ハルフェン戦記 -異世界の魔人と女神の戦士たち-

レオナード一世

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第十三章 ウィルフレッド

ウィルフレッド 第十節

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アルマに改造されてから二週間が過ぎると、今期の改造で五人のアルマ全てを作り出すことに成功したとミハイルから聞いた。ギルとアオトも無事乗り越えたことも知り、ようやく本当に安心することができた。

「まさか長年失敗し続けたアスティル・クリスタルの移植が、一気に五つ全部成功するとはな」
このことにさすがのミハイルも驚いていたようだった。
「アスティル・クリスタルの移植適性はまだ完全解析されていないが、チーム適性を持った君達五人になんらかの共通点があるのか、或いはクリスタル自体にある種の繋がりがあるのかもしれんな」

それからさらに数日後、俺はようやくアオトとギルバートと会うことができた。二人共に生きぬいた事に、感激で思わず涙が出るぐらいだった。
「あの時は本気で死ぬかと思ったけど、なんとなくウィルたちが応援してる気がして…。やっぱ君は僕のツバメさんだよ」
「はっ、元よりこれぐらいで死ぬ俺じゃねえよ。なに大袈裟に泣いてやがるんだ、ウィル」

そして初めての変異体ミュータンテスと戦うことになったあの日、俺達は昔の作戦で何度かの縁があり、同じく改造手術を生き延びたサラとキースに再び出会った。

「やあルーキー達、それとギルバート大尉だっけか、まさかこんなところで会うとはねえ」
「ああっ!誰かと思ったらあん時のガキと甘ちゃんじゃねえかっ!」

相変わらずの二人に妙な懐かしさを感じながら、計画責任者兼最高指揮官であるミハイル・アッカーソンの下で対異星人特殊部隊のチームがついに結成された。

遠距離狙撃型スナイパーアオト・カンナギ、サポート特化型ジャマーサラ・シャノア、重装甲強襲型メレーキース・アイワート、高機動強襲型アサルトウィルフレッド、そして現場指揮官コマンドギルバート・ラングレン。

通称アルファチームである俺達五人はアルマとしての初陣、変異体ミュータンテスクエイクとの戦いを無事切り抜けた。

――――――

アルファチームの主な任務は事前にミハイルが説明したとおり、主に対異星人としての役割が主だ。そしてここ数年間世界各地で変異体ミュータンテスが出現しており、それら事件はみな企業の陰謀やテロリストの活動として報道されていることは、アルマになってから初めて知ったことだった。中には傭兵時代やエージェント時代で既に聞き及んでいる事件もあり、『組織』の情報統制能力にアオトとともに改めて驚いていた。

今までの変異体ミュータンテスは各地の政府軍などが対応しており、その都度大きな被害をもたらしている。アルファチームはその被害を抑えることにおいても意味が大きく、各シティ政府からある程度の治外法権やバックアップを受けられる。もっとも一部シティの機関は、最初から底の見えない『組織』が潜んでいるとは思うが。

変異体ミュータンテスとの戦闘は当然生易しいものではない。例え超人的なアルマの力を手に入れても、奴らとの戦いは五人がかりでも危険極まりないものだ。けど、今まで必ず市民達に大きな被害を出してる変異体ミュータンテスの事件を、俺達の努力で大きく抑えられることは、自分にとって願っても無いことだった。

けれどなによりも大事なのは、アオトやサラ達とともに闘う中で確かに深く繋がっていく家族ファミリーの絆に他ならない。それはとても心地良く、深く俺の心の根差していくものだった。


******


「おいウィルっ!てめぇまたアホみてぇにここでぼーっと立ってんのかよ」
エンパイアタワーの専用休憩室で窓からシティを眺める俺に、いつものパンク髪をしているサラが声をかける。その手には取っ手付きの缶ビールケースがあった。
「サラ?」
「ほらよ」

サラから投げられた高級合成缶ビールを受け止める。
「キースの野郎、今日は飲めねえってほざきやがって。ギルやアオトの奴も見あたらねえから一杯付き合え」
「あ、ああ」

いきなりの誘いに少し困惑していた。今までサラがこうして飲みを誘うことなんて一度もなかったから。サラはすぐ傍のテーブルにケースを置いて乗っかっては缶ビールを豪快に飲み始め、俺も合わせて数口飲んでいく。さすが高級品、安価の合成ビールのような化学の臭いがまったくない。

