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第二章

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 駅前には中央に噴水が設置された公園があって、地元の人の憩いの場になっている。祥はそこの入り口に、クレープを売るワゴン車を見つけた。


「あ、あそこのクレープ一回食べてみたかったんだよな」

「え、あそこ……?」


 園山の足が、ぴたりと止まる。


「どうした? もしかして甘いの嫌い?」

「いや、嫌いじゃないけど、あれ……」


 気乗りしない、といった様子で園山が視線を送る先からは、黄色い声が上がっている。

 ピンク色に塗装されたワゴン車の前に、女子高生が数人で列を成していたからだ。あの中に混ざるのは気が引けるのだろう。


「あそこに並ぶの?」

「うん」

「恥ずかしくない?」

「恥ずかしくなんかねーよ。好きなモン買うのに、何で恥ずかしがらなきゃいけないんだ――っ」

(あ、またやってしまったかもしれない……)

 
 祥は急いで自制するが、放ってしまった言葉はもう帰って来ない。 

 口が悪いのはどうしようもないが、せめてもっと優しく言うことはできないだろうか。

 せっかく良い感じになってきたのに、こんなことを言い続けていたら嫌われてしまうかもしれない。

 ひやひやしながら謝罪の言葉を考えていると、予想もしなかった結果が祥の元に訪れる。


「凄いな、井瀬塚は」

「そう、かな……?」

(なんか、また褒められた?)


 一体どこが凄いというのか、見当も付かない。だが、どうやら嫌われた訳ではないらしく、祥は胸をなで下ろした。
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