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フキアエズ大会戦
第220話 オルコアの惨劇
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エレーナのマグネラ解放宣言から、4日目のことだった。
東進を開始したオルコ共和国軍は、その全勢力を挙げて前進し、帝都は物家の殻になっていた。
当然、駒を進める最初の一手は、エレーナ皇女軍による帝都奪還である。
それは、戦うべき軍も皆無の無血占領である。
そう、帝都奪還に時間をかけていられない、俺たちは帝都を速やかに掌握し、オルコ共和国軍の側背を突かねばならない。
そのために、早急な追撃戦の準備に追われた、、、追われたのだが、ここで大きな、そして凄惨な問題が発生したのである。
「、、、、これは、いくらなんでも、、、こんなことって、、。」
中世ヨーロッパや、古代の文明にはよくあることなんだろうか、俺はあまり、それを知らなかった。
このようなやり方が、あるのだという事、そして人間は、こうも残酷になれるのだという事を。
帝都に入ると、そこには異様な光景が広がっていた。
オルコ共和国軍が去った後、帝都は血の匂いで満ちていた。
そして、一番驚かされたのは、帝都中心にある、オルコアの広場に一列に並べられた丸太の杭だった。
それを見た玲子君は、一瞬青ざめ、そして直ぐに目を反らした。
それは人間として、当たり前の反応と言える。
俺は玲子君の元に駆け寄り、肩を抱いて背中を摩った。
「雄介様、、、人間とはここまで残忍になれるのでしょうか?、私には理解の限界を超えています」
『あいつらよ、キル・ザ・ドールの発想だわ、この行いは!」
シズもその光景に、嫌悪感と怒りで満ちていた。
、、、、、オルコアの広場には、巨人族の人質となっていた、女性や子供の焼死体が張付け状態のまま放置されていた。
太い丸太に縛られて、子供が生きたまま焼かれたのだ。
巨人族の子供は、サイズ的には人間の成人男性ほどあったため、最初は住民が虐殺されたのかと思われたが、それが巨人族の子供だと解るや、同行していた巨人族は一斉に雄叫びを挙げ始めた。
あの、マグネラ強襲の時のような勇ましい雄叫びではなく、悲しさと怒りの籠った、悲鳴のような、泣き声のような、なんとも言えないその叫び声は、いつまでもオルコアの広場に木霊し続けた。
「ユウスケ殿、、、、我々巨人族は、もはや怒れる獣の群れとなった。これまで行動を共にしてきたが、ここで独立的に行動したい。最後まで恩に報いることが出来ず、申し訳ない」
「おい、オル、、、ゼンガも!、この光景を見て、こちら側の人間は皆怒りに満ちている、単独行動なんてしないで、一緒に戦おう」
ゼンガは、黙ったまま俺の言葉への回答を避けているようだった。
そして、オルが重い口を開いた。
「ユウスケ殿、、、、実はな、あの焼死体の中に、ゼンガの妻と子供が含まれている、、、もう俺には奴を止めることは出来ない。友人として、奴に付いて行ってやりたい」
、、、、、、俺だけではない、、、その場に居た仲間たち全員が息を飲んだ。
身内が居たのだ。
彼らは、家族の解放のために俺たちと共闘していたはずだ。
それが、このような結果となってしまった。
人質が居るのだから、共闘すれば殺害の恐れもあった、しかし、まさかここまでやるとは、俺も思っていなかったのだ。
、、、キル・ザ・ドール、、俺は絶対に彼らを許さない、これは現世か異世界かの問題ではない、人の矜持の問題だ。
この世に、絶対悪など無いと考えていた俺が甘かったのだ。
絶対悪は、、、存在したのだ。
この時、ゼンガが一切涙を見せなかったことが、俺には忘れる事が出来ない。
本当に絶望した時、、、、泣けないものなのだと、俺は知ったのだ。
