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マグネラ攻防戦
第207話 意識が戻らない
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朝を迎えた。
メルガが目覚めたら、 誰よりも早く声をかけようとエレーナは一晩中メルガの元を離れ ようとはしなかった。
ウクルキもまた、彼女の眼ざめを今や遅しと待っていたが、メルガは目覚める気配がしない。
「玲子君、 どう思う?」
「そうですね、一晩をこの様態が維持できていたのであれば、私の主観では治療成功と考えてほぼ間違いないのですが、意識が戻らないのは珍しいケースですね、再生部位が大きいので副作用も大きいのかもしれませんが、、、、」
そうか、治療は成功したのか。
まずは喜ばしいところではあるが、この原因不明の昏睡状態をクリアしなければ、結局なんの解決にもならない、これは困った、、。
『シズ、メルガの様態をスキャン出来るか?」
『ええ、ずっとしているんですが、 メルガさん、治療は完全に成功しています、、、、昏睡状態の原因が、どうも分らないんですよね」
いや、それが一番怖いだろ、方法が無いってことじゃん、昨日の状況よりも、かえって困難な状況だろ、これ。
すると、思いつめたような表情で、ウクルキが俺の所にやってきた。
「ユウスケ殿、今、シズ殿と話していたな、内容は解らないが、会話の痕跡はこちらにも 伝わってきた。メルガは今、どんな状況なんだ?、助かるのか?」
俺は、その回答を迷った。
治っている、と答えれば、 安心はするだろうが、昏睡状態が続いたのでは、昨晩と何も変化していないのと同義だ、そんなことを告げる事は、あまりにも酷だ。
「もう少し、俺たちに任せて貰えないか、今現在の状況を、上手に説明するのが難しいんだ」
ウクルキは、再び暗雲とした表情となったが、 「自分に何かできる事はないだろうか」とつぶやくものの、 何か出来る訳もなかった。
『いえ、待ってくださいGF、 もしかしたら、 過去の症例から、遡ることが出来るかもしれませんよ。これ、 多分、過去に症例がありますよ」
『本当ですか、シズ殿、ならば、 それはどのような?」
おい、ウクルキ、 もう会話に入れるのか?こいつ、要領がいいんだな、俺だってもう少しかかったぞ。
「SIZ、私から説明します、いいですね、雄介様?」
「玲子君は、この状況に何か覚えがあるのか?」
「今、少し調べてみました。 これでも私、医者ですので」
ああ、忘れていたけど、 彼女は19歳にして、 未来では陸軍軍医なんだよな、考えてみればご専門だよ。
「ミスズ殿、教えてほしい、 メルガの置かれた状況を」
玲子君が言うには、メルガはエレーナを守ったという意識から、自分は絶対に助からな い、という思い込みによってバイアスが掛かった状態なんだそうだ。
一見すると、単純な思い込みなのだが、実はこれを解除するのは専門の心理士でも相当に困難な技なんだそうだ。
それは、人間の心理に深く入ることになるためと、人間の思い込みを解除するのは具体 的な方法というのが、実は無いらしい。
例えば、夢の中で、これは夢だと意識して気付くことが困難なように、夢見ている本人からすれば、それは現実と何も変わらない、と思い込んでいるのと似ている。
まあ、未来の治療によって生き延びる事は出来てはいるが、本来であれば、確実に死んでいる状態だから、身体がそう信号を出していのかもしれないしな。
「ミスズ殿、、、、、 それであれば、私がメルガの所に直接行くのはどうだろうか?」
ん? それはどういう意味だ?、 ウクルキが直接って、メルガの中に入ることはできない だろう、そんなシズじゃあるまいし、、、、、ん?、 あれ?、。
「なるほど、これは愛の力かもしれませんね、ウクルキさんも、よく思いつきましたよ、これは」
「しかし、、、それって、大丈夫なのか?」
「私もそれは思い付きませんでした、そうですね、ウクルキさんが直接であれば、、、」
「いや、玲子君、それをするには、メルガに体内ディバイスを入れないと、ってことだよな、大丈夫か?」
「大丈夫かどうかは、雄介様が一番良くお解りになるのでは?」
ああ、そうか、そうだな。
今、俺の知り得る許容量では、ウクルキの時と同じで、許容量を超える気配がない。
メルガも、ウクルキ同様に、異世界の技術を悪用するような人物ではないしな。
まったくお似合いだよ、君たちは。
俺は、ウクルキにそれらを伝えると、是非、自分にそれをやらせてほしいと懇願してきた。
俺たちが行くより、ウクルキが直接行く他に、打開策も無いからな。
