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第十七章 決戦前夜
決戦前夜 第三節
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窓から遠方の地平線に沈み始める夕日を望めるエイダーン皇帝の書斎。皇帝暗殺事件の現場であったその部屋でレクスは呆然と立ち、既に殆ど片付けられた周りの本棚や机、そして床を眺めていた。
「やはりここにいたのね」
レクスが振り返ると、入口にラナが立っていた。
「ラナ…ちゃん」
レクスの傍に立つラナ。
「さっき母上から暗殺当時の話を聞いたらね。ここに来るだとは思ったわ」
「はは、まあね。でもそれはラナちゃんも同じでしょ」
「そうね」
二人はともに部屋の周りを見渡した。
「暗殺当時、父上はここでルーネウスの親善団、つまりロムネス殿たちと会話をしていたそうね」
「僕達二人の親は、一緒にこの部屋で命を亡くしたことになるんだよね。…いやな偶然もあるもんだよ」
「ほんとね、この偶然が女神様の運命の一環であるのなら、女神の巫女である私も流石に引くわ」
「マジ勘弁だよねぇ~」
苦笑するラナとレクスは、少し互いの距離を詰めて立つ。
「もし泣きたいなら泣きなさい。他に誰もいないし、この時ぐらい泣いてもバチは当たらないわ。そうでしょ?」
「はは、言うねラナちゃん。…僕だけでなく、ラナちゃんも好きなだけ泣いてもいいからね」
「…ええ、そうするわ」
二人は相手の意図を察したように手を握り合っては、互いの肩に寄り添った。かつてヌトの残骸にいた時のように心をさらけ出して、目に涙を浮びながらお互いの父への思いで心を満たしていく。
(お父様…)(父さん…)
暫くの黙祷が続いた。
「…ねえ、レンくんは本当に大丈夫なの?」
「どういうこと?」
「ロムネス殿とは喧嘩したままでしょ?彼と和解できなかったこと、気にしてたじゃない」
「ああ、うん。そうだよね、まったく気にしないといえば確かに嘘になるよ」
レクスは小さく苦笑すると、軽く溜息を吐いた。
「でもまあ、今となってはどうでもいいよ。亡くなった人とはもう会えないし、父さんが僕のことをどう思ってたのかも知ることができたんだ。寧ろラッキーと言えるぐらいさ」
ヒルダが教えたロムネスの言葉が再びレクスの胸をくすぶり、ラナを握る手に軽く力が入った。
「それにさ、キースさんの受け売りなんだけど、『単にそうなってしまった』ことにこれ以上気にしても仕方ないからね」
「『くそったれな世界なら、くそったれのように一生懸命生きるのも悪くない』、だったわよね。さすがキースさん、良いこというわね」
「そりゃそうだけど、巫女様がクソクソ言うのはどうかと思うんだけどねぇ~」
「どうせ他に人もいないからどうでも良いわよ。クソレンくん」
「あはは、そりゃそうだ」
お互いまるでじゃれあうように笑い合った。一緒に遊んだ子供の頃のように。
「不思議なもんだよねえ、異世界の人の言葉がウィルくんを介してこうして僕達に響いてくるのって」
「そうね。エリーちゃんがウィルくんと恋仲になるのもそうだけど、不思議な縁もあるもんだわ」
ウィルフレッドとエリネの話に、レクスが軽く顔をしかめる。
「…ミーナ殿とはああ言ってたけど、ラナちゃんは助かると思う?ウィルくんのこと」
ラナの返答に迷いはなかった。
「助かるか助からないかは関係ないわ。どんなことあっても、私達は最後までウィルくんの治療を諦めない。そうでしょ」
実にラナらしい答えに、レクスも一笑する。
「そうだね。ラナちゃんの言うとおりだ」
ふと、閉めていた書斎のドアが叩かれ、アランの声が響いた。
「ラナ様、よろしいですか?」
「ええ。入って頂戴」
アランが書斎に入ると、ラナとレクスは既にいつもの感じで離れて立っていた。
「失礼します。明日のパーティーについてラナ様とヒルダ陛下でもう少し細かい打ち合わせがしたいと、担当からお願いがありまして」
「ああ、そういえばあったわね。面倒くさいパーティ」
頭を抑えてため息するラナにレクスとアランが苦笑する。
「母上にも言ったけど、軍の編成に忙しい時にパーティだなんて呑気なことしてる場合じゃないのに」
「まあまあラナ様、明日一晩だけの短いパーティだし、諸侯達の士気にも関わるものだからしょうがないさ」
「ふぅ…仕方ないわね、例の逆三角対策の用意時間も必要だし。レクス殿、打ち合わせの手伝い一緒にしてくれる?」
「もちろんっ」
書斎を出るラナを追おうとするレクスは、とても温かみに満ちた笑顔で自分を見るアランに気付く。
「どうしたのアラン殿?」
「いえ、ただレクス殿がラナ様の傍にいて本当に良かったと思っただけです」
意味ありげの言葉に困惑の苦笑を見せるレクス。
「アラン殿いきなりどうしたんだい、そんなこと言って」
「貴方のお陰で私達はこうして無事帝都を取り戻したことの礼を述べたかっただけですよ」
やはり温かい笑顔を崩さないアランにレクスは頭を掻く。
「そう?まあそういうことにしとくよ。それより早いとこ行こう、でないとまたラナ様に叱られるからね」
「仰るとおりです」
「ラナ様待って~」
慌てて既に廊下の先まで歩いてるラナに追いつくレクス。肩を並べて話しながら歩く二人の背中を見るアランは、確信したような頷きをした。
(実にこれほどにない人選ですね。マティ殿と同僚にもなれそうですし、私の肩の荷も少しは軽くなるものです)
そう思いながら、アランも二人の後についていった。
******
重金属を含んだ黒い雲がいつものように地球の月を隠したある夜。全身埃だらけのギルバートは、ある企業が作った半生体サイバー兵器群の残骸に囲まれ、変異ヤモリを焼いてる焚き火に当てながら、同じ小汚い小隊員たちと他愛の無い雑談をしていた。
「見てくださいギル隊長、今日の僕、スコアを15以上も稼ぎましたよっ」
「はっ、新入りの癖になにイキってやがるマックス。ていうか、ひよっこの癖に前に出すぎんだよ、そんなんだといつか早死にするぞてめえ」
「いいじゃないかエメリコ。今回の防衛対象はマックスの故郷だったからな。こんな時代で故郷に思い入れを持てる奴がいるとは、寧ろ褒めて良いと私は思うな」
「エッカルトの言うとおりね。ただエメリコの言葉ももっともよ。いいマックス、小隊とは協力し合ってこそ真の家族になれる。これからの戦場で家族と一緒に生き残りたいなら英雄気取りは控えるべきよ」
「は、はい、すみません。ヘッレの姉貴…」
「堅苦しい説教はここまでにしな」
ギルバートはオイルが混じったコーヒーを持ち上げ、他の人達も傷だらけのステンレス杯をあげる。
「いまは今日も生き延びたことを素直に喜ぼうじゃないか、レッドランス傭兵隊のクソ野郎ども。家族に乾杯だ!」
「「「家族に乾杯!」」」
地平線の戦火の明かりと遠くで響く爆発音の中で、ギルバート達は杯を交わした。
――――――
夜の闇が鮮血のような夕焼けの残り火を飲み込む、ある日の夕方。
「―――はぁっ、はぁっ、はぁっ!」
傷だらけのギルバートはライフルを担ぎながら、荒野の小さな岩群にある中型の指揮用可変装甲車のドアを乱暴に開けては中に入った。
