お前もう黙ってろ」
二人がこんなに声を尖らせているのは初めて見たせいで、その勢いに圧倒されてしまう。
永緒も優梨も、普段は声を荒らげることはない。そんな二人が感情をぶつけ合っている事に、祥は未だ戸惑いを隠せずにいた。
「ゆ、優梨は俺のこと……」
「ああ、好きだ。お前らのこと邪魔したのだって、祥に対する独占欲でしかねーよ。お前、自分のこととなると本当に鈍いよな」
だから、永緒のことを自分から遠ざけようとしていたのだ。
そして優梨にやたらと構われるようになったのは、祥と永緒が付き合っていると気付いてからだろう。
「俺は中学の頃からずっと祥が好きだったんだ! それなのに、転校してきたばっかの奴に取られちまうなんて」
(中学の頃から!?)
そんなに前から想いを寄せられていたにも関わらず、祥は一切気付くことが出来なかった。そればかりか昨日の帰り道、あんなことを言ってしまった。
――俺分かんないんだ。何で優梨は友達として好きで、永緒は恋人として好きなのか。
その言葉は、どれほど優梨を傷付けてしまったのだろう。
それについて悩んでいたせいで、永緒にも心配をかけてしまった。
祥は、二人に迷惑をかけまいとして、逆に傷付けていたのだ。
さっき優梨に偉そうな事を言ってしまった自分が恥ずかしい
「ごめん二人とも……俺、最ッ低だ……っ」
祥は、まるで床に叩きつけるかのように吐き捨てた。
自分の情けなさに、治まりかけていた涙が再び溢れ出す。
そこへ永緒が、祥の身体を優しく抱きしめてくれた。
「そんなに自分を責めないで。祥は、ちょっと頑張りすぎたんだよ」
「でも、優梨も俺のせいで辛かっただろ……」
自分がもっと早く優梨の気持ちに気付いてあげられていたら、こんな事にはならなかったかもしれない。
「ま、お前が鈍いって事は前から知ってたから別にいいんだけど。それにお前、本気で園山のことが好きみたいだしな」
そう言って優梨は右頬をさする。
(え、えっ? ほんとに、俺のこと好きなの?)
目の前で何が起こっているのか、まだ頭で処理しきれていなかった。だが優梨の、嘘をついているとは思えない口ぶりに、それが事実なのだと教えられる。
それに、永緒は〝まだ気付かないの〟と言っていた。今までに気付くポイントはあったという事だろうか。
「永緒は、知ってたのか……?」
「そんなこと、俺が心の声聞こえなかったとしても、筑戸の態度見てれば分かる!」
「園山! お前もう黙ってろ」
二人がこんなに声を尖らせているのは初めて見たせいで、その勢いに圧倒されてしまう。
永緒も優梨も、普段は声を荒らげることはない。そんな二人が感情をぶつけ合っている事に、祥は未だ戸惑いを隠せずにいた。
「ゆ、優梨は俺のこと……」
「ああ、好きだ。お前らのこと邪魔したのだって、祥に対する独占欲でしかねーよ。お前、自分のこととなると本当に鈍いよな」
だから、永緒のことを自分から遠ざけようとしていたのだ。
そして優梨にやたらと構われるようになったのは、祥と永緒が付き合っていると気付いてからだろう。
「俺は中学の頃からずっと祥が好きだったんだ! それなのに、転校してきたばっかの奴に取られちまうなんて」
(中学の頃から!?)
そんなに前から想いを寄せられていたにも関わらず、祥は一切気付くことが出来なかった。そればかりか昨日の帰り道、あんなことを言ってしまった。
――俺分かんないんだ。何で優梨は友達として好きで、永緒は恋人として好きなのか。
その言葉は、どれほど優梨を傷付けてしまったのだろう。
それについて悩んでいたせいで、永緒にも心配をかけてしまった。
祥は、二人に迷惑をかけまいとして、逆に傷付けていたのだ。
さっき優梨に偉そうな事を言ってしまった自分が恥ずかしい
「ごめん二人とも……俺、最ッ低だ……っ」
祥は、まるで床に叩きつけるかのように吐き捨てた。
自分の情けなさに、治まりかけていた涙が再び溢れ出す。
そこへ永緒が、祥の身体を優しく抱きしめてくれた。
「そんなに自分を責めないで。祥は、ちょっと頑張りすぎたんだよ」
「でも、優梨も俺のせいで辛かっただろ……」
自分がもっと早く優梨の気持ちに気付いてあげられていたら、こんな事にはならなかったかもしれない。
「ま、お前が鈍いって事は前から知ってたから別にいいんだけど。それにお前、本気で園山のことが好きみたいだしな」
そう言って優梨は右頬をさする。
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