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第七章

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「ほら、俺クジ運強いって言っただろ」

「本当だ。すごいね、祥」


 二人は前後に並んで座っていた。窓際後方の席で、祥が前、永緒が後ろだ。席順はクジ引きで決まるのだが、祥の運の強さはこういった時に発揮されるといっても過言ではない。

 自分を信じてはいたが、いざこうして前後の席に座ると、安堵と嬉しさがこみ上げてくる。

 これでまた、しばらくは近くに永緒を感じていられる。


「祥、今日一緒に帰れないかな」

「あ、ごめん。今日も明日も部活なんだ」


 テストが終わったため、部活動も普段どおり再開される。それを伝えたら、永緒は少し残念そうな顔をした。


「そっか、部活忙しいもんね。わがまま言ってごめん」

「謝ることなんかねーし。明後日は一緒に帰れるから」

「お二人さん、ずいぶん仲良さそうじゃねーか」


 唐突に、二人の間に優梨が入ってきた。

 優梨は永緒を一瞥いちべつすると、祥に向き直る。


「優梨、お前席どこ?」

「祥の隣だよ。気付かなかったのか?」

「え、いや……うん」


 永緒の方ばかり見ていたため、隣に優梨が居ることに気が付かなかった。

 だがそんなことを言ったら失礼だと思ったので、口をつぐんでおく。


「ま、二人が仲良くなれたのも俺のお陰だけどな。祥、早くジュース奢れよ」

「そうだった。部活まで少し時間あるから、今行く?」

「おう、俺コーラな」

「はいはい。じゃあな永緒、また明日」


 永緒に手を振って、優梨と二人で自動販売機がある校舎の一階へと向かった。


 
「お前ら、本当に仲良くなったよな」


 優梨がコーラを飲みながら言う。


「うん。なんか悪いことでもあんの?」


 祥は緑茶のペットボトルに口をつけていた。


「いや何も。俺、園山の友達第二号になるつもりだから」

「お、マジで? 優しくしてやれよな」

「任しとけって」


 その言葉にほっと息をついた。友達が増えていけば、永緒の人見知りも直るだろう。


「じゃあ、早速明日は優梨も入れて三人で飯食おうぜ」

「ぅえ!? まあ、いいけど……」

「よっしゃ。あいつ人見知りだからさ、直してやりたいんだ」


 人と話すのが苦手だからと言っていつまでも逃げているわけにはいかない。しばらくヘッドホンが外せない以上、永緒が皆に好印象を持ってもらうには、そういった所から直していかなければ。


「祥は、なんで園山にそんなに優しくするんだ?」

「え?」

「いや、何でもない。今のは聞かなかったことにして」


 そう言って優梨は、そそくさと祥の元を去ってしまった。

 何で永緒に優しくするのか。それは永緒のことが好きだからに他ならない。

 優梨は、それを聞いてどうしたかったのだろう。


(優梨も、友達になりたいんだったら、少なくとも永緒のことは嫌いじゃないんだよな……)


 優梨の言葉の意図を計りかねて腕を組む。すると、自身が身につけていた腕時計が目に入った。


「やべ、もう行かなきゃ」


 準備の時間を考えると、そろそろここを出ないと間に合わない。

 祥は水泳部の部室へと急いだ。 

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