「んぐ…んぐ…くぅ~~~!やっぱデジタルビーストのビールは最高だなっ!酔えなくたって飲み心地は最高だぜっ!」
「ああ。今まではギルに合わせてエクスタシーの方ばかりだったけど、このブランドも結構いけるな」
「はっ!分かってねえなギルの奴、そんな合成スパイスで誤魔化してる奴とは訳が違うんだよデジタルビーストはっ」

サラは空になった缶を見事な狙いでゴミ箱に投げては、また一つ開けて豪快に飲んでいく。
「…ふぅ~。それよりウィル、昨日の傷はもう治ったのか?」
昨日でイモータル変異体と戦った時、サラをサポートするために負った傷のことを言っているのだとすぐに理解できた。

「あ、ああ。メディカルタンクで一時間処置しただけで全治したよ」
「…まったく、アタシのサポートで負う傷はこれで何度目だ?あんたもよくここまでアタシに合わせられたもんだな。…マジで家族ファミリーみてぇによ…」
最後の言葉はかなり小さな声になっていた。俺は小さく笑顔を見せる。
「別に、俺も今までサラに結構助けられてきたから、お互い様さ」

「そりゃあんたが甘すぎるからだボケナス!ったく危なっかしくて見てらんねぇ!」
愚痴を吐きながらも、また缶ビールを一本投げつけてくるサラの表情は険悪なものではなかった。お互いまた一本ビールを開けて飲み干した。
「まっ、そんな甘ちゃんとこうして飲むビールも、存外悪くねえな…」
「サラ…」

「…ウィル、アタシが『組織』にいる理由、あんたにはまだ教えてなかったな」
「ああ…」
キースからある程度聞いたということは話さなかった。間違いなくキースがしばかれるから。酸性雨が降りしきる窓の外の夜景を眺めながら、今まで見たことも無い表情を浮かべるサラ。

「…まずうちのオヤジと母さんの話になるがよ、あのクソ野郎、アル中の労働階級で子供を養う金もないくせに、ストリップバーで働く母さんと一夜の遊びでアタシを生んでさ。んで、なんとなく母さんと一緒に住むようになったんだがよ、養育の金は結局みんな母さんが出しっぱなしで、自分はあいも変わらず酒浸りだ。母さんも母さんだ、何故あんな屑野郎をずっと家に置いとくんだが」
缶ビールを一気に飲み干し、また一本開けてがぶ飲みするサラ。

「それで、アタシが四歳の頃だっけか?案の定、あの野郎、アタシと母さんを捨てて家出してよ。それっきりで帰ってこなかった。まっ、いま思えば寧ろ四年も一緒に住んだことが奇跡と思えるぐらいの屑野郎だ。暴行する度胸もねえ奴がやっと家出したことに寧ろ褒めてあげるべきかもしれねえなぁっははははは!」
サラの乾いた笑いの後ろに隠された感情は、とても複雑なものだった。

「…んでよ、しばらくして母さんは過労で倒れてさ。家も取り上げられて孤児になったアタシは晴れてストリートに進出。まっ、その後の生活は想像とおりってことだな」
かつてヘンリーやダニーと共にストリートで過ごした辛酸の日々を思い出す。

「で、ある日のことだが、運悪く店で盗みをした時に捕まえられてよ、いよいよ年貢の納めって時に『組織』の奴が無罪放免を条件にスカウトしてきたんだ。トリニティトライデント社だっけか?とにかくせっかくのチャンスだから、家出したあのクソ親父を探す手伝いを条件に加えたのさ」

「それは…、やっぱり復讐のため、なのか?」
フランクに手を広げて笑うサラ。
「はんっ、んな仰々しいもんじゃねえよ。ただケジメとして一発ぶん殴りたかっただけさ。母さんの死の半分は無責任なクソオヤジのせいだからなあ」

母に対してはそれなりに好意的なんだなと思いながら、サラが続けた。
「…それでさ、さすが『組織』様々と言うべきか?条件を出してから一日足らずにオヤジを見つけたんだが、こりゃまた傑作だったぜ。オヤジの奴、とっくの昔に死んでたのさ、交通事故で無様にな。遺体はそのままモルグでバーベキューで灰も残ってねえ」
ここまでは、まだキースから聞いたとおりだ。