「てめぇらっ!」
「うわっ!な、なんだ!?」「あんたは…レッドランス隊の…」
車内でインターフェイスを操作していた数名のセメンテリオシティ連合所属のオペレーターと、ギルバートと同じ雇われのオペレーターが驚愕する。
「第三前線のオペレートをしていたクソ野郎はどいつだ!?てめえかっ!?」
「うあっ!」
鬼気迫る形相のギルバートに襟をつかまれるオペレーターが慌てて他のオペレーターを指差す。
「わ、私じゃなくてそっちのぐあっ!」
乱暴に突き放されて椅子から転ぶオペレーターに目をくれず、ギルバートは第三前線担当の首を容赦なく掴んでは問い詰める。
「あぐっ!な、なんなんだ君…っ」
「てめぇ…っ、なぜこっちに接近してきた敵部隊のことを教えなかった!?」
喉が掴まれて返答できないオペレーターの代わりに、他のオペレーターが淡々と答えた。
「さきほどの敵増援部隊の件でしたら、あれは予想外要因による突発事件です」
「なに…?」
「サテライトとリンクしてたモニタリング装置が誤作動して、彼担当の地域に暫くノイズが走ってました。装置はすぐに復旧しましたが、それで敵増援部隊の接近の感知が遅れてしまったんです」
苦しむオペレーターの喉を掴み続けるギルバート。
「だったらなぜその時点でこっちに増援を送ってこなかった!?その近くには他の小隊もいたんだろうが!」
「問題ありません。貴方の小隊をそのまま囮にしたことで、予想外要因による誤差は修正されたのですから」
「なんだってぇ…っ?」
血がおびただしく流れるギルバートの顔がひきつる。
「12人議会の指示は完ぺきです。あの状況をそのまま利用し、敵増援部隊が貴方の小隊を襲う間、他の小隊は敵本隊の完全包囲を果たし、増援部隊に対応するための機械歩兵再編成も間に合いました。貴方の小隊は無事目標を果たしたのです。契約どおり報酬は支払うのでご心配なく――」
「金の問題じゃねぇっ!」
「ぐあぁっ!?」
ギルバートはオペレーターを掴む手にさらに力を入れた。
「てめえら…!ようは俺の小隊を犠牲にしたってのか…っ?」
「やめときな」
雇われのオペレーターがインターフェースを操作し続けながらギルバートを止めた。
「傭兵なら自分がそういう役割になることもあるのを最初から知ってるだろ?私も含めて、みな大きな戦況を微調整するための駒、消耗品だ。あんたはこの道に結構長いように見えるが、それぐらいの覚悟なしで傭兵やってる訳でもないだろう?」
「…っ」
「けほっ!」
ギルバートの手が緩み、オペレーターが解放される。血に濡れたその震えた手で、ギルバートは懐から四つのドッグタグを取り出した。
「…くそっ、エメリコ、ヘッレ、エッカルト、マックス…っ」
まるで黙祷するかのようにそれを手にしたギルバート。その傍で先ほど喉を掴まれていたオペレータが突如床に倒れて痙攣を始めた。
「あ、あああぁぁぁぁ…っ!」
「なんだ…?」
もう一人の連合オペレータが慌ても急ぎもせずに同僚の様子を確認した。
「精神ノイズによる精神不調ですね。先ほどの重い話が原因でしょう」
「なに…」
その一言にピクリとするギルバート。
「おい」
外部オペレーターの呼び止めも気に留めず、ギルバートはお構いなし連合オペレーター達の前に立った。
「重いってそりゃどういう意味だ…っ」
同僚を確認すると同時に腕のパネルを操作する連合オペレーターの口調は非常に機械的だった。
「私達は至福の楽園に定期的に接続することで健全な精神と肉体を維持できますが、先ほどのような不協和で重い話だと、それを乱すノイズとなります」
何名かの連合オペレーターがいきなり陶酔した顔でうわ言のように囁いた。
「うふふ…仕事が終わったら、またあの美しい海岸で遊べる…」
「ああ、ミルクに海鮮、ステーキ…あの美味、早く家族と一緒にまた味わいたいな…」
「ふへ…リサ、ビスチェ、サチコ、また一緒に…」
至福の楽園使用者特有のトランス症状だ。
「傭兵、この場から退去してください。報酬に疑問があるなら然るべき窓口にご連絡を。これ以上重いノイズがあると作業に支障が出ますので」
「てめぇ…っ」
「おいっ!」
血にまみれたギルバートの体がわなわなと震える。今まで味わったことのない怒りだった。雇い主に無情に切り捨てられる、それだけならまだいい。あの外部オペレーターが言ったように、そんなことは地球では茶飯茶飯事だし、消耗品として蔑まれることもなかった訳ではない。だが、今彼らが自分達に向けてるそれはベクトルが違った。
「…ふざけるな…ふざけるな貴様ら…っ、俺の家族をなんだと思ってやがるっ!」
「うああぁっ!?」
ギルバートがオペレーターの頭をテーブルにぶつけ、ライフルの銃口をそのこめかみに押し当てた。
「止めろあんた!あいつらはそういう調整されてるっ、何を言ってもぐふっ!」
ギルバートを止めようとする外部オペレーターが彼に蹴飛ばされる。
「エメリコはああ見えて面倒見がよかった!ヘッレは修理屋になれる素質もあった!エッカルトは頭が良いし、マックスはまだ若くて可能性があった…っ!誰もが俺の大事な家族だ!それが重いだと…っ!?やつらの死を重いと抜かすのか!?」
「うああっ!や、やめてくれ!わ、私は今日まだ至福の楽園にアクセスして――」
「だったら今送ってやらあっ!本当の楽園になあっ!」
「ぐぅっ、やめるんだあんた…っ」
苦悶していた外部オペレーターが立ち上がって止めようとするが、全て遅かった。
「らぁああぁぁぁぁっ!!!」
ライフルの銃声が、ギルバートの絶叫とともに響き渡り、装甲車の中は真っ赤に染められた。
どこからともなく飛来したドローンが彼をスタンガンで気絶させた。
――――――
「――がはっ!?」
ハッといきなり意識を取り戻したギルバート。体を動こうとするが、その全身が拘束台みたいなものに斜めで拘束されており、裸の上半身含めて多くの計測用ケーブルが繋がっていて身動きが取れなかった。
「ぐっ…」
周りを見回そうとするが、頭も体同様拘束されており、何かヘルメットにも似た機器を被されている。
「くそっ…なんなんだこれは…って、なんだありゃ…」
ギルバートはようやく自分がいる空間を認識する。天井、壁や床全てが真っ白な巨大な空間の中で、数多くのサーバらしき機器がコココと処理音を鳴らし、作業用ドローンやオートメーションシステムがせわしない機械音とともに作動している。目の前には大きな容器らしきものがあり、無数に並ばれてる覗き窓をチラリと見ると…。
「…ありゃ…脳、か…?」
そう、人間の脳だ。無数の脳が容器の中で並ばれており、これまた無数のケーブル等が脳を並列させるように繋がっていた。
『――死刑囚No.D85121号。スムージングデバイス適性テストスタンバイ』
「なっ…」
部屋と同じぐらい真っ白なモニタドローンがギルバートの前に飛来し、無機質な報告を発する。
「てめぇら、いったい何のつもり――」
『テストスタート』
ギルバートの怒声が絶叫に変わり、絶叫は二進法的な電子音へと変換していく。視界がブラックアウトし、全ての感覚が剥離していく――
(うっ、あっ、な、なんだ…?)
