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第六章

6-2-7

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「あれ、結構心に刺さったというか……。俺、井瀬塚に嫌われてるのかもって思って……」

「それで学校来なかったのか?」

「うん……失恋なんかで学校休んで、自分でもバカだなって思ったけど、本当に、どうしたらいいか、分からなくて……」


 自分はそんな園山の所に押しかけてしまったのか、と少し後悔した。

 あの時祥がおこなったことは、園山の心の傷をえぐるようなことだったのだろうか。


「でも、急に井瀬塚がうちに来てびっくりしたよ。そのとき思ったんだ。これで最後にしようって」

「最後?」

「うん。井瀬塚に好かれてないなら、俺が好きだって思っていても迷惑になる。一回だけやって思いっきり嫌われれば、井瀬塚に話しかけられなくなるだろうし、俺も諦めがつくと思って。ごめん、怖かったよね」

(そうか、だからヤる時ヘッドホン外したのか)


 初めての体験をした祥は混乱し、痛くて苦しくて仕方なかった。そんな心の声を全て聞いていたら、園山だって平気ではないはずだ。自らを傷つけてまで祥と離れ、距離を置こうとしていたなんて。


「そういうのもう止めろよ。一番辛いの園山じゃんか……」

「でも、傷付くのは慣れたから」


 それでは駄目だ。慣れた、の一言で片付けてはいけない。自分は恋人なのだから、園山を傷つける全てのものから守りたい。

 祥にできることといえば、話を聞いてそばに居てあげること位しかないけれど。そんなことでも、役に立てるのなら――――


「その……な…永緒が、今まで耐えてきたこと、これからは俺と二人で分ければ、少しは気が楽になるんじゃねーの?」


 園山の名前を口にした時、体温が一段と上昇してしまったのが自分でも分かった。

 だがそれと同時に、背中から響くもう一つの鼓動が早くなったのを感じた。


「うん。ありがとう、祥」


 名前を呼ばれた瞬間、胸の奥から暖かいものが湧き上がってきた。それはじんわりと、全身を駆け巡っていく。

 友達だった園山が、今日からは恋人になる。

 永緒と、恋人になれる。

 顎を掬い上げられた祥は、自然と目を閉じていた。
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