「だがよ。本番はこれからってんだ。あのクソオヤジ、事故に会う前に何してたと思う?」
「何をしていた…?」
「保険に入ってたんだよ、交通事故のにな。しかも保険金受取人は母さんを指定してたのさ。あいつ、保険金で母さんに金をあげようとしてたんだ」
「え…」

予想外の答えに少し困惑した。サラが皮肉な苦笑を見せる。
「保険金の話、母さんが生きてた頃にゃアタシは今まで一度も聞いてなかった。つまり保険金はおりなかったってことだが、調べたら案の定、保険会社がいちゃもんつけて適用されなかった。まあ明らかに保険金狙いの自殺だから当たり前っちゃ当たり前だがよ」

また缶を一つ開けるサラ。
「事故の現場の写真もあったんだが、あいつの手には一つガラクタの玩具が握ってんのよ。アタシがまだ頭がおつむなガキの頃、クソオヤジにあげたボロい奴だ。まさかずっと後生大事にもってたとはさすがに驚いてたな」

「それじゃ…、彼はサラやサラの母さんの生活のために…?」
「へっ、泣ける話だろ?アタシも感動のあまりに泣いてしまうと思うだろ?」
サラの顔が怒りに満ち、手に持った缶ビールがぐしゃりと握り潰される。

「ふざけんじゃねえっ!勝手にアタシ達を捨てて、その理由がいざ判明したらアタシ達のためだって!?こっちにしちゃいい迷惑だ!何勝手に良い話っぽくしようとしてんだあのクソオヤジ!それこそ一番の裏切りだってんだよっ!」
潰された缶をゴミ箱に投げつけ、強烈な衝撃でゴミ箱が派手に凹んでゴミが飛散する。
「しかもその金が全部保険会社に取られてよ、ピエロにも程があるぜっ!死んで殴りたくも殴れねえと来たもんだっ、腹が立つなんてもんじゃねえっ!」

悔しく拳を強く握るサラに、俺はただ見つめるしかなかった。言葉にしていないが、その飲んだ暮れの父と幼いサラには、やはり少なからず何かの心の繋がりはあったのかもしれない。そして彼が家出した時も、恐らく思った以上に衝撃で、だからこそ死んだ父の真相に対する複雑な怒りを抱いていると。

「…ちっ、まあいまさら死んだ奴の話をしても始まらねえのは分かってるが、たまにはこうして鬱憤晴らさねえとやってらんねえんだ。すまねえなウィル、アタシの愚痴につきあってよ」
「別に気にしていないさ。けどどうして今になって俺に…?」
「あ~…」

妙に顔を逸らすサラがごまかすように頭を掻く。
「まあ、あれだ、チームってのは家族ファミリーみてえなもんだよな。家族ファミリー同士、腹を割って話すのが普通だろ?」
「サラ…っ」
「んな目で見るんじゃねえキショイぞっ!とにかく!今の話は他の奴には言うなよ!でなきゃ八つ裂きじゃ済まさねえからなっ!」

一本だけ缶ビールを取り、そのまま缶ケースをテーブルに置くサラ。
「残りはあんたにくれてやらぁ。次はビールだけでなくスパーリングにも付き合えよ」
振り返りもせずに手を振って離れるサラの背中を、飲みかけの缶ビールを持ったままずっと見つめていた。


******


軌道エレベーター『ダレット』の遥か上空。月やほか大小施設への連絡シャトル、作業船の港にもなっているダレット宇宙ステーション。俺達アルファチームは、小惑星アゾフ採掘ステーションでの変異体ミュータンテス掃討任務を終えて地球へ戻る最中だった。

アルマ形態の俺達なら単独での大気圏脱出や突入も可能だが、機密保持のため非常時を除き禁止されている。地球に異星人アウトランダー関係の緊急事態も起こってないため、他の部隊のように一般的なルートで地表へ戻ることになった。

ステーション内で下りのエレベーターブロックを待っている間、『組織』専用の休憩室で、俺とアオト、そしてキースは、壁の高級テレビモニターから流れるニュースを聞き流しながら自分達のことに集中していた。ギルとサラは珍しく二人でステーションの一般区画のバーで飲みに行っていた。最初は毛嫌いしていたサラも今やすっかりチームに馴染んでいた証拠だろう。