意識だけになったギルバートは感知した。旧世紀の海岸に建てられた豪邸であらゆる美味に囲まれた人。緑の木々や花々に囲まれながら家族と団欒を楽しむ人。旧世紀の都会にある超高級ホテルのスウィートホテルで、無数の異性をへばらせ、その全員が自分に愛していると囁く人。その誰もが満ち足りた顔を見せ、全ての人が目の前の幸福を享受する平和な楽園の光景。――至福の楽園。
(ぐあっ!)
ギルバートの意識がいきなり強く揺さぶられる。それはメイドが運んだ美味がいきなり腐った光景。団欒していた家族と邪険に喧嘩してしまう光景。へばらせていた女性達にナイフで滅多刺しされる光景。
だが彼の意識の向こう側にある楽園に変わりはない。心を満たす平穏の中で、彼らはこの全てを与えるシステムから囁かれる。
『この食事と平和を永遠にするためにも』『これからもがんばってね、あなた』『私達の楽園のために』
『テスト完了。ノイズ受容適性95%、合格。素子ナンバリング、UD758641。パーツ摘出作業開始』
(があああぁぁぁっ!)
強烈な痛みがギルバートの頭と背中を襲う。意識だけ残っても、いま自分の体を刃物が切り込んでいるのがはっきりと分かる。
『――作業緊急停止。12人議会からのダイレクト指示。死刑囚を面会室へ』
痛みが突如消えると、ギルバートは再び意識を失った。
――――――
セメンテリオシティ連合のエルドレドシティにある、真っ白の隔離部屋。応急処置がなされ、半ばあの世へ半分足を踏み込んでいたギルバートがぐったりとにへたり込んでいた。
「ぐ…う…」
ゆっくりと目を開くギルバート、周りを確認しようとする途端、彼の目の前にある壁に一人の影像が映りだされた。
「ひどい有様だな。ギル」
部屋の一面のその人物を見て、衰弱しているギルバートが思わず驚愕する。
「…お前…ミハイルか…っ?」
それは、数年前にともに行動していたミハイル・アッカーソンだった。
「ぐう…あんた…なんでここに…」
「運がよかったのだ。私は結構前からお前の行方を捜していたが、いざ見つかったらまさかここに運ばれてたとはな。さっそく議会にコンタクトを取ったが、あと数秒も遅ければお前は至福の楽園の悪夢脳波処理システムのパーツの一つになっていただろう」
ギルバートは何とか息を整えると、ミハイルの顔を見上げた。
「そうかよ…てかお前、よくここの議会とコンタクトできたな…?」
「私は選択できる力を手に入れたのだからな」
「なに?」
「私はいま『組織』というところにいる。企業とかそういうとは比べ物にならない真に力のあるところだ」
「『組織』…」
ギルバートはだるそうに顔を仰いだ。
「そういやあんた言ってたな、世界の高みへ上り詰めるのがあんたの『人生の価値』だって。なるほどここの引き篭もり野郎を通して面会ができるってんなら、確かに相当の力をもった場所に違いなさそうだ」
「それも覚えているのなら、探した甲斐があったというものだ」
「…はっ、相変わらずだな。んで、そんなお前が何故俺を探しに来たんだ?」
「あんたには私と一緒に『組織』に来てもらいたい」
ギルバートは即答した。
「やなこった」
「ギル」
「うるせぇ!あの腐った平和ボケ野郎どもを皆殺しにする前にどこに行く気もねえんだよっ!あの自分の糞を他人に撒き散らすクソ楽園も含めてなっ!それともなんだ、その『組織』ってところに行けば、ここの奴らを殺す手伝いをしてくれんのか?」
「それは無理な相談だ」
「だったら俺をこのままここに置いとくんだなっ!ついでに、俺が一歩でもここを出れば、目当たり次第にここの奴らを殺すってここの連中に伝えやがれ!」
「…それがあんたの『人生の価値』なのか?」
「ああそうさっ!」
ギリリと握る拳に血が滲むギルバート。
「あいつらは俺の大事な家族だ…っ、それをよりにもよって重いと抜かしやがって…っ!」
暫く、微弱な空調の音だけが聞こえるように二人は黙した。
「…捻くれたところといい、家族思いのことも含めてやはり変わってはないな」
ギルバートは答えずにそっぽ向く。
「さっきあんたが言ってた私の人生の価値だが、一つ抜けてるぞギル」
「なんだ?」
「私は、お前と二人で世界の高みを掴む。あの時そう言ってただろう。たとえお互いの目的のために暫く離れても、この世では俺達二人だけが真の家族だ。違うか?」
かつてミハイルと生き抜いた日々が思い浮かぶギルバート。
「『組織』に入れば、君が再び新しい家族を得るチャンスも出てくる。そのために私もできる限りの協力をしよう。復讐で命を費やすのもいいが、あんたはそれだけの男じゃないのは、私が一番良く知っている」
ギルバートはミハイルを見据えたままだんまりする。
「まだ時間はある、気が変わったらここの奴らに声をかけてくれ」
そう言って、ミハイルのホログラムが消えていった。暫く前を見つめたままのギルバートは、やがて天井を仰ぎ、小さく笑い出した。
「へっ、相変わらずお節介な野郎だな」
景色が歪んでいき、ギルバートの意識は再び夢のまどろみに包まれる。おぼろげに、サラ、キース、アオトとミハイルの姿が、曖昧な意識の向こうで見えた。それは間も無くして炎に包まれ、灰となって消え、ウィルフレッドの姿だけが残ったような気がした。
******
「ギルバート様?どうかされましたか?」
「…ん?なんでもねえ、少し白昼夢って奴を見ただけさ」
「ふふ、それって夢を見るぐらいギルバート様は満足しているってことよねっ?」
「ははは、言うじゃねえか」
教団の神殿の自室のベッドで、抱き寄せていたアネッタ、ルニと濃厚なキスを交わすと、ギルバートはベッドの天蓋を仰いだ。
「…ルニ、あんたはどんな経緯でこんなところにいるようになったんだ?」
「私ですか?」
若く可愛らしいルニは、少し呆れた顔してギルバートの胸にあるアスティル・クリスタルを指で無造作に撫でた。
「別に何かある訳じゃないですよ。私は貧しい村の出身だったんですけど、家の食い扶持を稼ぐために大きい町に働きにいったんです。でも私、仕事が下手でなにをやっても上手くいかなくて、仕方なく行った娼館での仕事だけが凄く受けがよかったの。あの娼館の得意先の一つがまさか教団とは知らなかったけど。故郷は魔獣の襲撃を受けてもういないし、生きるためには仕方ないかって感じだけなんです」
「そうか…アネッタ、あんたは?」
