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巨人族の戦士
第231話 A中隊、ただちに散開
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マキュウェル軍の尖兵中隊を務めるのは、ハイハープ連隊A中隊、つまり重装甲騎兵中隊がマキュウェル軍から500m程度離れた前方に展開し、警戒の目を出していた。
遥か西方には、フキアエズ軍が同じ方向へ向け前進中であり、本来であれば緊張の糸が張りつめた第一線中隊の兵士達も、比較的長閑な雰囲気で前進中であった。
先頭で前進していた兵士は、収穫の終わった晩秋の麦畑を横目に、その美しさに見惚れていた。
それは、何の予告も無く始まった。
収穫の終わった麦畑一帯に展開していたオルコ共和国軍の小銃部隊が、横隊になって射撃線を構成し、一斉に襲いかかったのである。
それは、正確な射撃であった。
尖兵中隊の先頭をゆっくり進んでいた兵士の、装甲の無い顔面を目がけて放たれた弾丸は、眉間の中央を正確に貫いた。
その直ぐ後ろを前進していた騎兵は、突然目の前の兵士が馬からスローモーションのように転げ落ちる様を、不思議に感じながら、ドスンと重量感のある落馬音を聞いて、彼は直ちに後方の小隊長に異常を知らせようと振り返った瞬間、自身にも強烈な弾丸が頭部を貫いた。
「敵、敵襲!」
小隊長の掛け声に、よく訓練された騎兵たちは、一斉に散開を始めると、最後尾を進んでいた伝令が、素早く本隊に異常事態発生の報を知らせる。
「逓伝《ていでん》!、尖兵小隊の先頭が、襲撃を受けました!敵の状況、不明!」
A中隊長は、それまで喉かな雰囲気で前進していた隊列が、急速に異常事態に襲われている事を掌握したが、肝心の伝令からの情報が、全く何も伝えきれていない内容であることに苛立った。
「もうよい、私が行く」
「お待ちください中隊長、これは噂に聞く銃声というものです、それもかなり遠方からの、、、」
中隊長を宥《なだ》めていた、先任下士官が、それを言い終わるより早くに銃撃され、その場に倒れ込んだ。
「先任曹長!、、、おのれ、、、A中隊、ただちに散開、敵が見えた者は、速やかに中隊長へ報告!」
尖兵中隊の騎兵たちは、一斉に散開したが、敵の位置がどうしても解らない。
無理もない、このような小銃による遠距離からの狙撃などというものに、彼らは初遭遇なのだから。
しかし、それでもハイハープ連隊の隊員達は、遠くからとは言え、あのハイハープの戦いで、銃撃戦を経験していた。
そんな彼らであっても、この姿の見えない狙撃は初体験であり、それ故に、未だ緊張感に欠けていた。
「よし、こうなったら、中隊を横隊に編成し、一気に距離を詰める、中隊、横隊傘型陣形を取りつつ、前へ!」
この中隊長の判断は、一般的な尖兵中隊の行動としては良く出来た行動だっただろう。
しかし、この大量の狙撃手を前に、それも良く訓練された小銃手の前で、横隊に展開することは自殺行為に等しいものであった。
横隊傘型陣形を取った隊列の中央に中隊長が位置して指揮を執る。
それは、勇ましい姿でもあったが、、、、
「中隊長、本隊より伝令が来ています、速やかに後退し、陣形を再編成せよ!、とこ事です」
A中隊長としては、自身の取った行動に、全くの不備は無かった。
にも係らず、本隊から後退の命令が出た、、、それは即ち、判断ミスをしたと評価されたことを意味する。
それを聞いたA中隊長は激昂するのである。
「何と申したか、後退と?、馬鹿にしてくれるな、我が隊は未だ何もしておらぬぞ!、後退などという不名誉、受け入れられぬ。本隊とは連隊本部を指すのか?、怖気付いたか?」
伝令は、とても言いにくそうに激昂するA中隊長に続けて伝言を伝えた。
「いえ、連隊本部ではありません、軍師長からの直伝になります。
それを聞いたA中隊長は、益々激昂するのである。
「なんと、軍師長とな?、元連隊長ではないか、出世したらもう臆病風に吹かれたのか、連隊長らしくも、、、、」