休憩室の展望ウィンドウから一望できる地球と月の景色に俺は見入っていた。クァッドフォース社時代の任務で初めて軌道エレベーターに乗った時の衝撃と、そこから見た景色への感慨は今でも忘れられない。かつて『住家』にいたころ、軌道エレベーターがずっと自由と世界の象徴だと思ってたという理由もあるからかもしれない。

『かのミッドナイトシティ出身のデイビッド・ハーンズがボーカルを担当する人気バンド、シャドウクロームの最新シングルが来週発表されるとの告知があり――』
ホログラムモニターから流れるニュースを見ながら、手に持った何かに細工をしているキース。
「シャドウクロームがまた新曲か。今回も間違いなくセールのベストスリーに入るんだろうなあ」
「へえ、キースってバンド曲とか聞いてたの?」

ソファで後ろ首にプラグを挿してネットスペースを潜ってたアオトがキースを見た。アルマになって情報処理のマルチタスクもできるようになって以来、彼は暇があればああやってネットスペースに潜っては自分の好きな童話の情報を探し回っていた。

「まあね。ただ、ああいうバンドの奴は聞いてないな。そもそもシャドウクロームみたいなベストテン入りのバンドは、皆バックのマネージャーの人脈と財力によるところが大きい。曲自体は大抵普通ばかりなんだよねぇ」
「そうなの?こういうの疎いから知らなかった…」

「ああ。もしこういうバンドで本当に良いもの聞きたいのなら、地方バーとかでちまちま活動している小さなバンドの奴を探した方がいい。例えばメトロシティのケイト・プラチナアイがボーカルやってるアイアンメイデンとかな」
「ケイト・プラチナアイのアイアンメイデン…」

そう言って、アオトがテレビモニターのホログラムパネルを素早くいじり、ネット端末と接続するよう操作すると、画面がネット動画のものに切り換えた。片目にプラチナ色のサイバーアイを装着した、ブロンド髪の美女がイキイキとステージを踏み鳴らしながらマイクを掴み、軽快で力強いリズムを刻むように歌っている姿が映り出される。

「ああ、そうそう。彼女がケイト・プラチナアイだ。…こりゃシティのバー・フルメタルジャケットでゲリラライブをしてた時の奴だな。この『アシッドハリケーン』、ファンの間でもかなり名曲扱いになってるんだ」

恐らくライブ現場でファンが手元の端末で撮ったもので、映像に時折ノイズも走り、音質も良いものとは言えないが、歌に篭ったエナジーのようなものはまったく損なわない。普段あまりこういうのを聞かない俺でさえも思わず言葉がこぼれるようなものだった。

「…結構いい曲だな…」
「うん、そうだよね。それに美人さんだ…」
「おっ、なんだいアオト。こういうのがタイプだったのかい?」
「えっ、いや違うよ。ま、まあ確かにちょっとドキッとしたけど…」

少し照れてるアオトに思わず口元が緩む。
「別にいいじゃないか。地方の小さな有名バンドの美人ボーカルと、『組織』の秘密兵器との恋。案外童話っぽくて悪くないと思うな」
「やめてよウィルまで。…ああいうのは、僕じゃだめなんだと思うから」
どこか物寂しそうな顔を浮かべるアオト。

「そういえば、まだキースには教えてなかったね。僕が『組織』に入った経緯を」
キースがテレビの音量を下げた。
「ウィルはもう知ってるけど、僕が『組織』に入る前はまだ教育施設に通ってたんだ。自分の両親は二人とも有名企業の社員だったから、お陰で結構質のいいところに行けてね」

教育施設というのは学齢期の子供が、教育端末による義務教育以外により良いスキルを身に付けるために通うところだ。シティ政府や企業による設立など種類は様々だが、基本的に市民IDを持った人しか通えない。質の良いところということも含め、これはアオトが元々それなりに身分の良い市民出身であることの証明でもあった。

「僕が童話に興味を持ち始めてたのもあの時だけど、マイナーすぎて一緒に話を共有できる友達が誰もいなくてね。それに僕ってこういう性格なんだから、よくイジメの対象になっててさ…」
自分は教育施設にある力関係というのは疎いのだが、かつて『住家』でダニー達と一緒にテッドらによくちょっかい出されたことを思い出すと、きっと気持ちのいいものではないだろう。