ギルバートの傍に身を起こしていた大人びた女性は、隣のテーブルからワイングラスを彼に渡して語った。その美しい顔に愁いの帯びた苦笑を浮かべながら。
「私は単に男に騙されただけの愚かな女に過ぎません、ギルバート様。それなりに裕福な家の出身で、世事に疎い私はある男に言い寄らせて、周りの何も見えなくて家財を盗んで彼と駆け落ちしたんです。その結果は言うまでもなく、男はただの詐欺師で、私は簡単に切り捨てられました。いまさら家に戻ることもできず、裕福な生活に慣れて普通の仕事にも馴染まない私は娼館に身を費やすことになって…。今となってはスティーナ様の愛を信じる気にもなりませんから、教団相手に商売するのは丁度良いかも知れませんね」
クスクスと自嘲ながらも魅力に溢れた笑みを見せるアネッタ。
「なるほどねえ…」
二人の髪を暫く撫でると、ギルバートがいきなり立ち上がった。
「きゃっ?」
「ギルバート様?」
「二人とも服を着れ、あと手に持てる私物だけ簡単に纏めてついてこい」
――――――
「うわああぁ…すご~~~いっ!めっちゃ高い!めっちゃ早い!それに凄く綺麗~!」
|魔人化したギルバートに抱えられながらルニは、遥か上空から見下ろす広大な大地の景色を見てはしゃぐ。
「ほんとっ、山より高いところから世界を見下ろせるなんて…まるで竜になったみたいです…っ」
「ははっ、二人ともはしゃぐのはいいがあまり動くなよ。落ちてしまうからなっ」
空のフライトを暫く楽しむ三人は、やがてある町の外れの森に着地した。
「ギルバート様…?」
すでに魔人化を解いて元の姿に戻ったギルバートを見て、二人はこれがただの散歩ではないことに気付く。
「ほらよ」
ルニとアネッタにそれぞれ一つの袋を投げるギルバート。二人が中を覗くと、目もくらむほどの大量の金貨が入っていた。
「わ、わぁっ、凄い!でも、ギルバート様…?」
「これっていったいどういう…」
「ザナエルの旦那がどうしてもって押し付けてきた奴だ。それをもって好きなところに行きな。そんだけありゃ暫く生活には困らんだろう」
「そんな、ギルバート様っ」
「私達を貴方の傍から追い出すつもりなのですか…?」
腕を組んで一笑するギルバート。
「ちげえよ。神殿はこれからの決戦でやばくなるし、戦いで他人の面倒を見るつもりはねえからな。あんたらも、巻き添えくらって逝くのは御免だろう?」
「ギルバート様…」
「まっ、邪神なんたらが復活したらあまり意味無いかもしれないが、それまで好きに生きることができるんだ。いままで一杯サービスしてくれたチップだと思えばいい。実際最高だったからな、あんたらは」
ルニとアネッタが互いを見る。
「じゃあな。もう会うことはねえが、残りの人生、せいぜい楽しめよ」
「まってください!」
振り返って離れようとする彼を、ルニが呼び止めた。
「あん?」
「私…いいんです。それでもギルバート様についていきたい…」
ギルバートの顔から表情が消えた。それでもルニは続いた。
「だって私…私、ギルバート様のことっあぐぅっ!?」
「ルニっ!」
ルニの喉がギルバートに強く掴まれ、その小さな体が持ち上げられる。
「なんだぁルニ…?あんた、結局は平和ボケした連中と同じってのか…?」
「ちがっ、わ、私は、ただ、ギ、ギルバートさ、ま、を…」
「…ギルバート様」
落ち着いた口調で、アネッタが彼に呼びかけた。
「ああっ?あんたもくだらねえこと――」
「足りませんよ」
「なに?」
先ほど渡された金貨の袋を見せるアネッタ。
「今までのサービスや、暫く一人で生活することを考えましたら、これだけでは私にもルニにも足りません。もう少し払ってもらわないと困ります」
「ア、アネッタっ?」
ギルバートは暫くアネッタとにらみ合い、やがて愉快そうに笑い出し、ルニを解放した。
「…くく、あはははは!そうかそうか!そうこなくっちゃな!」
「かはっ!けほけほ!」
彼は懐からさらに一つの袋を取り出し、それをアネッタに投げた。
「この前気まぐれに拾った宝石だ。あんたとルニで仲良く分けな。これで足りるか?」
袋の中身を確認し、アネッタが業務的な笑顔を見せた。
「ええ、問題ありません。今までご愛顧ありがとうございます、ギルバート様。またご機会ありましたら、ぜひまたご指名してください」
「気が向いたらな」
ギルバートは背を向けて手を振るうと、赤い電光とともに魔人になっては一瞬にして空高く飛び、その場を離れた。
「ギルバート様…」
ゆっくりと立ち上がるルニは、アネッタとともに赤い光が見えなくなるまで見つめた。
「大丈夫、ルニ?」
「う、うん…。でも良かったのアネッタ?貴方だってギルバート様のこと――」
ルニの言葉が止まった。アネッタの頬に一滴の涙が流れていたのだから。
「これでいいのですよ。これで…」
「アネッタ…」
アネッタは先ほどギルバートから渡された袋から半分くらいの金貨と宝石をもう一つの袋に入れ、残りをルニに渡した。
「はい、これはあなたの分よ。…これでお別れだけど、私みたいに悪い人に騙されないようにね」
渡された袋を暫く見て、やがてそれを強く握っては、涙を拭いて頷くルニ。
「…アネッタも、またどこかで会ったらよろしくね」
「ええ、また会えたらね」
二人はお互い抱きしめあった。同じ人に侍ってきた彼女達だけの絆を確認するように。
「…でも、せめて町に行くまでは一緒でいい?」
「勿論よ。ほら、行きましょう」
最後にギルバートが飛んでいった方向を二人で向いてから、アネッタとルニは町へと歩き出した。
【続く】
「やはりここにいたのね」
レクスが振り返ると、入口にラナが立っていた。
「ラナ…ちゃん」
レクスの傍に立つラナ。
「さっき母上から暗殺当時の話を聞いたらね。ここに来るだとは思ったわ」
「はは、まあね。でもそれはラナちゃんも同じでしょ」
「そうね」
二人はともに部屋の周りを見渡した。
「暗殺当時、父上はここでルーネウスの親善団、つまりロムネス殿たちと会話をしていたそうね」
「僕達二人の親は、一緒にこの部屋で命を亡くしたことになるんだよね。…いやな偶然もあるもんだよ」
「ほんとね、この偶然が女神様の運命の一環であるのなら、女神の巫女である私も流石に引くわ」
「マジ勘弁だよねぇ~」
苦笑するラナとレクスは、少し互いの距離を詰めて立つ。
「もし泣きたいなら泣きなさい。他に誰もいないし、この時ぐらい泣いてもバチは当たらないわ。そうでしょ?」
「はは、言うねラナちゃん。…僕だけでなく、ラナちゃんも好きなだけ泣いてもいいからね」