A中隊長は、そう言い終わる前に、突然馬から落ちた、、、そして、少し遅れて銃声が麦畑にこだまするのである。
マキュウェル軍軍師長伝令は、その状況を見ると、その異常性に気付き、直ちに軍師長の元へ走った。
遥か西方には、フキアエズ軍が同じ方向へ向け前進中であり、本来であれば緊張の糸が張りつめた第一線中隊の兵士達も、比較的長閑な雰囲気で前進中であった。
先頭で前進していた兵士は、収穫の終わった晩秋の麦畑を横目に、その美しさに見惚れていた。
それは、何の予告も無く始まった。
収穫の終わった麦畑一帯に展開していたオルコ共和国軍の小銃部隊が、横隊になって射撃線を構成し、一斉に襲いかかったのである。
それは、正確な射撃であった。
尖兵中隊の先頭をゆっくり進んでいた兵士の、装甲の無い顔面を目がけて放たれた弾丸は、眉間の中央を正確に貫いた。
その直ぐ後ろを前進していた騎兵は、突然目の前の兵士が馬からスローモーションのように転げ落ちる様を、不思議に感じながら、ドスンと重量感のある落馬音を聞いて、彼は直ちに後方の小隊長に異常を知らせようと振り返った瞬間、自身にも強烈な弾丸が頭部を貫いた。
「敵、敵襲!」
小隊長の掛け声に、よく訓練された騎兵たちは、一斉に散開を始めると、最後尾を進んでいた伝令が、素早く本隊に異常事態発生の報を知らせる。
「逓伝《ていでん》!、尖兵小隊の先頭が、襲撃を受けました!敵の状況、不明!」
A中隊長は、それまで喉かな雰囲気で前進していた隊列が、急速に異常事態に襲われている事を掌握したが、肝心の伝令からの情報が、全く何も伝えきれていない内容であることに苛立った。
「もうよい、私が行く」
「お待ちください中隊長、これは噂に聞く銃声というものです、それもかなり遠方からの、、、」
中隊長を宥《なだ》めていた、先任下士官が、それを言い終わるより早くに銃撃され、その場に倒れ込んだ。
「先任曹長!、、、おのれ、、、A中隊、ただちに散開、敵が見えた者は、速やかに中隊長へ報告!」
尖兵中隊の騎兵たちは、一斉に散開したが、敵の位置がどうしても解らない。
無理もない、このような小銃による遠距離からの狙撃などというものに、彼らは初遭遇なのだから。
しかし、それでもハイハープ連隊の隊員達は、遠くからとは言え、あのハイハープの戦いで、銃撃戦を経験していた。
そんな彼らであっても、この姿の見えない狙撃は初体験であり、それ故に、未だ緊張感に欠けていた。
「よし、こうなったら、中隊を横隊に編成し、一気に距離を詰める、中隊、横隊傘型陣形を取りつつ、前へ!」
この中隊長の判断は、一般的な尖兵中隊の行動としては良く出来た行動だっただろう。
しかし、この大量の狙撃手を前に、それも良く訓練された小銃手の前で、横隊に展開することは自殺行為に等しいものであった。
横隊傘型陣形を取った隊列の中央に中隊長が位置して指揮を執る。
それは、勇ましい姿でもあったが、、、、
「中隊長、本隊より伝令が来ています、速やかに後退し、陣形を再編成せよ!、とこ事です」
A中隊長としては、自身の取った行動に、全くの不備は無かった。
にも係らず、本隊から後退の命令が出た、、、それは即ち、判断ミスをしたと評価されたことを意味する。
それを聞いたA中隊長は激昂するのである。
「何と申したか、後退と?、馬鹿にしてくれるな、我が隊は未だ何もしておらぬぞ!、後退などという不名誉、受け入れられぬ。本隊とは連隊本部を指すのか?、怖気付いたか?」
伝令は、とても言いにくそうに激昂するA中隊長に続けて伝言を伝えた。
「いえ、連隊本部ではありません、軍師長からの直伝になります。
それを聞いたA中隊長は、益々激昂するのである。
「なんと、軍師長とな?、元連隊長ではないか、出世したらもう臆病風に吹かれたのか、連隊長らしくも、、、、」
A中隊長は、そう言い終わる前に、突然馬から落ちた、、、そして、少し遅れて銃声が麦畑にこだまするのである。
マキュウェル軍軍師長伝令は、その状況を見ると、その異常性に気付き、直ちに軍師長の元へ走った。
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