「ウクルキ、 それじゃあ行くぞ」
俺たちは、メルガに入れた体内ディバイスの意識とともに、全員でシズの部屋に入った。
メルガが目覚めたら、 誰よりも早く声をかけようとエレーナは一晩中メルガの元を離れ ようとはしなかった。
ウクルキもまた、彼女の眼ざめを今や遅しと待っていたが、メルガは目覚める気配がしない。
「玲子君、 どう思う?」
「そうですね、一晩をこの様態が維持できていたのであれば、私の主観では治療成功と考えてほぼ間違いないのですが、意識が戻らないのは珍しいケースですね、再生部位が大きいので副作用も大きいのかもしれませんが、、、、」
そうか、治療は成功したのか。
まずは喜ばしいところではあるが、この原因不明の昏睡状態をクリアしなければ、結局なんの解決にもならない、これは困った、、。
『シズ、メルガの様態をスキャン出来るか?」
『ええ、ずっとしているんですが、 メルガさん、治療は完全に成功しています、、、、昏睡状態の原因が、どうも分らないんですよね」
いや、それが一番怖いだろ、方法が無いってことじゃん、昨日の状況よりも、かえって困難な状況だろ、これ。
すると、思いつめたような表情で、ウクルキが俺の所にやってきた。
「ユウスケ殿、今、シズ殿と話していたな、内容は解らないが、会話の痕跡はこちらにも 伝わってきた。メルガは今、どんな状況なんだ?、助かるのか?」
俺は、その回答を迷った。
治っている、と答えれば、 安心はするだろうが、昏睡状態が続いたのでは、昨晩と何も変化していないのと同義だ、そんなことを告げる事は、あまりにも酷だ。
「もう少し、俺たちに任せて貰えないか、今現在の状況を、上手に説明するのが難しいんだ」
ウクルキは、再び暗雲とした表情となったが、 「自分に何かできる事はないだろうか」とつぶやくものの、 何か出来る訳もなかった。
『いえ、待ってくださいGF、 もしかしたら、 過去の症例から、遡ることが出来るかもしれませんよ。これ、 多分、過去に症例がありますよ」
『本当ですか、シズ殿、ならば、 それはどのような?」
おい、ウクルキ、 もう会話に入れるのか?こいつ、要領がいいんだな、俺だってもう少しかかったぞ。
「SIZ、私から説明します、いいですね、雄介様?」
「玲子君は、この状況に何か覚えがあるのか?」
「今、少し調べてみました。 これでも私、医者ですので」
ああ、忘れていたけど、 彼女は19歳にして、 未来では陸軍軍医なんだよな、考えてみればご専門だよ。
「ミスズ殿、教えてほしい、 メルガの置かれた状況を」
玲子君が言うには、メルガはエレーナを守ったという意識から、自分は絶対に助からな い、という思い込みによってバイアスが掛かった状態なんだそうだ。
一見すると、単純な思い込みなのだが、実はこれを解除するのは専門の心理士でも相当に困難な技なんだそうだ。
それは、人間の心理に深く入ることになるためと、人間の思い込みを解除するのは具体 的な方法というのが、実は無いらしい。
例えば、夢の中で、これは夢だと意識して気付くことが困難なように、夢見ている本人からすれば、それは現実と何も変わらない、と思い込んでいるのと似ている。
まあ、未来の治療によって生き延びる事は出来てはいるが、本来であれば、確実に死んでいる状態だから、身体がそう信号を出していのかもしれないしな。
「ミスズ殿、、、、、 それであれば、私がメルガの所に直接行くのはどうだろうか?」
ん? それはどういう意味だ?、 ウクルキが直接って、メルガの中に入ることはできない だろう、そんなシズじゃあるまいし、、、、、ん?、 あれ?、。
「なるほど、これは愛の力かもしれませんね、ウクルキさんも、よく思いつきましたよ、これは」
「しかし、、、それって、大丈夫なのか?」
「私もそれは思い付きませんでした、そうですね、ウクルキさんが直接であれば、、、」
「いや、玲子君、それをするには、メルガに体内ディバイスを入れないと、ってことだよな、大丈夫か?」
「大丈夫かどうかは、雄介様が一番良くお解りになるのでは?」
ああ、そうか、そうだな。
今、俺の知り得る許容量では、ウクルキの時と同じで、許容量を超える気配がない。
メルガも、ウクルキ同様に、異世界の技術を悪用するような人物ではないしな。
まったくお似合いだよ、君たちは。
俺は、ウクルキにそれらを伝えると、是非、自分にそれをやらせてほしいと懇願してきた。
俺たちが行くより、ウクルキが直接行く他に、打開策も無いからな。
「ウクルキ、 それじゃあ行くぞ」
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