「…ええ、そうするわ」
二人は相手の意図を察したように手を握り合っては、互いの肩に寄り添った。かつてヌトの残骸にいた時のように心をさらけ出して、目に涙を浮びながらお互いの父への思いで心を満たしていく。
(お父様…)(父さん…)
暫くの黙祷が続いた。
「…ねえ、レンくんは本当に大丈夫なの?」
「どういうこと?」
「ロムネス殿とは喧嘩したままでしょ?彼と和解できなかったこと、気にしてたじゃない」
「ああ、うん。そうだよね、まったく気にしないといえば確かに嘘になるよ」
レクスは小さく苦笑すると、軽く溜息を吐いた。
「でもまあ、今となってはどうでもいいよ。亡くなった人とはもう会えないし、父さんが僕のことをどう思ってたのかも知ることができたんだ。寧ろラッキーと言えるぐらいさ」
ヒルダが教えたロムネスの言葉が再びレクスの胸をくすぶり、ラナを握る手に軽く力が入った。
「それにさ、キースさんの受け売りなんだけど、『単にそうなってしまった』ことにこれ以上気にしても仕方ないからね」
「『くそったれな世界なら、くそったれのように一生懸命生きるのも悪くない』、だったわよね。さすがキースさん、良いこというわね」
「そりゃそうだけど、巫女様がクソクソ言うのはどうかと思うんだけどねぇ~」
「どうせ他に人もいないからどうでも良いわよ。クソレンくん」
「あはは、そりゃそうだ」
お互いまるでじゃれあうように笑い合った。一緒に遊んだ子供の頃のように。
「不思議なもんだよねえ、異世界の人の言葉がウィルくんを介してこうして僕達に響いてくるのって」
「そうね。エリーちゃんがウィルくんと恋仲になるのもそうだけど、不思議な縁もあるもんだわ」
ウィルフレッドとエリネの話に、レクスが軽く顔をしかめる。
「…ミーナ殿とはああ言ってたけど、ラナちゃんは助かると思う?ウィルくんのこと」
ラナの返答に迷いはなかった。
「助かるか助からないかは関係ないわ。どんなことあっても、私達は最後までウィルくんの治療を諦めない。そうでしょ」
実にラナらしい答えに、レクスも一笑する。
「そうだね。ラナちゃんの言うとおりだ」
ふと、閉めていた書斎のドアが叩かれ、アランの声が響いた。
「ラナ様、よろしいですか?」
「ええ。入って頂戴」
アランが書斎に入ると、ラナとレクスは既にいつもの感じで離れて立っていた。
「失礼します。明日のパーティーについてラナ様とヒルダ陛下でもう少し細かい打ち合わせがしたいと、担当からお願いがありまして」
「ああ、そういえばあったわね。面倒くさいパーティ」
頭を抑えてため息するラナにレクスとアランが苦笑する。
「母上にも言ったけど、軍の編成に忙しい時にパーティだなんて呑気なことしてる場合じゃないのに」
「まあまあラナ様、明日一晩だけの短いパーティだし、諸侯達の士気にも関わるものだからしょうがないさ」
「ふぅ…仕方ないわね、例の逆三角対策の用意時間も必要だし。レクス殿、打ち合わせの手伝い一緒にしてくれる?」
「もちろんっ」
書斎を出るラナを追おうとするレクスは、とても温かみに満ちた笑顔で自分を見るアランに気付く。
「どうしたのアラン殿?」
「いえ、ただレクス殿がラナ様の傍にいて本当に良かったと思っただけです」
意味ありげの言葉に困惑の苦笑を見せるレクス。
「アラン殿いきなりどうしたんだい、そんなこと言って」
「貴方のお陰で私達はこうして無事帝都を取り戻したことの礼を述べたかっただけですよ」
やはり温かい笑顔を崩さないアランにレクスは頭を掻く。
「そう?まあそういうことにしとくよ。それより早いとこ行こう、でないとまたラナ様に叱られるからね」
「仰るとおりです」
「ラナ様待って~」
慌てて既に廊下の先まで歩いてるラナに追いつくレクス。肩を並べて話しながら歩く二人の背中を見るアランは、確信したような頷きをした。
(実にこれほどにない人選ですね。マティ殿と同僚にもなれそうですし、私の肩の荷も少しは軽くなるものです)
そう思いながら、アランも二人の後についていった。
******
重金属を含んだ黒い雲がいつものように地球の月を隠したある夜。全身埃だらけのギルバートは、ある企業が作った半生体サイバー兵器群の残骸に囲まれ、変異ヤモリを焼いてる焚き火に当てながら、同じ小汚い小隊員たちと他愛の無い雑談をしていた。
「見てくださいギル隊長、今日の僕、スコアを15以上も稼ぎましたよっ」
「はっ、新入りの癖になにイキってやがるマックス。ていうか、ひよっこの癖に前に出すぎんだよ、そんなんだといつか早死にするぞてめえ」
「いいじゃないかエメリコ。今回の防衛対象はマックスの故郷だったからな。こんな時代で故郷に思い入れを持てる奴がいるとは、寧ろ褒めて良いと私は思うな」
「エッカルトの言うとおりね。ただエメリコの言葉ももっともよ。いいマックス、小隊とは協力し合ってこそ真の家族になれる。これからの戦場で家族と一緒に生き残りたいなら英雄気取りは控えるべきよ」
「は、はい、すみません。ヘッレの姉貴…」
「堅苦しい説教はここまでにしな」
ギルバートはオイルが混じったコーヒーを持ち上げ、他の人達も傷だらけのステンレス杯をあげる。
「いまは今日も生き延びたことを素直に喜ぼうじゃないか、レッドランス傭兵隊のクソ野郎ども。家族に乾杯だ!」
「「「家族に乾杯!」」」
地平線の戦火の明かりと遠くで響く爆発音の中で、ギルバート達は杯を交わした。
――――――
夜の闇が鮮血のような夕焼けの残り火を飲み込む、ある日の夕方。
「―――はぁっ、はぁっ、はぁっ!」
傷だらけのギルバートはライフルを担ぎながら、荒野の小さな岩群にある中型の指揮用可変装甲車のドアを乱暴に開けては中に入った。
「てめぇらっ!」
「うわっ!な、なんだ!?」「あんたは…レッドランス隊の…」
車内でインターフェイスを操作していた数名のセメンテリオシティ連合所属のオペレーターと、ギルバートと同じ雇われのオペレーターが驚愕する。
「第三前線のオペレートをしていたクソ野郎はどいつだ!?てめえかっ!?」
「うあっ!」
鬼気迫る形相のギルバートに襟をつかまれるオペレーターが慌てて他のオペレーターを指差す。
「わ、私じゃなくてそっちのぐあっ!」
乱暴に突き放されて椅子から転ぶオペレーターに目をくれず、ギルバートは第三前線担当の首を容赦なく掴んでは問い詰める。
「あぐっ!な、なんなんだ君…っ」