ゼンガは、変わり果てた妻子の亡骸の前に、いつまでも立ち尽くしていた。
東進を開始したオルコ共和国軍は、その全勢力を挙げて前進し、帝都は物家の殻になっていた。
当然、駒を進める最初の一手は、エレーナ皇女軍による帝都奪還である。
それは、戦うべき軍も皆無の無血占領である。
そう、帝都奪還に時間をかけていられない、俺たちは帝都を速やかに掌握し、オルコ共和国軍の側背を突かねばならない。
そのために、早急な追撃戦の準備に追われた、、、追われたのだが、ここで大きな、そして凄惨な問題が発生したのである。
「、、、、これは、いくらなんでも、、、こんなことって、、。」
中世ヨーロッパや、古代の文明にはよくあることなんだろうか、俺はあまり、それを知らなかった。
このようなやり方が、あるのだという事、そして人間は、こうも残酷になれるのだという事を。
帝都に入ると、そこには異様な光景が広がっていた。
オルコ共和国軍が去った後、帝都は血の匂いで満ちていた。
そして、一番驚かされたのは、帝都中心にある、オルコアの広場に一列に並べられた丸太の杭だった。
それを見た玲子君は、一瞬青ざめ、そして直ぐに目を反らした。
それは人間として、当たり前の反応と言える。
俺は玲子君の元に駆け寄り、肩を抱いて背中を摩った。
「雄介様、、、人間とはここまで残忍になれるのでしょうか?、私には理解の限界を超えています」
『あいつらよ、キル・ザ・ドールの発想だわ、この行いは!」
シズもその光景に、嫌悪感と怒りで満ちていた。
、、、、、オルコアの広場には、巨人族の人質となっていた、女性や子供の焼死体が張付け状態のまま放置されていた。
太い丸太に縛られて、子供が生きたまま焼かれたのだ。
巨人族の子供は、サイズ的には人間の成人男性ほどあったため、最初は住民が虐殺されたのかと思われたが、それが巨人族の子供だと解るや、同行していた巨人族は一斉に雄叫びを挙げ始めた。
あの、マグネラ強襲の時のような勇ましい雄叫びではなく、悲しさと怒りの籠った、悲鳴のような、泣き声のような、なんとも言えないその叫び声は、いつまでもオルコアの広場に木霊し続けた。
「ユウスケ殿、、、、我々巨人族は、もはや怒れる獣の群れとなった。これまで行動を共にしてきたが、ここで独立的に行動したい。最後まで恩に報いることが出来ず、申し訳ない」
「おい、オル、、、ゼンガも!、この光景を見て、こちら側の人間は皆怒りに満ちている、単独行動なんてしないで、一緒に戦おう」
ゼンガは、黙ったまま俺の言葉への回答を避けているようだった。
そして、オルが重い口を開いた。
「ユウスケ殿、、、、実はな、あの焼死体の中に、ゼンガの妻と子供が含まれている、、、もう俺には奴を止めることは出来ない。友人として、奴に付いて行ってやりたい」
、、、、、、俺だけではない、、、その場に居た仲間たち全員が息を飲んだ。
身内が居たのだ。
彼らは、家族の解放のために俺たちと共闘していたはずだ。
それが、このような結果となってしまった。
人質が居るのだから、共闘すれば殺害の恐れもあった、しかし、まさかここまでやるとは、俺も思っていなかったのだ。
、、、キル・ザ・ドール、、俺は絶対に彼らを許さない、これは現世か異世界かの問題ではない、人の矜持の問題だ。
この世に、絶対悪など無いと考えていた俺が甘かったのだ。
絶対悪は、、、存在したのだ。
この時、ゼンガが一切涙を見せなかったことが、俺には忘れる事が出来ない。
本当に絶望した時、、、、泣けないものなのだと、俺は知ったのだ。
ゼンガは、変わり果てた妻子の亡骸の前に、いつまでも立ち尽くしていた。
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絵:本崎塔也
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