上 下
151 / 290
帝国の激震

第149話 真っ向からの勝負

しおりを挟む
「ベナル、エガ、ノアンカ、カシラビ、ちょといいか?」

 俺は男性陣の一部を呼び寄せた。
 今の俺の気持ちを聞いてもらいたいという事と、今後の作戦についての情報を得たいと考えていたからだ。

「非常識なのは十分に解っている、だが、聞いてほしい、俺はこの状況を打開したいと考えている」

 最初俺は、全員に呆れられると思っていたのだが、それは意外にも、全員、待っていたかのように、笑顔だっった。

「ユウスケなら、きっとそう言うと思っていたよ」
「噂じゃ、かなりのやり手と聞いていますからね」
「ユウスケじゃなければ、こんな状況、どうにもならんですぜ、俺は何でも協力するんでな」

 実は皆、俺に何かを期待していたようだった、それはロームボルド准将だけではなかったのだ。

「俺はこの国の人間ではない、時間は少ないが情報がほしい、このメンバーなら必要な情報が集まると思う、5分でいい、作戦会議の時間をくれないか?」

 俺は、前にシズが作ってくれた、周辺国を含んだ勢力図を取り出し、オルコ帝国、ドットス王国、フキアエズ王国、更に北のエフライム公国、その上に位置するタリル街道までが入った地図の上で会議を始めた。

「結論から言えば、オルコ反乱勢力に対して、真っ向から勝負を挑みたい」

「まあ、ユウスケらしい発想だな、そんな予感はしていたが、、、」

 半ば、呆れ顔のベナルが、俺を諭すようにそうは言うが、それでいて、何か期待感のようなものを感じた。

「オルコの総兵力と、周辺国の兵力差を教えてほしいのだが」

「オルコ軍の総兵力は約85万、ドットス軍が24万、フキアエズ王国は、、、、」

「申し訳ないが10万程度の弱小軍隊だ」

「二国を足しても34万人、、、か」

「単純に足した話ではだめだ、国境警備に使用している兵力は割くことが出来ない、無人化すれば、隣国軍だけではなく匪賊まで攻めてくるからな。純粋に攻撃に充てられる兵力は実際もっと少ないぞ」

 ベナルの言う事はもっともだ、しかし、それは同時にオルコも同じ事が言える、そこに何か勝機があるのでは、と思える。

「北のエフライム公国って、どうなんだ?」

「エフライムは軍事強国だからな、45万規模の勢力が控えている」

「ずいぶん多いな、何でそんなに多いんだ?」

 これは地政学上の話になるらしいのだが、実はオルコ帝国とエフライム公国の更に北側には、タリル街道と呼ばれる騎馬民族の通り道があって、広大なタリル公国が通行権をもっている、現世で言うところのシルクロードがそれに近い。
 このタリル街道を使って、周辺国は常に侵略の恐怖に怯える状態が数千年単位で続いているのだそうだ。
 これは、ジンギス ハン率いるモンゴル軍が、その周辺国家を平定してゆく状況に少し似ている。
 この脅威に対して、国境を堅く守らなければならないため、兵力自体はタリル街道に接していない国家とそうでない国家には差が生じるのだとか。
 エフライムとオルコは、一応タリル公国の関係国としているため、全面戦争には発展しないが、タリル公国は政変が非常に多く、君主が変わる度に方針が180度変わるので、油断出来ないとのことだった。

「タリル公国を味方に付けることは出来ないのだろうか?」

「それは考えない方がいい、オルコ帝国より、何倍も厄介で話の通じない国家だ、それが出来たら周辺国は苦労していないしね」

 エガが、諭すように発言する、まあ、エガの言う通りだ、そんな簡単な話ではないわな。

「エガは、北のエフライムとは交流はないのか?」

「もちろんあるよ、国境を接しているしね。ただ、こちらは穀倉地帯で、あっちは工業国だから、根本的にイコールのつきあいとは言えないし、今話があった通り、あちらは軍事大国なんだ、鉄鉱石も採れるから尚更だ」

 なるほど、鉄鉱石ね。
 、、、、これは一つの解決法になるかもしれないな。
 でも、これだけじゃ全く足りない、もっと根本的なインパクトが必要だ。

「カシラビ、いつかハイハープ峡谷で出会った君の友人、、、えーと、ほら、オルコ軍の」
 
「ああ、ローハンな」

「そう、ローハン、彼と連絡って出来るのか?」

「まあ、俺が個人的にってんなら、まあ出来なくはないけど、なんだ?」

「ああ、オルコの状況を確認したいんだ、それとオル、君たちの仲間に、オルコ領内の巨人は居るのか?」

「ああ、居ることはいるが、オルコ軍には荷担していない。本来であれば、俺たち巨人族は公平平等が信条だが、今回の件は、さすがに俺たちも頭に来ている、国境を問わず、協力させてほしい」

 これは願ってもない、助かる。
 そして、この巨人族の申し出は、別の所で非常に役に立った。

「ユウスケ、巨人族の申し出はすごいぞ、俺たちハイハープの民は、昔から巨人族恐れていた、、、本人たちを前に言いにくいのだが、かつては人身御供《ひとみごくう》の習慣があったほどだ」

 人身御供、、、、ああ、、、ええっ、そうなの?、オル達巨人族は、人間喰うのか?

「それは大昔の話だ、今は人は喰わない、そんなに美味しくない」


 、、、、何で味知ってるんだよ。

 まあ、人間関係というか、上下関係と言うか、何となく理解は出来たけど、とりあえず材料は揃ったな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...