「てめぇ…っ、なぜこっちに接近してきた敵部隊のことを教えなかった!?」
喉が掴まれて返答できないオペレーターの代わりに、他のオペレーターが淡々と答えた。
「さきほどの敵増援部隊の件でしたら、あれは予想外要因による突発事件です」
「なに…?」
「サテライトとリンクしてたモニタリング装置が誤作動して、彼担当の地域に暫くノイズが走ってました。装置はすぐに復旧しましたが、それで敵増援部隊の接近の感知が遅れてしまったんです」
苦しむオペレーターの喉を掴み続けるギルバート。
「だったらなぜその時点でこっちに増援を送ってこなかった!?その近くには他の小隊もいたんだろうが!」
「問題ありません。貴方の小隊をそのまま囮にしたことで、予想外要因による誤差は修正されたのですから」
「なんだってぇ…っ?」
血がおびただしく流れるギルバートの顔がひきつる。
「12人議会の指示は完ぺきです。あの状況をそのまま利用し、敵増援部隊が貴方の小隊を襲う間、他の小隊は敵本隊の完全包囲を果たし、増援部隊に対応するための機械歩兵再編成も間に合いました。貴方の小隊は無事目標を果たしたのです。契約どおり報酬は支払うのでご心配なく――」
「金の問題じゃねぇっ!」
「ぐあぁっ!?」
ギルバートはオペレーターを掴む手にさらに力を入れた。
「てめえら…!ようは俺の小隊を犠牲にしたってのか…っ?」
「やめときな」
雇われのオペレーターがインターフェースを操作し続けながらギルバートを止めた。
「傭兵なら自分がそういう役割になることもあるのを最初から知ってるだろ?私も含めて、みな大きな戦況を微調整するための駒、消耗品だ。あんたはこの道に結構長いように見えるが、それぐらいの覚悟なしで傭兵やってる訳でもないだろう?」
「…っ」
「けほっ!」
ギルバートの手が緩み、オペレーターが解放される。血に濡れたその震えた手で、ギルバートは懐から四つのドッグタグを取り出した。
「…くそっ、エメリコ、ヘッレ、エッカルト、マックス…っ」
まるで黙祷するかのようにそれを手にしたギルバート。その傍で先ほど喉を掴まれていたオペレータが突如床に倒れて痙攣を始めた。
「あ、あああぁぁぁぁ…っ!」
「なんだ…?」
もう一人の連合オペレータが慌ても急ぎもせずに同僚の様子を確認した。
「精神ノイズによる精神不調ですね。先ほどの重い話が原因でしょう」
「なに…」
その一言にピクリとするギルバート。
「おい」
外部オペレーターの呼び止めも気に留めず、ギルバートはお構いなし連合オペレーター達の前に立った。
「重いってそりゃどういう意味だ…っ」
同僚を確認すると同時に腕のパネルを操作する連合オペレーターの口調は非常に機械的だった。
「私達は至福の楽園に定期的に接続することで健全な精神と肉体を維持できますが、先ほどのような不協和で重い話だと、それを乱すノイズとなります」
何名かの連合オペレーターがいきなり陶酔した顔でうわ言のように囁いた。
「うふふ…仕事が終わったら、またあの美しい海岸で遊べる…」
「ああ、ミルクに海鮮、ステーキ…あの美味、早く家族と一緒にまた味わいたいな…」
「ふへ…リサ、ビスチェ、サチコ、また一緒に…」
至福の楽園使用者特有のトランス症状だ。
「傭兵、この場から退去してください。報酬に疑問があるなら然るべき窓口にご連絡を。これ以上重いノイズがあると作業に支障が出ますので」
「てめぇ…っ」
「おいっ!」
血にまみれたギルバートの体がわなわなと震える。今まで味わったことのない怒りだった。雇い主に無情に切り捨てられる、それだけならまだいい。あの外部オペレーターが言ったように、そんなことは地球では茶飯茶飯事だし、消耗品として蔑まれることもなかった訳ではない。だが、今彼らが自分達に向けてるそれはベクトルが違った。
「…ふざけるな…ふざけるな貴様ら…っ、俺の家族をなんだと思ってやがるっ!」
「うああぁっ!?」
ギルバートがオペレーターの頭をテーブルにぶつけ、ライフルの銃口をそのこめかみに押し当てた。
「止めろあんた!あいつらはそういう調整されてるっ、何を言ってもぐふっ!」
ギルバートを止めようとする外部オペレーターが彼に蹴飛ばされる。
「エメリコはああ見えて面倒見がよかった!ヘッレは修理屋になれる素質もあった!エッカルトは頭が良いし、マックスはまだ若くて可能性があった…っ!誰もが俺の大事な家族だ!それが重いだと…っ!?やつらの死を重いと抜かすのか!?」
「うああっ!や、やめてくれ!わ、私は今日まだ至福の楽園にアクセスして――」
「だったら今送ってやらあっ!本当の楽園になあっ!」
「ぐぅっ、やめるんだあんた…っ」
苦悶していた外部オペレーターが立ち上がって止めようとするが、全て遅かった。
「らぁああぁぁぁぁっ!!!」
ライフルの銃声が、ギルバートの絶叫とともに響き渡り、装甲車の中は真っ赤に染められた。
どこからともなく飛来したドローンが彼をスタンガンで気絶させた。
――――――
「――がはっ!?」
ハッといきなり意識を取り戻したギルバート。体を動こうとするが、その全身が拘束台みたいなものに斜めで拘束されており、裸の上半身含めて多くの計測用ケーブルが繋がっていて身動きが取れなかった。
「ぐっ…」
周りを見回そうとするが、頭も体同様拘束されており、何かヘルメットにも似た機器を被されている。
「くそっ…なんなんだこれは…って、なんだありゃ…」
ギルバートはようやく自分がいる空間を認識する。天井、壁や床全てが真っ白な巨大な空間の中で、数多くのサーバらしき機器がコココと処理音を鳴らし、作業用ドローンやオートメーションシステムがせわしない機械音とともに作動している。目の前には大きな容器らしきものがあり、無数に並ばれてる覗き窓をチラリと見ると…。
「…ありゃ…脳、か…?」
そう、人間の脳だ。無数の脳が容器の中で並ばれており、これまた無数のケーブル等が脳を並列させるように繋がっていた。
『――死刑囚No.D85121号。スムージングデバイス適性テストスタンバイ』
「なっ…」
部屋と同じぐらい真っ白なモニタドローンがギルバートの前に飛来し、無機質な報告を発する。
「てめぇら、いったい何のつもり――」
『テストスタート』
ギルバートの怒声が絶叫に変わり、絶叫は二進法的な電子音へと変換していく。視界がブラックアウトし、全ての感覚が剥離していく――
(うっ、あっ、な、なんだ…?)