「毎日イジメに会うのは辛かったけど、一つだけとても良い思いがあったんだ。…その、一人気になる子がクラスにいてさ」
「ほうほう」
キースが興味津々な表情を浮べ、アオトは恥ずかしそうに笑いながら頭を掻いた。

「彼女、とびっきり綺麗って訳ではないけど、僕のいるシティの区画では思えない清楚さがあったんだ。つい童話の人物と姿を重ねてしまって…。いわゆる一目惚れでね。あの時の僕の頭の中はもう彼女のことが一杯でさ、どうやったら彼女に近づけられるか、どうやったら彼女のになれるか。それはもう必死に毎日考えてたんだよ」

顔を伏せ、まるで人形のようにただぽつりぽつりと呟くアオト。特定記憶や条件に対しての感情抑制手術を受けた人が感情閥値を超えた時の特有の反応だ。
「けれど、それも結局ただのひと時の夢だったよ。あの時…いつもの奴らがきて…我慢できずに…それで僕は…感情抑制手術を条件に『組織』に入って…」

感情抑制手術はその成功率や未解明の副作用などの問題を抱えており、そう易々と施せるものではない。アルマ実験候補者にそういう手術を認可したことには少々気になってたが、適性因子のデータ取得には使えるし、正式選別前の各種検査では許容範囲内のことだとミハイルは言っていた。

「結局、僕は誰かのツバメになれるような性格じゃなかったってこどだよ。まあ、今の生活にとりわけ不満がある訳でもないから別にいいけど…」
「そうかい。俺は別にそうとは思わないけどなあ。ほらアオト、手を出してくれ」
「え?」
キースはさっきから手元でずっと細工してたものをアオトに渡した。それは金属で作られたツバメの首飾りだった。

「キースっ?これ、僕のために…?」
「ああ。この前、面白い童話の話を聞かせてくれたお礼だ。遠慮なく受け取ってくれ」
爽やかに笑うキースに、アオトは驚愕と困惑が混じった顔で恐縮そうに首飾りとキースを見る。

「で、でも、ツバメにもなれない僕が、こんなもの貰っていいの…?」
「俺から見れば、アオトはもうちゃんとツバメになってるんだよねえ」
「どういうこと…?」

「まず、アオトのツバメの定義は、例え誰かに知られずとも、他人のために何かを成してるってことだな?じゃあ俺達がアルマとして変異体ミュータンテスと戦ってるのは正にそういうことじゃないのかね。実際これで軍や市民への被害は抑えられてるんだから」
「あ…」

「それだけじゃないさ」
俺もキースに合わせた。
「この前アオトが俺と一緒に亡くなった子を偲んでくれたお陰で、気持ちがとても楽になれたんだ。だからアオトは立派に一羽のツバメだと俺も思う」

「ウィル…」
恐らく泣きそうな顔を隠そうとまた俯くアオトは感激そうにその首飾りを握りしめた。
「二人ともありがとう…。それじゃあこれ、大事にしておくよ」

「ぜひそうしてくれ。なあに、アオトの本音は彼女が欲しいてこともちゃんと理解してるんだ。時間があれば馴染みのバーで何名か良い子を紹介してあげるさ」
「べ、別に良いよさすがに。…それにしてもキースってやっぱインテリだよね。こういう細工と良い、さっきのロックと良い、妙に教養が良いというか」
「ああ、俺もそう思う。図体からは全然想像も付かないよな」

俺達の冗談にキースは意も介せずに笑い出す。
「あははははは、俺達のような人こそ、こういうのを嗜むのは大事だぞ?バーが嫌ならお勧めのバンドのライブに行くのはどうだい。ああいうのはVRでも味わえない独特な味ってのがあるからなあ」
「あっ、それはぜひ試してみたいっ」
「俺も興味あるな」
「決まりだなっ、次の自由時間、ぜひ楽しみにしてくれ」

そんな雑談を交わしながら、やがて下りのエレベーターブロック到着のアナウンスが響き、俺達はギルやサラと合流しては地表へと降りていった。その後、サウンドウェーブ変異体絡みでアオトがケイト達との出会いを果たすことは、また別の話だった。



【続く】

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