意識だけになったギルバートは感知した。旧世紀の海岸に建てられた豪邸であらゆる美味に囲まれた人。緑の木々や花々に囲まれながら家族と団欒を楽しむ人。旧世紀の都会にある超高級ホテルのスウィートホテルで、無数の異性をへばらせ、その全員が自分に愛していると囁く人。その誰もが満ち足りた顔を見せ、全ての人が目の前の幸福を享受する平和な楽園の光景。――至福の楽園。
(ぐあっ!)
ギルバートの意識がいきなり強く揺さぶられる。それはメイドが運んだ美味がいきなり腐った光景。団欒していた家族と邪険に喧嘩してしまう光景。へばらせていた女性達にナイフで滅多刺しされる光景。
だが彼の意識の向こう側にある楽園に変わりはない。心を満たす平穏の中で、彼らはこの全てを与えるシステムから囁かれる。
『この食事と平和を永遠にするためにも』『これからもがんばってね、あなた』『私達の楽園のために』
『テスト完了。ノイズ受容適性95%、合格。素子ナンバリング、UD758641。パーツ摘出作業開始』
(があああぁぁぁっ!)
強烈な痛みがギルバートの頭と背中を襲う。意識だけ残っても、いま自分の体を刃物が切り込んでいるのがはっきりと分かる。
『――作業緊急停止。12人議会からのダイレクト指示。死刑囚を面会室へ』
痛みが突如消えると、ギルバートは再び意識を失った。
――――――
セメンテリオシティ連合のエルドレドシティにある、真っ白の隔離部屋。応急処置がなされ、半ばあの世へ半分足を踏み込んでいたギルバートがぐったりとにへたり込んでいた。
「ぐ…う…」
ゆっくりと目を開くギルバート、周りを確認しようとする途端、彼の目の前にある壁に一人の影像が映りだされた。
「ひどい有様だな。ギル」
部屋の一面のその人物を見て、衰弱しているギルバートが思わず驚愕する。
「…お前…ミハイルか…っ?」
それは、数年前にともに行動していたミハイル・アッカーソンだった。
「ぐう…あんた…なんでここに…」
「運がよかったのだ。私は結構前からお前の行方を捜していたが、いざ見つかったらまさかここに運ばれてたとはな。さっそく議会にコンタクトを取ったが、あと数秒も遅ければお前は至福の楽園の悪夢脳波処理システムのパーツの一つになっていただろう」
ギルバートは何とか息を整えると、ミハイルの顔を見上げた。
「そうかよ…てかお前、よくここの議会とコンタクトできたな…?」
「私は選択できる力を手に入れたのだからな」
「なに?」
「私はいま『組織』というところにいる。企業とかそういうとは比べ物にならない真に力のあるところだ」
「『組織』…」
ギルバートはだるそうに顔を仰いだ。
「そういやあんた言ってたな、世界の高みへ上り詰めるのがあんたの『人生の価値』だって。なるほどここの引き篭もり野郎を通して面会ができるってんなら、確かに相当の力をもった場所に違いなさそうだ」
「それも覚えているのなら、探した甲斐があったというものだ」
「…はっ、相変わらずだな。んで、そんなお前が何故俺を探しに来たんだ?」
「あんたには私と一緒に『組織』に来てもらいたい」
ギルバートは即答した。
「やなこった」
「ギル」
「うるせぇ!あの腐った平和ボケ野郎どもを皆殺しにする前にどこに行く気もねえんだよっ!あの自分の糞を他人に撒き散らすクソ楽園も含めてなっ!それともなんだ、その『組織』ってところに行けば、ここの奴らを殺す手伝いをしてくれんのか?」
「それは無理な相談だ」
「だったら俺をこのままここに置いとくんだなっ!ついでに、俺が一歩でもここを出れば、目当たり次第にここの奴らを殺すってここの連中に伝えやがれ!」
「…それがあんたの『人生の価値』なのか?」
「ああそうさっ!」
ギリリと握る拳に血が滲むギルバート。
「あいつらは俺の大事な家族だ…っ、それをよりにもよって重いと抜かしやがって…っ!」
暫く、微弱な空調の音だけが聞こえるように二人は黙した。
「…捻くれたところといい、家族思いのことも含めてやはり変わってはないな」
ギルバートは答えずにそっぽ向く。
「さっきあんたが言ってた私の人生の価値だが、一つ抜けてるぞギル」
「なんだ?」
「私は、お前と二人で世界の高みを掴む。あの時そう言ってただろう。たとえお互いの目的のために暫く離れても、この世では俺達二人だけが真の家族だ。違うか?」
かつてミハイルと生き抜いた日々が思い浮かぶギルバート。
「『組織』に入れば、君が再び新しい家族を得るチャンスも出てくる。そのために私もできる限りの協力をしよう。復讐で命を費やすのもいいが、あんたはそれだけの男じゃないのは、私が一番良く知っている」
ギルバートはミハイルを見据えたままだんまりする。
「まだ時間はある、気が変わったらここの奴らに声をかけてくれ」
そう言って、ミハイルのホログラムが消えていった。暫く前を見つめたままのギルバートは、やがて天井を仰ぎ、小さく笑い出した。
「へっ、相変わらずお節介な野郎だな」
景色が歪んでいき、ギルバートの意識は再び夢のまどろみに包まれる。おぼろげに、サラ、キース、アオトとミハイルの姿が、曖昧な意識の向こうで見えた。それは間も無くして炎に包まれ、灰となって消え、ウィルフレッドの姿だけが残ったような気がした。
******
「ギルバート様?どうかされましたか?」
「…ん?なんでもねえ、少し白昼夢って奴を見ただけさ」
「ふふ、それって夢を見るぐらいギルバート様は満足しているってことよねっ?」
「ははは、言うじゃねえか」
教団の神殿の自室のベッドで、抱き寄せていたアネッタ、ルニと濃厚なキスを交わすと、ギルバートはベッドの天蓋を仰いだ。
「…ルニ、あんたはどんな経緯でこんなところにいるようになったんだ?」
「私ですか?」
若く可愛らしいルニは、少し呆れた顔してギルバートの胸にあるアスティル・クリスタルを指で無造作に撫でた。
「別に何かある訳じゃないですよ。私は貧しい村の出身だったんですけど、家の食い扶持を稼ぐために大きい町に働きにいったんです。でも私、仕事が下手でなにをやっても上手くいかなくて、仕方なく行った娼館での仕事だけが凄く受けがよかったの。あの娼館の得意先の一つがまさか教団とは知らなかったけど。故郷は魔獣の襲撃を受けてもういないし、生きるためには仕方ないかって感じだけなんです」
「そうか…アネッタ、あんたは?」
ギルバートの傍に身を起こしていた大人びた女性は、隣のテーブルからワイングラスを彼に渡して語った。その美しい顔に愁いの帯びた苦笑を浮かべながら。
「私は単に男に騙されただけの愚かな女に過ぎません、ギルバート様。それなりに裕福な家の出身で、世事に疎い私はある男に言い寄らせて、周りの何も見えなくて家財を盗んで彼と駆け落ちしたんです。その結果は言うまでもなく、男はただの詐欺師で、私は簡単に切り捨てられました。いまさら家に戻ることもできず、裕福な生活に慣れて普通の仕事にも馴染まない私は娼館に身を費やすことになって…。今となってはスティーナ様の愛を信じる気にもなりませんから、教団相手に商売するのは丁度良いかも知れませんね」
クスクスと自嘲ながらも魅力に溢れた笑みを見せるアネッタ。
「なるほどねえ…」
二人の髪を暫く撫でると、ギルバートがいきなり立ち上がった。
「きゃっ?」
「ギルバート様?」
「二人とも服を着れ、あと手に持てる私物だけ簡単に纏めてついてこい」
――――――
「うわああぁ…すご~~~いっ!めっちゃ高い!めっちゃ早い!それに凄く綺麗~!」
|魔人化したギルバートに抱えられながらルニは、遥か上空から見下ろす広大な大地の景色を見てはしゃぐ。
「ほんとっ、山より高いところから世界を見下ろせるなんて…まるで竜になったみたいです…っ」
「ははっ、二人ともはしゃぐのはいいがあまり動くなよ。落ちてしまうからなっ」
空のフライトを暫く楽しむ三人は、やがてある町の外れの森に着地した。
「ギルバート様…?」
すでに魔人化を解いて元の姿に戻ったギルバートを見て、二人はこれがただの散歩ではないことに気付く。
「ほらよ」
ルニとアネッタにそれぞれ一つの袋を投げるギルバート。二人が中を覗くと、目もくらむほどの大量の金貨が入っていた。
「わ、わぁっ、凄い!でも、ギルバート様…?」
「これっていったいどういう…」
「ザナエルの旦那がどうしてもって押し付けてきた奴だ。それをもって好きなところに行きな。そんだけありゃ暫く生活には困らんだろう」
「そんな、ギルバート様っ」
「私達を貴方の傍から追い出すつもりなのですか…?」
腕を組んで一笑するギルバート。
「ちげえよ。神殿はこれからの決戦でやばくなるし、戦いで他人の面倒を見るつもりはねえからな。あんたらも、巻き添えくらって逝くのは御免だろう?」
「ギルバート様…」
「まっ、邪神なんたらが復活したらあまり意味無いかもしれないが、それまで好きに生きることができるんだ。いままで一杯サービスしてくれたチップだと思えばいい。実際最高だったからな、あんたらは」
ルニとアネッタが互いを見る。
「じゃあな。もう会うことはねえが、残りの人生、せいぜい楽しめよ」
「まってください!」
振り返って離れようとする彼を、ルニが呼び止めた。
「あん?」
「私…いいんです。それでもギルバート様についていきたい…」
ギルバートの顔から表情が消えた。それでもルニは続いた。
「だって私…私、ギルバート様のことっあぐぅっ!?」
「ルニっ!」
ルニの喉がギルバートに強く掴まれ、その小さな体が持ち上げられる。
「なんだぁルニ…?あんた、結局は平和ボケした連中と同じってのか…?」
「ちがっ、わ、私は、ただ、ギ、ギルバートさ、ま、を…」
「…ギルバート様」
落ち着いた口調で、アネッタが彼に呼びかけた。
「ああっ?あんたもくだらねえこと――」
「足りませんよ」
「なに?」
先ほど渡された金貨の袋を見せるアネッタ。
「今までのサービスや、暫く一人で生活することを考えましたら、これだけでは私にもルニにも足りません。もう少し払ってもらわないと困ります」
「ア、アネッタっ?」
ギルバートは暫くアネッタとにらみ合い、やがて愉快そうに笑い出し、ルニを解放した。
「…くく、あはははは!そうかそうか!そうこなくっちゃな!」
「かはっ!けほけほ!」
彼は懐からさらに一つの袋を取り出し、それをアネッタに投げた。
「この前気まぐれに拾った宝石だ。あんたとルニで仲良く分けな。これで足りるか?」
袋の中身を確認し、アネッタが業務的な笑顔を見せた。
「ええ、問題ありません。今までご愛顧ありがとうございます、ギルバート様。またご機会ありましたら、ぜひまたご指名してください」
「気が向いたらな」
ギルバートは背を向けて手を振るうと、赤い電光とともに魔人になっては一瞬にして空高く飛び、その場を離れた。
「ギルバート様…」
ゆっくりと立ち上がるルニは、アネッタとともに赤い光が見えなくなるまで見つめた。
「大丈夫、ルニ?」
「う、うん…。でも良かったのアネッタ?貴方だってギルバート様のこと――」
ルニの言葉が止まった。アネッタの頬に一滴の涙が流れていたのだから。
「これでいいのですよ。これで…」
「アネッタ…」
アネッタは先ほどギルバートから渡された袋から半分くらいの金貨と宝石をもう一つの袋に入れ、残りをルニに渡した。
「はい、これはあなたの分よ。…これでお別れだけど、私みたいに悪い人に騙されないようにね」
渡された袋を暫く見て、やがてそれを強く握っては、涙を拭いて頷くルニ。
「…アネッタも、またどこかで会ったらよろしくね」
「ええ、また会えたらね」
二人はお互い抱きしめあった。同じ人に侍ってきた彼女達だけの絆を確認するように。
「…でも、せめて町に行くまでは一緒でいい?」
「勿論よ。ほら、行きましょう」
最後にギルバートが飛んでいった方向を二人で向いてから、アネッタとルニは町へと歩き出した。
【続く】
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